くねくねハニィ視点のGDCはどうだったんよ?:くねくねハニィの「最近どうよ?」(その8)(2/2 ページ)
海外デベロッパーの台頭に疑問なし?
少し前のGDCでは、日本市場で売れるためにはどのように開発したらいいか、とか日本発のゲームはどうやって作られているのか、などがセッションに含まれることが多かったけど、ここのところ「日本市場」という言い方をしなくなったね。急激な日本ゲーム、日本市場離れが進んでいることは否めないですね。日本からいらっしゃる方が多くなったのも市場の逆転があって、アメリカに学ぶものがあるからなのかしら? と思ったりしたけどね。でも! 今回も日本から多くの力強い講演をしてくださったクリエイター様たちがいらっしゃったので、見直して戴けたことと信じますが!
ってことで、アメリカ発ゲームの講演をひとつ紹介しようかな。今年のGame Developers Choice Awardを総ナメにしたこのゲームのリードデザイナー・クリフ ブレジンスキー氏(Epic Games)の「Designing GEARS OF WAR:Iteration Wins」。話題のゲームということもあって、たくさんの人たちが聴講していたんだけど、ハニィも聴いてきたよ〜。繰り返すことが成功へとつながった、というお題。
FPSがお盛んな北米市場で、あえてサードパーソンの視点で作られたこのゲーム。チーム内での相当な試行錯誤があったみたい。戦場での中継カメラ(後ろからくっついていく感じ)のように臨場感のあるカメラワークなどのこだわりや「カバー」(障害物に隠れながら敵を撃つ)と呼ばれるゲームシステム、ジャンプやかがんだりする操作をなくす(隠れながら撃つことに集中させるため)などの大きな仕様部分を含むゲームの詳細に関しては、“チームメンバーによるブレーンストーミング→実際に動かしてみる→可否の選定”の繰り返しから生まれたものなんだって。ただ、チームメンバーが自由にブレーンストーミングをしていく中で、ダラダラとまとまらない方向に行ってしまうこともあるので、必ず「エイリアンは出てこない」とか「レーザーガンは武器として設定しないこと」などの決まりごと「制限(restriction)」を設定したのだそう。
ゲームプレイがすばらしいことは当然だけど、それだけでは……というブレジンスキー氏。チーム内のどんなゲームにするのか? というコンセンサスを高めるために、必ずゲームデザインをドキュメント化したとのこと。ただし、紙の上だけでチームメンバーと触れ合っていたのではなく、メールよりフェイストゥフェイスのコミュニケーションを取って人間関係も構築していったことを語っていたよ。
最後に結論として、「Gears of War」のようなすばらしいゲームを作るには下記のような要件があると締められてました。
- マネジメントシステムの構築
- フットワークを軽くする
- 可能な限り、整理してまとめておく
- すばらしいゲームを作る
うーん、カチカチと作っているというイメージだったんだけど、すごくチームプレイの賜物だったってことが強調されてたね〜。マネジメントシステムとかフットワークとか精神論的な部分は何となく日本的な気がするしね。一点違うのは、整理してまとめる、つまり書類化しておくってところかな? ランニングチェンジ(やりながら変更が加わること)をしたとしても、チームメンバーたちが迷わないようにドキュメントにしておくっていうのは、後で振り返ったときに仕様が分かりやすいなどの利点もあるしね。ハニィが知るところの日本のソフト開発において、この書類化が得意なところは少ないかも。まぁ、もちろん、これが絶対正しい! というわけではないけど、その後の商品説明やローカライズ時にもこういう書類は役に立つってこともあるから、あなどれないと思いますよん。
GDCの裏側
ネガティブな意味での裏側ではないよ。GDCではゲーム業界のあらゆる問題にも目を向けて行われてるの。たとえば7日に行われたパネルディスカッション「Early Lessons in Digital Distribution」。Eディストリビューションの現状と今後について、去年から継続的に行われているもので、インフラ環境に関してやパッケージ販売の小売店との関係性など、さまざまな側面からパネラーが意見を述べたりするの。
今年は、Eディストリビューションにあたり、「実際の小売店が敵対することにはならず、協調して展開ができるはずであるということ」、また「インフラが整っていないため今の段階では、必ずEディストリビューションは成功するとは言えないこと」、ただし「マーケティングやPRを正しくセットアップできれば、小さな規模でもビジネスを立ち上げることができる」、などなど意見が出されたけど、最後に「もちろんEディストリビューションが成功する前提条件としては、すばらしいゲームが提供されるということ」だそう。ハニィとしては、ちょっと平べったい感じがして退屈だったわ。もう少し屈託のない意見の交換を期待したいところですね〜。
また、「SEX IN THE GAME」というセッションがあって、ゲーム業界が直面している性描写や暴力について語るんだけど、実際に「なぜ映画はよくてゲームはダメなの?」という話はよく聞くし、レーティングのあり方等に関してもいろいろな意見があってしかるべきだよね。こういう話って表立って日本ではされない話だから、とても興味深いと思うハニィでした。この他にもゲーム業界で働く女性の会「Women in Games」がミーティングを行ったり(ハニィは残念ながら会員ではありません……)していて、GDCがゲーム開発のみならず、ゲーム開発を取り巻くさまざまな課題や問題を網羅して行われてることが多い、ってことがわかるよね〜。さすが! 入場料が高いだけはあります!
ハニィのあとがき
好天に恵まれて開催されたGDC。天気があんまり良くないと言われるサンフランシスコにしてはずっと天気がよくて暖かかったのはホントにうれしかったねぇ。日本からの参加者も多くてびっくりしたんだけど、日本人だけ平均年齢がちと高い気が……。もちろん、一生懸命セッションを聞いて回る方々も多かったのですが、日本人はかたまってて、休憩コーナーでくつろいでたり、日本人講師のセッションを聞く姿がよく見られたけど、あららら?って感じでしたね〜。アメリカに来てまで日本人の話聞いてどうする? と思ったりして。
第1回目の「最近どうよ?」のE3の件でも語ったけど、GDCは特にゲーム開発者向けのカンファレンスである以上、もっと若い人たちを送り出してほしいなぁと思うハニィです。これからゲームを作っていく新しい人たちが、アメリカでのゲーム開発事情を少しでもかじって欲しいと思うわけです。いえいえ、アメリカの開発の仕方の真似をしろと言っているのではなく、「へぇ、そんなやり方もあるんだ〜」的でよくて、自分の考え方と対比して自分のやり方を貫くもよし、自分のものとブレンドしてもよし。開発の現場にいないおっさんではなく、国内のみならず海外に向けて開発を余儀なくされるこれからの人たちには、ぜひ、見ていただきたいカンファレンスですよ。ぜひ来年はご検討くださいませ、と言いたい!
GDCは、ゲーム業界の課題まで網羅している、という意味では奥が深いの。でも、残念なのは、ゲーム開発に関しては日本人が講義することもそこそこ多いのに、ゲーム業界の問題やビジネスを語るセッションでは日本人講師を見ることはほとんどないよね〜。先に書いたように、日本市場が注目されることが少なくなったからなんだろうけど、日本から海外市場を見据えるビジネスマンやアナリストは、これらのディスカッションに混ぜて欲しいなぁと思う。日本のソフト開発が欧米を意識している以上、欧米のビジネスマナーや規制を無視して開発のみならずビジネスを進められなくなっているんだし、そこに物申す雰囲気があってもいいと思うなぁ。
「日本だけ特殊」。そんなことを言われて久しいけど、どうせ特殊なら、排他的に突っ走るという意味での「井の中の蛙」よりは、我が道を行ってるけど、ちゃんと海外市場を理解して自らとの距離を知っている「己を知る」日本でありたいと思う。そういう意味でも、海外市場の現状を日本の皆さんにきちんと伝えなきゃ! と身が引き締まる(実際に体型は引き締まっていない)ハニィでした! まもなく帰国します!
くねくねハニィのプロフィール
1967年アメリカサウスダコタ生まれの日本人。
小学生からはゲームセンターに通いまくって育つ。
1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる困ったやつ。独特の口調ですが、慣れてください。言ってる中身は至極マジメ。ちなみに「風来のシレン」が好物で、名前もそこから借用。この度、なんだか公認してもらったそうですが、どういう経緯でそうなったかはよくわかりません。ちょこちょこと海外に出没しますが、今回はサンフランシスコに降り立ちました。
さて、ここの注釈は編集が書いているわけですが、今回のGDC閉幕後には、ハニィに強制的にサンフランシスコ中を引きずり回されました。方向音痴です。
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