EVO2015の歴史的珍事「早すぎたガッツポーズ」の裏側にあったもの “勝負を分けたカウンターヒット”を生んだ「0.1秒の駆け引き」(3/3 ページ)

» 2018年07月29日 11時00分 公開
[ねとらぼ]
前のページへ 1|2|3       

 ヲシゲはゲージ管理を始めとした完璧な状況判断と、的確なコンボ選択で最終セットの2ラウンド目を勝利。会場は湧き、完璧なプレイを誇るかのようにヲシゲは席を立ってしまった。一方、歓喜するヲシゲとは対象的に、小川は極めて冷静に「ヲシゲは急いで席に戻るはずだ」と考えていたという。


画像 単発のヒット確認から覚醒必殺技を2回連続でヒットさせるコンボ。この状況で相手を確実に倒し切ることができる唯一のコンボだった(画像はYouTubeより)

画像 ヲシゲが席を立った瞬間も、小川は冷静に画面を見つめていた

 そして、「この状況でコントローラーに触れたら、ヲシゲはどんな行動を取るのか」を予想。短い時間の中で最も可能性が高いと判断したのは、“レバーを後ろに入れた状態で「HS」(※)のボタンを押すこと”だった。

【HS】読み方は「ハイスラッシュ」。ボタンを押すだけで出せる通常技の1つ。ストリートファイターシリーズでいう「強パンチ」のようなもの。


 ヲシゲが操作するのは、トップクラスのスピードと強力な起き攻め(※)を特徴とする「ミリア=レイジ」というキャラクター。ミリアのHSは、外したときのスキは大きいが発生が非常に早く、仮にヒットしていればそこから起き攻めに移行でき、レバーを後ろに入れておけば近づいてきた相手を通常投げ(※)で投げられる可能性もある。「暴れ」(※)としてHSがヒットしても、投げを当てても、そこからミリアの勝ちパターンへ移行できる。


画像 「ミリア=レイジ」(画像はGUILTY GEAR Xrd -SIGN-公式サイトより)

画像 ミリアのHS(画像は続編に当たる「GUILTY GEAR Xrd REV 2」のものだが、モーションはEVO2015時点とほぼ同じ)

【起き攻め】ダウンした相手が起き上がるときに攻め込む行動の総称。ミリアの起き攻めは非常に見切りづらい上に、起き攻めが成功するとそのまま再度ダウンを奪い、次の起き攻めに移行できる。


【通常投げ】全てのキャラクターが使用できる投げ技のこと。ギルティギアシリーズでは、相手に近づいて左右どちらかにレバーを入れた状態でHSボタンを押すと通常投げが成立する。


【暴れ】攻めてくる相手に対し、ガードを固めるのではなくあえて技を出すことで相手の攻めを止めようとすること。


 もちろん、ヲシゲがこの通りに考えているという確証はない。しかし、当然迷っている時間もない。小川はザトーを棒立ちしているミリアの眼の前に移動させ、自らの判断を信じてカウンターヒットしたときに大ダメージを奪うことができる技「しゃがみHS」を打った。


画像 カウンターヒットする直前の様子。小川はしゃがみHSを打っており、ヲシゲはHSのモーションに入ったばかり(画像はYouTubeより)

 レバーを後ろに入力すれば問題なくガードできるタイミングだったが、ヲシゲはHSを押してしまっていた。お互いの技が交差するが、ボタンを押したタイミングはわずかに小川の方が早く、ザトーの技がカウンターヒット。そして小川は画面上のカウンターヒット表記を冷静に確認し、カウンター時限定の大ダメージコンボをミスなく決め、そのままの勢いで勝利した。勝敗が決した後、今度は小川が観客に向かって勝利をアピールすることとなった。


画像 KOの瞬間(画像はYouTubeより)

画像 観客に向かってアピールする小川(画像はYouTubeより)

 小川によると、「仮にしゃがみHSがカウンターヒットしていなかったら、よくて3〜4割のダメージ。いずれにせよ状況は有利になるが大ダメージコンボにはならない」という。もし、あのタイミングでヲシゲがHSを押していなかったら、最終ラウンドの存在に気付くタイミングがほんの少しずれていたら、ザトーの踏み込みがもう少し深ければ、小川がカウンターヒットを見逃していたら――あの状況でカウンターヒットを成立させられる猶予は0.1秒ほど。ほんの少しでも状況がずれていれば、あの事件は起こらなかった可能性が高い

 格闘ゲームは、1フレーム――つまり60分の1秒の差が勝敗を分かつ競技だ。ヲシゲが席を立ったことは紛れもないミスだが、その時点で勝敗が決まったとは言い切れない。その直後の展開にもフレーム単位の駆け引きが繰り広げられていたのだ。


画像 その後、順当に勝ち進んだ小川はそのまま優勝。EVO2015の王者となった(画像はYouTubeより)

 EVO2018は8月3日から3日間開催される。きっと今年も多くの名勝負が見られるはずだ。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news174.jpg 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  2. /nl/articles/2404/26/news154.jpg 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/12/news174.jpg 築年数不明の平屋にある、ボロボロ床板をはがしてみたら…… 発覚したヤバい事実に「ビックリ!」「大丈夫でしたか?」心配と驚きの声
  5. /nl/articles/2404/26/news022.jpg ママの足にくっつく生後7カ月の赤ちゃん、甘えてるのかと思いきや…… 計算された行動と「ちいこい後ろ姿がかわいすぎ」て目が離せない
  6. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  7. /nl/articles/2404/25/news069.jpg “作画軽減ガンダム”をガンプラで作成 → 使用パーツも最小限の再現ぶりに「完全に一致」「部品軽減ガンダム」
  8. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  9. /nl/articles/2404/18/news134.jpg 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  10. /nl/articles/2404/26/news024.jpg 0歳赤ちゃん「(ママ来たっ!)」→喜びが抑えきれなくて…… 尊すぎるダンスが300万再生「心が浄化されていく」「朝から癒やされました」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」