夢がかなった? マエストロになったり丸くなったり粉砕してみたり:E3 2006「Wii27番勝負」(その9)
どうせならとWiiタイトルすべてを持ち回りで担当することになった突発企画だが、気がつけば終盤戦と出遅れた。「Wii MUSIC:ORCHESTRA」と「METROID PRIME 3 CORRUPTION」と「PROJECT H.A.M.M.E.R.」を体験してみたわけだが、どうも選んだタイトルに一貫性がない気がする。
タクトを振るうマエストロになる「Wii MUSIC:ORCHESTRA」
任天堂のメディアブリーフィングは宮本茂氏のオーケストラ指揮からはじまった。背後の画面に並ぶ映像の中の奏者たちが、宮本氏の持つWiiリモコンの動きに合わせて曲調を変えていく。ここで、我々は実際にリアルタイムでプレイしているのだと気付かされた。
小さい頃、一瞬だけだがマエストロに憧れた。指揮棒をそえる指先ひとつでオーケストラの奏者が音楽を奏でる。背後にはその音楽に身を委ねる観衆が。緩急つけて楽譜をめくり、曲が終わると満足そうにお礼をする……。気持ちいいに違いない。しかし、指揮者になるには血のにじむような努力と才能と運が必要だ。どの職業もそんなものなのだろうが、指揮者はまた独特といえる。なによりも自分にそれだけの音楽の才能がないことに気がつくと、興味も薄れていった。
しかし、ここに来てチャンスが巡ってきた。宮本氏のように、Wiiリモコンひとつで音楽を指揮できる「Wii MUSIC:ORCHESTRA」の登場だ。内容は実に単純。曲に合わせてWiiリモコンをタクト代わりに振るだけである。ゆっくり振れば曲は遅くなり、早く振るとテンポが上がる。実に直感的。
なるほど、ひとりでももちろん悦に入ることができるが、正しい楽しみ方はやはり観衆があってこそのゲームなのかもしれない。確かにひとり必死にタクトを振るのもいいが、他人がいると爽快である。インストラクターのお姉さんにも「オジョウズ」と褒められたら、有頂天にもなるというもの。Wiiリモコンもセンサーバーの範囲であれば問題なく認識してくれるが、どこまで動きをダイナミックにできるかは、この場では確認できなかった。どうせならば、感情の赴くままにリモコンを振るいたい。テンポの速い曲は多少疲れそうだが、リモコンを手元でちょっとだけ動かすだけでも反応してくれるので、ゆっくり座りながらでもできる。
「Wii MUSIC:ORCHESTRA」は、ぜひWiiと同時発売をお願いしたい。普通にほしい。自分の知っている曲を思い通りに奏でることができるという内容だけになるのか、それとも何かしらの別のゲーム性が加わるのかはデモ版では分からないが、とりあえず夢が叶った瞬間だった。こういう“なりきりモノ”も、Wiiの魅力を引き出すひとつの要素と言えよう。
サムスとお近づきになれる気がした「METROID PRIME 3 CORRUPTION」
1986年、ファミリーコンピュータディスクシステムに登場した「メトロイド」は、時を重ねて対応機種の進化とともに、グラフィックスの変化、ファーストパーソン・シューティングの要素追加など、時代に合わせて変化していった。そして生誕20周年の今年、Wiiにて最新作「METROID PRIME 3 CORRUPTION」が発表された。どうやら、また銀河に名を馳せた賞金稼ぎ(バウンティーハンター)サムス・アランになる日(中身は女性)がやってきたようだ。
北米で特に人気があることもあり、会場ではそれなりの試遊台が用意されている。基本、Wiiリモコンを右手、ヌンチャクを左手に持ち、移動をヌンチャクで、ショットとアクションを右手が担当するといった案配。ヌンチャクのCボタンで特殊能力であるモーフボールへと変形する。このゲームの特徴として、このモーフボールにならないと通れない場所があったり、さらにこの状態で爆弾を置き、その爆風で飛び上がらなくてはならないところがあったりと、謎解きの要素もふんだんに取り入れられている。
デモ版では、謎の研究所が舞台となっている。敵がわんさかいる施設内を時には人として、時には玉っころとして転がって移動していく。さて、今回のお試しをするにあたり、筆者にとっては最初のヌンチャク使用の瞬間だったわけだが、なにげにそれほど違和感なく操作している自分がいた。もちろん最初はどこにボタンが? と手元を確認することもあったが、しっかりホールドさえしていれば目を閉じてでもプレイできるようになるだろう。と、実際、英語で書かれた説明を必死に読んでいると、よくわからないところへコロコロ転がって移動していた。
そして目の前には敵である。さっそくリモコンのポインターを敵に合わせ、Aボタンで撃ち込める。これまたスムーズ。視点変更でもたつくこともあるが、コレは筆者がいまいちコントローラの使い方に不慣れなためだ。ほどなくしてなんだか強そうな敵と遭遇。この先どうなるの! といったところでプレイ終了となった。
横向きアクションだったメトロイドは、メトロイドプライムになって視点が変化した。その時のような劇的なゲーム性の変化はなかったが、なによりも手元の操作がより“人間”のものに近づいたように感じる。従来はどうしてもロボットやラジコンを操作するようなデバイス感覚だったが、Wiiのコントローラは少しだけ人間の動作が加わった分、なにやらサムスに少しだけ近づけた感覚を得た。もちろん一方的な片思いなわけだが、いずれは彼女とともに狭い通路を駆けめぐり、寄せ来る敵をなぎ倒せるのかと思うと楽しみで仕方がない。
ハンマーぶん回して粉砕――「PROJECT H.A.M.M.E.R.」
タイトルどおり。巨大なハンマーを武器にとりあえず敵を倒すのが目的。なぜこれを選んだか。それはハンマーが好きだから。小さい時に指揮者になりたかったように、自宅の改築工事を見て、大工もいいなと思った口なのだ。適当な椅子くらいなら今でも作れる。しかし、これはそんなビルダーの話ではなかった。
プレーヤーは巨大なハンマーを武器に機械に制圧された街を解放に赴く。Wiiリモコンをポインター代わりに攻撃の基点とし、ヌンチャクで移動を行う。例えばAボタンを押してリモコンを左右に振ると、プレーヤーはハンマーを横に振り回し、スピン攻撃を行ってくれたり、いったん上画面へポインターをずらし、再び下に持って行くことで地面を砕くほどの重さが加わった攻撃を繰り出す。
街にある車や街頭、ゴミバケツなども破壊可能で、木箱の中にはライフ回復アイテムが入っていたりする。攻撃した敵やエフェクトは何段階かで壊れていき、最終的にバラバラに分解され消滅する。ゲームはこうして敵を破壊し、アイテムを取得、先に進んで目的を達するというパターンのようだ。
小さい頃に大工になりたかったが、これはむしろ解体屋のお仕事だ。ヌンチャクを動かして技を繰り出さないと通れない敵もいたりと、ある程度は謎解きの要素もあるようだが、デモ版ではナビゲーターがヒントを出してくれるので苦もなく進む。これがチュートリアルだからなのか、実際のゲームでもそうなのかはわからないが、E3バージョンは最後この街のボス(?)へ至ると「TO BE CONTINUE」と宣告され、終了となる。
Wiiコントローラとヌンチャクを併用するというスタイルは、アクションゲームやFPSでは定番となりそうだ。実際、使用してみても違和感はそれほどない。そんなバカなと思われるかもしれないが、両手で握るコントローラがちょっと間隔を開けて左右に分かれたものと考えてほしい。これに試作中の銃型コントローラ「Zapper Style」が加わることで、よりその形は明確になる気がする。本作の試遊では、縦方向へのアプローチが少なかった気がするが、この先どう表現されるのかが楽しみな1作である。
3本やってみて
今回、Wiiをいち早く体験できたことは有意義だった。なによりも感覚を体験できたことが大きい。思ったほど重くないコントローラだが、これが長時間になるとどうなるのかはわからない。ただ、明らかにゲームのある風景は変化するものと予感した。これまでも腕や足、身体全体を動かすデバイスはあったが、ゲーム本体がその思想から発生したものは前代未聞である。この先のゲームライフをどう提案してくるのか期待したい。
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