おっちょこちょいな先輩は滑稽で悲しいピエロ 「手品先輩」咲ちゃん・まーくんによる世界の大道芸

咲ちゃんちょっと天才すぎる件。

» 2019年09月03日 23時15分 公開
[たまごまごねとらぼ]
手品先輩 (C)アズ・講談社/手品先輩製作委員会

 すっごく元気でめちゃくちゃおバカ。テレビアニメ放送中の「手品先輩」(原作アニメは、失敗率が限りなく100%に近いポンコツ手品コメディ。いろいろあやういハプニングとめげなさすぎる先輩との楽しくて厄介な日々、これもまた青春。

 先輩が守ろうとしていた奇術部になだれ込んできた、咲ちゃんとまーくんの姉弟。2人が夢中になっているのは大道芸でした。ところで大道芸ってどんなものなんだろう? 昨中の技をチェック。


世界の大道芸

 大道芸という単語には、明確な定義はありません。奇術は「何らかのトリックを用いて相手を驚かせるもの」くらいのざっくりした方向性がありますが、大道芸はもっと曖昧。まーくんの解説によると「不特定多数の客に対してパフォーマンスを行い楽しませること」とのことです。

 なので、奇術を大道芸で行う人もいます。要はテクニックの名前ではなく、やり方の総称といったところ。サーカス的要素に近いけど、もっと自由なパフォーマンスでOK。


画像 スタチューは非常に高度なテクニックです(3巻)

 大道芸の本場の1つ、ロンドンのコヴェント・ガーデンでは、ジャグリングや楽器演奏、銅像になりきるスタチューなどの芸が見られることで有名です。

 ここに集まる大道芸人たちはえりすぐりのエリートだらけ。というのもライセンスが必要だからです。イギリスの大道芸人は「バスカー」と呼ばれ、かつては地下鉄駅構内などで活動していました(違法なんですけども)。次第に場所取りなどでけんかが起こり、21世紀に入ってからはライセンス必須となりました。

 日本でも大道芸は室町時代から存在しており、芸能として進化を遂げていました。「ガマの油売り」や「チンドン屋」なんかがそれ。和スタイルの大道芸は今はあまり見なくなりました。

 「大道芸的とされている芸」のプロフェッショナルが集まる大会は世界中で行われており、日本だと静岡県静岡市の大道芸ワールドカップin静岡が有名。サマソニなどのフェスにも出没しています。


バルーン

 大道芸において才能が非常に高い咲ちゃんが得意としているのがバルーン芸。特にバルーンアートはお手の物のようで、リクエストを受けたらすぐさま作れます。


画像 割れそうで怖いんだよなあ(3巻)

 咲ちゃんが実践的な「イヌの作り方」を教えてくれているので、実際にやってみよう。といっても風船いじるの、割れそうで怖い。なので先輩は極端にバルーンアートが苦手です。あのキュッキュって音が苦手な人も多いかも。

 二色三色と風船を使えば、風船に全く見えないバルーンアートも作れます。想像力次第でなんでもできちゃうのが、大道芸としての魅力。


画像 子供に人気!(4巻)

 バルーンアートのもう1つの魅力が、手渡しできるということ。リクエストをもらい、しゃべりながらきゅきゅっと作ってプレゼント。子供に大人気の芸です。


画像 これは一度見てみたい(3巻)

 人間風船は、風船の中に潜る特殊な芸。テレビの「あらびき団」に出ていた風船太郎で有名かも。ちなみに180センチの風船は一個2000円から。全然関係ないですが「人間風船に入っている女の子フェチ」というジャンルが世界にはあります。このへんは「手品先輩」がひそかにおさえています。


腹話術


画像 世界中にある腹話術(3巻)

 現在咲ちゃんが絶賛練習中の腹話術。日本だと有名なのはいっこく堂。時間差で声が遅れてくる芸は何度見ても楽しい。できそうでなかなかまねできない。

 腹話術の歴史は古く、紀元前からあった、なんて説も。人形を使うようになったのは18世紀ではないか、ともいわれています。

 大道芸であると同時に、寄席の演芸として披露されたり、時には子供のための芸として素人が行うことも。安心安全、みんなほっこりな芸。でも技術は相当に必要とされます。


ジャグリング

 物を宙に投げ上げたり、浮かせたりする芸がジャグリング。ボールやクラブを投げ続けるトスジャグリング、中国ゴマをハンドスティックと紐で操るディアボロ、四角い箱を挟んでキャッチするシガーボックスなどなど。このへんは想像力と練習次第で、ジャグラーは身の回りのものなんでも投げ回すことも。

 その1つがポイのジャグリング。咲ちゃんはこれを大得意としており、暗闇の中身体を動かさず回すことが可能。


画像 実はすごい(5巻)

 ジャグリングは「すごい」と分かってはいても、実際やるのはその想像の数倍大変だ、というのがなかなか伝わらないもの。一度仕組みを知るだけで、ジャグリングを見る面白さは変わります。ジャグリングテクニックの動画はYouTubeなどにたくさん上がっているので、気になるものを見てみてください。メジャーなところだと、ヨーヨーテクニックなんかも、広義にはジャグリングの1つです。


画像 解説を見ても分からない!(5巻)

 「手品先輩」では、実際の大道芸のテクニック解説もちらほら乗っているので、まねしてためしてみるのもありだと思います。ぼくはこれを読み、解説している動画を見ても、ポイ(的な自作の紐と重り)は回せなかったですね……。


道化師

 大道芸というよりは、「芸」の歴史に欠かせない存在なのが道化師の概念。おちゃらけたりジョークを言ったりして場を和ませるのがお仕事で、今だとサーカスやイベントでの出番が多いかも。


画像 笑いと悲しみ(3巻)

 いろんな種類がありますが、この作品で取り上げられているのは2つ。派手な格好でおどけて笑わせる、皮肉ってちゃかすのがクラウン。その中で失敗してばかにされる役回りがピエロ。笑われると同時に心に悲しみがあり、涙のマークが書かれている、というのが見分けるポイントだそうです。

 この構造は、さまざまなマンガのおどけ役に当てはまると思います。例えば「手品先輩」の場合、一定の技術は持っていて、ツッコミやちゃかしに回りやすい咲ちゃんはクラウン。技術はあるのに人前に出るとあがり症で全失敗して笑われる手品先輩は、ピエロ。

 でも人を笑わせていることには変わりないのなら十分ありなのではないか……なんてのは第三者の意見。むしろ先輩は道化師になりたいわけじゃなくて、かっこよい奇術師になりたいわけで。適材適所と理想はかみ合わず、難しいものです。


芸のあり方


画像 まあいらんしな……(3巻)

 一度、部費の足しにするべく、みんなの前で大道芸を披露したことがあります。咲ちゃんのバルーンアートは大人気。そこそこお金をもらっていたようです。

 その中には木の実やアメなども。バルーンアートは子供に人気なだけあって、「自分の大事なものを分けてくれる」ことも。温かい接触です。けどそれはそれ。お金にはならないんだよね。

 手品先輩は「自分が楽しいから」というシンプルな理由で奇術をやっています。一方咲ちゃんは、「弟のまーくんがやり始めたから」というちょっとズレた理由で練習をスタート。今や弟よりはるかにうまくなって、人前で見せる価値があるだけのテクニックを身に着けました。コミュニケーション能力が高いのもあって、しゃべりながら行うバルーンアートは向いているんでしょう。

 人に喜んでもらいたい、という思いはある。かといってそこに激しく思いを傾けているわけではない。ドライな彼女の性格は、人前で大道芸を長く続けるのにはある意味向いているのか? 仮に弟離れしたとしたら、彼女が大道芸にどう向き合うのかは気になるところです。


たまごまご

(C)アズ/講談社


前回までのお話


手品先輩

手品先輩

手品先輩

手品先輩
手品先輩
手品先輩
手品先輩
手品先輩

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/13/news021.jpg 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  2. /nl/articles/2501/12/news018.jpg 【ハードオフ】たった“1650円”のジャンク品を持ち帰ったら…… “まさかの結末”に仰天 「中古店は宝の山」
  3. /nl/articles/2501/11/news038.jpg セリアのイス脚カバーの“じゃない”使い方に「天才ですか!?」 斬新な活用法に「めっちゃ可愛い」「探してくる!」
  4. /nl/articles/2501/10/news070.jpg 中2長女“書店で好きなだけ本を買う権”を行使した結果…… “驚愕のレシート”が1300万表示「大物になるぞ!!」「これやってみよう」
  5. /nl/articles/2501/12/news004.jpg 「やばいやばい」 ブックオフに990円で売っていた“まさかの掘り出し物”に大興奮 「ラッキーすぎる」
  6. /nl/articles/2501/12/news031.jpg “スカイラインの墓場”に潜入したら、目を疑う光景が…… ヤバすぎる実態に衝撃走る「ここまでやる人はいない」「凄いな」
  7. /nl/articles/2501/12/news022.jpg 「腹がいたいwww」 一家で体調不良→78歳おじいちゃんの“お年玉”に爆笑 「これは本当に気持ちがこもってる」
  8. /nl/articles/2501/13/news017.jpg 100均の毛糸5色を“シェブロン編み”していくと…… うっとり美しい防寒グッズ完成に「分かりやすくてスイスイ編めた」「色のセンスも素敵!」
  9. /nl/articles/2501/13/news025.jpg 道に落ちていそうな黒い石ころ→磨いたら…… まさかの“正体”が158万再生「超すごい」「砂利に似ているのに」【海外】
  10. /nl/articles/2501/13/news013.jpg 夫婦でプラダンの二重窓をDIYしたら…… 予想以上の断熱効果に驚き「す、す、すっごい! 一番分かり易くて、可愛いくて、何より簡単そう」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ryuchellさん姉、母が亡くなったと報告 2024年春に病気発覚 「ママの向かった場所には世界一会いたかった人がいる」
  2. ハードオフに1650円で売られていた“まさかの掘り出し物”→修理すると…… 見事な復活劇に「相場が上がってしまうw」
  3. 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに……衝撃の経過報告に大反響 2024年に読まれた生き物記事トップ5
  4. 北海道の用水路で“巨大な外来魚”を捕獲→さばいてみると…… 中から出てきた“ヤバすぎる物体”に大興奮「ずっと釘付け」
  5. 【ハードオフ】2750円のジャンク品を持ち帰ったら…… まさかの展開に驚がく「これがジャンクの醍醐味のひとつ」
  6. 「脳がバグる」 ←昼間の夫婦の姿 夜の夫婦の姿→ あまりの激変ぶりと騙される姿に「三度見くらいした……」「まさか」
  7. 幼稚園の「名札」を社会人が大量購入→その理由は……斜め上のキュートな活用術に大反響 2024年に読まれた面白記事トップ5
  8. 米津玄師、紅白で“205万円衣装”着用? 星野源“1270万円ネックレス”も話題…… 「凄いお値段」「びっくりした」
  9. 【今日の難読漢字】「手水」←何と読む?
  10. サバの腹に「アニサキス発見ライト」を当てたら……? 衝撃の結果に「ゾワっとした」「泣きそう」と悲鳴 その後の展開を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」