震災からの復興を機に駅弁業へ 鳥取駅弁・アベ鳥取堂 阿部社長に聞く(1/12 ページ)
毎日1品、全国各地の名物駅弁を紹介! きょうは鳥取の名駅弁店、アベ鳥取堂編(2)です。










「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第25弾・アベ鳥取堂編(第2回/全6回)
駅弁店には、鉄道駅で販売されるご当地名物の弁当の製造という“表の顔”と、地域の食のインフラという“もう1つの顔”があります。地震国・ニッポン。これまで多くの地域をさまざまな地震が襲い、地域の暮らしに大きな影響を及ぼしてきました。今回の「駅弁膝栗毛」でお邪魔している鳥取駅弁「アベ鳥取堂」は、鳥取を襲った大きな地震が大きなターニングポイントとなった駅弁屋さんです。
東海道本線の京都から日本海側を回って、下関の手前、幡生までを結ぶ山陰本線。国鉄時代、名物列車として知られたのが、大阪〜博多間の特急「まつかぜ」でした。平成15(2003)年10月、山陰本線・鳥取〜米子間の高速化工事の完成を受け、「スーパーまつかぜ」として、“まつかぜ”の愛称が山陰本線に復活。キハ187系気動車によって、上下14本が鳥取〜米子・益田間で運行されています。

そんな山陰本線の主要駅の1つ、鳥取駅。鳥取駅の駅弁を製造・販売するのが「株式会社アベ鳥取堂」です。阿部正昭代表取締役社長に、お店のヒストリーとエピソードを伺います。
アベ鳥取堂、ルーツはお菓子屋さん
―:「アベ鳥取堂」は、明治43(1910)年創業で、去年(2020年)が創業110年でした。阿部家が商売を始めたきっかけについて、簡単に教えていただけますか?
阿部:いまは鳥取市内となっている宝木(ほうぎ)出身の私の祖父(初代)が丁稚奉公して、菓子の製造卸・小売の店を開いたのが最初です。だから、「○○堂」という菓子屋がつける屋号なのです。祖父は、経営が軌道に乗るにつれて徐々にお店を拡大し、酒の卸・小売、米の卸・小売、さらには木炭の販売をしたり、鳥取の菓子業者の組合で役職も務めたと聞いています。
―:いまは鳥取駅に近いところですが、昔はいまより少し離れた場所にあったそうですね?
阿部:創業の地は、いまある場所からは少し離れた、鳥取市の立川1丁目というところです。お城の山の麓で、昔はこの辺りが、まちのメインストリートだったと言います。通りのつき当たりに戦前は陸軍があって、演習場のあった砂丘と結ばれていたそうです。そのころ、どんなお菓子をつくっていたのかという記録は残っていませんが、私が小さいころ、カニの形をした「かにあめ」をつくっていた記憶があります。
―:その旧陸軍とも関係があったそうですね?
阿部:昭和の初めごろ、鳥取にあった陸軍歩兵第40連隊の御用達となりました。陸軍にも近いところにあったお店ということで、終戦までの間、食糧をはじめ、さまざまな物資のお世話をすることになったのではないかと思います。いま鳥取駅がある辺りは、当時としては街はずれで、鉄道の開通によってまちが発展していったものと考えられます。
鳥取地震から3週間、「旅人のために」駅弁参入を決断!
―:鳥取駅から遠かったにもかかわらず、戦時中の昭和18(1943)年というタイミングで、「駅弁」に携わることになったきっかけは何ですか?
阿部:昭和18(1943)年9月10日に発生した鳥取地震(地元では鳥取大震災)です。これで鳥取の中心部の建物は、ほとんどが倒壊、焼失してしまい、それまでの駅弁屋さん「木島屋(きしまや)」も廃業することになってしまったんです。祖父は戦時中も食材の仕入れ等で全国を回っていて、駅に食べ物がないことが、旅行者にとってどんなに辛いことであるかを知っていました。
―:アベ鳥取堂にも被害はあったのですよね?
阿部:ただ、アベ鳥取堂があった山に近い地域は、地盤が強くて大きな被害を免れました。祖父はこの緊急事態に「何かできることはないか、ものをつくって駅で売りたい」と決心して、鉄道省に鳥取駅における構内営業の申請を出しました。そして、大地震から約3週間後の10月から「アベ鳥取堂」は、鳥取駅の駅弁を製造・販売することになったのです。
最初の駅弁は「パン」駅弁から!
―:参入当初、どんな駅弁をつくっていましたか? 菓子の技術を使っていたそうですが?
阿部:「ほんじゅう」という駅弁をつくって売っていたと、父から聞いています。レシピは残っていませんが、かつて祖父を取材した新聞記事によると、食糧不足ゆえに、昆布で味付けしたサツマイモと大豆、小麦粉を混ぜて固めたパン弁当だったそうです。見た目が黒くて、誰にも見向きされなかったそうですが、さまざまなお店に、試食をお願いして歩いて、1年後には行列ができるほどになったと言います。(参考)読売新聞・昭和44(1969)年9月22日付
鳥取地震やその後の大火のために、残念ながら古い建物が残っていない鳥取のまち。かつての城下町で育まれてきた文化を後世に残す役割も持ってつくられている駅弁が、「城下町とっとり」(1080円)です。掛け紙は、天和3(1683)年、鳥取城の修復を幕府へ願い出たときに提出した絵図の控えで、鳥取県立博物館の貴重な史料を借りて作成したと言います。
駅弁屋さんの多くは、いまも駅のそばに立地しており、列車が災害等で長時間足止めを強いられた際などの炊き出しに対応できるようになっています。その意味では、駅弁と災害は、切っても切り離せない関係と言ってもいいでしょう。
もう1つ、駅弁に大事なのが「ご当地性」。山陰・鳥取の名物といえばやっぱり「かに」です。駅弁膝栗毛の人気特集企画「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第25弾・アベ鳥取堂編。次回は、阿部社長に名物、「元祖かに寿し」の誕生秘話を伺います。
城下町とっとり
【おしながき】
- 白飯 梅干し
- 焼き鯖
- 蒲鉾
- 玉子焼き
- 天ぷら(いも、海老、紅生姜)
- 鶏の唐揚げと玉ねぎの南蛮漬け
- 鯛ちくわ素揚げ 七味がけ
- 煮物(信田巻、大根、椎茸、もみじ人参)
- 蓮根酢漬け 枝豆
- するめの麹漬け
- うずら豆甘煮
- 梨のワイン煮
脂がのった鯖の塩焼き、蒲鉾、玉子焼きの“三種の神器”が入った正統派幕の内駅弁。なかでも注目すべきは、鯛のちくわの素揚げ。さまざまな魚で練り物がつくられている鳥取らしいおかずで、七味のピリ辛食感が好印象。するめの麹漬けと合わせて、酒のつまみにも合いそうな構成となっています。デザートに梨のワイン漬けまで入って、至れり尽くせりのお得な幕の内です。
(初出:2021年4月12日)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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