ローカル線を救う夢の乗りもの……!! きっと興味が沸く、いちばん分かりやすい「DMV」のお話【写真62枚】:月刊乗り鉄話題(2019年11月版)(2/5 ページ)
「幼稚園の送迎バスがそのまま線路も走れたらいいのでは?」DMV誕生物語
DMVはJR北海道の技術者、柿沼博彦氏(後にJR北海道会長職を経て、2019年11月現在は星槎道都大学客員教授)が2002年に考案しました。JR北海道には赤字のローカル線がたくさんあります。赤字路線を維持するためには、徹底的なコスト削減が必要でした。
柿沼氏は幼稚園の送迎用マイクロバスを見て「あれを線路に載せればいいのでは」とひらめきました。バスに鉄道走行用の車輪を付ければ、鉄道と道路の両方を運行できます。「鉄道から離れた集落までお客さんを迎えに行き、鉄道を利用して中核都市まで往復してもらおう」という考えです。
初代のDMVは、中古の日産・シビリアンを改造した車両でした。改造を手掛けた会社は「日本除雪機製作所(現NICHIJO)」。鉄道と道路の両方の除雪車を製造する企業です。車体をバラバラにして構造を調べて、バスに「鉄道用の走行装置」を取り付けました。こうして2004年、初代DMV「サラマンダー901」が誕生しました。しかし初代は長く使えませんでした。道路側の事情である「排ガス規制」に引っかかってしまったのです。
2005年、排ガス規制をクリアした新型のシビリアンを用いて2台の第2世代DMVが作られました。しかしこの新型シビリアンは装備品がそもそも重く、そこに鉄道用の走行装置を追加したため、さらに重くなりました。鉄道線路では前後輪のバランスが悪く、道路ではアタマが重すぎて曲がらない……。苦肉の策として、車両前半の座席を取り外してなんとか軽くします。この結果、定員34人だった初代に比べて、定員は16人に減ってしまいました。
地方のローカル線とはいえ、通学時間帯は50人から100人が利用します。鉄道車両の定員は1両あたり100人以上。これをDMVに単純に置き換えると数台が必要になります。運転士もその分必要です。ローカル線のコスト削減のつもりが割高になってしまっては意味がありません。
しかしJR北海道はDMVに期待をかけます。柿沼氏は当時のトヨタ自動車社長であった張富士夫氏に直訴します。そして「トヨタとして社会貢献の立場から協力する」という約束を取り付けたのです。
こうして、JR北海道、トヨタ自動車、トヨタグループの日野自動車、日本除雪機製作所が連携して取り組み、トヨタのマイクロバス「コースター」を基盤とした三代目DMV「ダーウィン920形」が誕生しました。
ダーウィン920形で車体は長くなり、定員は29人になりました。2両連結すれば定員58人。これで実用化できる路線が増えました。
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