牛たんの価格高騰をこらえながら、頑張る仙台駅弁!:仙台「仙台名物牛たん弁当」(1580円)
仙台駅弁の代表格と言えばやっぱり牛たん駅弁。創業101年を誇る仙台の老舗駅弁屋さんに聞きました。
【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します
実りの秋を迎えた杜の都・仙台。仙台駅弁の代表格と言えば、やっぱり牛たん駅弁です。いまから約30年前に誕生した際は、厚さ3mmの牛たんで始まりましたが、今年(2021年)、新たに登場した加熱式牛たん駅弁では、7mmの厚さまでに進化しました。その一方、輸入に頼る牛たんは、国際情勢によって仕入れ値が高騰しているとも伝えられています。その辺りの最新事情を、創業101年を誇る仙台の老舗駅弁屋さんに聞きました。
駅弁味の陣2021・気ままに味めぐり(第6回)
秋空の下、稲穂が実った仙台市郊外。そのなかの東北本線を、仙台空港からの列車が、駆け抜けて行きます。宮城米と言えば、やっぱり「ひとめぼれ」。平成3(1991)年に登場し、この年の新語・流行語大賞でも「銀賞」を受賞しました。今年で誕生から30年。新しいブランドが続々と誕生するなか、宮城米の人気銘柄として広い支持を受けています。米どころ・東北の秋は、食いしん坊にはたまらない季節ですね。
そんな宮城県産環境保全米「ひとめぼれ」を使用していることで知られるのが、仙台駅弁「こばやし」の各種お弁当。なかでも、紐を引き抜いて蒸気で温める加熱式の牛たん弁当は、仙台駅弁のシンボル的な存在となっています。今年の東北デスティネーションキャンペーンに合わせて登場した「仙台名物牛たん弁当」(1580円)は、その新バージョンです。紙蓋にも伊達政宗公の像や仙台七夕の風景が描かれ、より仙台らしさを強調しています。
【おしながき】
- 麦飯
- 牛たん焼き
- 花人参煮
- 万来漬け
- 七味唐辛子
紐を引き抜いて約5分。特製塩だれで熟成させて焼き上げた牛たんのいい香りが漂ってきたら、ふたを開け、湯気を浴びるのが、至福のひととき。程なく、湯気の向こうから麦とひとめぼれをブレンドした麦飯の上に載った厚切りの牛たんが現れます。こばやしによると「仙台名物牛たん弁当」では、自社の加熱式牛たん駅弁では最も厚い「7mm」の牛たんを採用したそう。久しぶりに牛たん駅弁をいただいた方は、その進化にきっと驚きますよ。
温められていいテカリになったところで、七味をパラパラとすれば、一層、食欲がそそられてきます。肉厚で心地よい歯ごたえの牛たんに、心満たされる時間を過ごすことができますが、やっぱり気になるのが牛たん仕入れ価格の高騰。こばやしによると、少し前の時期より約3倍に値上がりしているのだそう。また、牛たん専門店と違い、駅弁は価格改定のハードルも高く、現状、かなり“破格”のお値段での提供となっていると言います。
「仙台名物牛たん弁当」は現在開催中の「駅弁味の陣2021」にも参加しています。仙台から帰りに新幹線のシートに腰掛けたら、牛たん弁当の紐を引き抜きたくなってしまうもの。加熱式容器は飛行機には持ち込めませんから、鉄道旅ならではのお楽しみでもあります。ふたを開けたら、肉厚の牛たんのうま味を感じながら、牛たんを提供して下さる皆さんの努力に思いを馳せて、しっかりと噛みしめていただきたいものです。
(初出:2021年10月27日)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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