デモクラタイズなゲーム業界へ!――2008年のGDCを総括くねくねハニィの「最近どうよ?」(その21)(2/8 ページ)

» 2008年03月14日 14時22分 公開
[くねくねハニィ,ITmedia]

マイクロソフトのキーノートスピーチ

 スピーチをしたこのジョン・シャパート氏。いわゆるキャリア組(ビジネス的インテリで他業界から移ってきた人)ではなく、プログラマから始めてゲーム業界でのし上がってきた方。お話はそれほどオーラが出てるとか、上手とかではなかったんですけど、自らのゲーム業界人生を交えながらのスピーチでしたのよ。最近(昨年夏)EAからマイクロソフトに転職されたばっかりなのでちょっと心配だったんですけど(余計なお世話か)、Xbox LIVEの責任者として堂々と発表していましたね〜。

 ここで押さえておいて欲しい情報としてはGames CommunityとZuneにつきるかなと。

Games Community

 中堅以下のゲーム開発会社や個人にとっては、スペック的にも開発費的にも工数的にもハードルが高いと思われがちの次世代機(もうこの呼び方もしないほうがいいね)だけど、これでは新しい風やイノベーティブなものの発想が限られたり、下克上は起こらないわけですな。ま、マイクロソフトがそう思ったから、かどうかは分からないけど、Xbox LIVEマーケットプレースをアマチュアデベロッパーを含めたすべてのゲーム開発者に「開放」するんだね。 

 ゲームを開発するには開発ツールXNA Game Studio 2.0を使うのだ。ゲットするには XNA Creators Clubのメンバーになればいいのね。今までは限定されたサードパーティ(学校とか、特定の開発者とか)だけが提供されていたんだけど、オープンにすることによって、世界各国いろんな人たちがゲームを開発することができるようになったのだ。実際に試験的にXNAの開発環境を開放した(400個の学校を選定して配ってみたらしい)ところ、4カ月で200作品のXNAゲームの提出があって、いくつかのタイトルがすでに発表されていたよん。

 基調講演では、この中のひとつ「The Dishwasher(皿洗い):Dead Samurai」の開発者、ジェームズ・シルヴァ君のサクセスストーリーがコメディタッチのビデオクリップで紹介されてたけど、実際に彼はレストランの皿洗いを職業としていたらしいの。クリップの中でジェームズ君がプランナーであり、プログラマーであり、グラフィッカーであり、サウンドデザイナーであったことが明らかにされたんだけど、この成熟したゲーム業界の中で、ゲームを作りたいって男の子が1人で立ち上げたものが世の中に評価される土壌があることに、ハニィはとても感銘を受けましたね〜。最後に本人が実際に壇上に上がって「XNAのおかげで、これからはスウェットで1日中過せるようになった」って発言してたけど、「皿洗いをしているときは、皿洗い人が全員を殺すゲームを作りたい! と思ってました!」っていうお言葉にXNA責任者のクリス・ミッチェルさんも「おいおい、勘弁してください」と返していたのは爆笑を呼んでました……。

Zune

 Xbox 360向けのゲームをPCでも展開するぞ! っていうマイクロソフトの戦略は前々から聞いてることだけど、今回はそこに、Zuneが加わったみたい。iPodが爆発的に出回ってる昨今、あんまりイケてるイメージもなくひっそり売ってる感じだったZuneだけど、いよいよマイクロソフトも本腰入れるのかな? って思ったハニィでした。エコシステムって言葉が一時もてはやされましたけど、そんな大掛かりなものとも違うような。ハニィとしては、マイクロソフト枠のマルチプラットフォームとでも呼びましょうかね〜(笑)。

 ただ、いろいろなソフトを“マルチプラットフォーム化”するのは難しいことで、結局は相当のカスタマイズの工数がかかってたいへ〜ん! って声が聞かれるから、実際はこのマイクロソフト枠マルチプラットフォームは本当の意味での「ワンソースマルチユース」を実現する最短の道なのかもしれないね。XNAで制作されるコンテンツが、PC、Xbox 360、Zuneへ提供できるだもんね。あ、さらにWindows Mobileが載ったケータイ端末なら、ケータイさえこの対象にもなるのよね〜。すばらし〜。

 Zuneのゲームデモも披露されてて、自分がリッピングして取り込んだお好きな曲を聴きながらゲームを遊ぶことができるんだ!って言ってたけど、商用化まではまだ時間がかかるんだってさ。機能もそうだけど、Zuneはデザイン性とかUIとかもうちょっと目立たないよね〜。せっかくのプラットフォームなのでもう少し頑張って売っていただかないとなぁ、と辛口のことを考えてみたりもするハニィでしたん。

マイクロソフトのキーノートまとめ

 マイクロソフトはキーノート中「デモクラタイズ(democratize)」、日本語直訳だと「民主化」という言葉を頻繁に使っていたけど、これに関してはあえて民主化と訳さないことにしてみた。ハニィの考える民主化とは「完全に一般ピープルに委ねられている」ってことだから。Games Communityに関しては、アップロードされたコンテンツは、最終的にXNA Creators Clubのメンバー同士による評価プロセスを経て、表現の妥当性や適性に対する評価が行われる、ってとこまではいいけど、それ以降は結局プラットフォーマーであるマイクロソフトにすべてが託されてるわけで、そりゃー、最後の難関の閻魔様がいる限りは完全民主化ではないでしょう? ここでは「開放」とあえて使ってみることにするね。

 あ、誤解しないでほしいのは、ハニィはこの試みを否定しているわけではないのよ。ただ、言葉にいちゃもんをつけてるだけで(笑)、アメリカンドリームそのものともいえるこの取り組みには賞賛の拍手を送りたいと思っているんだから!

 日本市場ではあまり猛威を奮っていないXbox 360だけど、アメリカでは稼働率が高い、つまり、ハードを持ってる人のソフト購入率が非常に高いっていうハード冥利につきる状況になってますねん。もうすぐ北米だけで1千万台を販売することになるXbox 360はそんなコアユーザーとネットゲームで支えられているのね。「Home」の追加情報もあまりないSCEに対する「勝利宣言」と言い切る方々もいらしたわ……。

 だからと言って、任天堂ほど一般ユーザーの裾野を広げているかというと、“ハードコア”向けのゲーム機というイメージのレッテルを貼られている感のXbox 360。期せずしてそうなったんだろうな〜と思われますよね? だって、マイクロソフトの他の製品を見てみてくださいよ。一般ユーザーを取り込んで大きくなった会社じゃないすか! マイクロソフトとしては、PCでも家庭用ゲーム機でも、ポータブルプレーヤーでも、本来であれば任天堂寄りの方向に向かうべき会社でしょう?

 ハニィが思うには、これら「コミュニティゲーム」などの「デモクライタイズ作戦」は、一見、開発者向けまたは常に新しい刺激を求めるコアユーザー向けとも取れる印象だけど、間違いなくカジュアルゲーマーへのアプローチの一環だな、と。これまでも、「ビデオマーケットプレース」でのドラマ映像ダウンロードなど、ライトユーザーへのトライアルを繰り返してきたことと何も流れを反するものでもないのだぞぉ。スピーチの初めにシャパートさんが言っていた「ハードコアユーサーとカジュアルゲーマーやソーシャルゲーマーの垣根をなくす」ってことだわね。今後もマイクロソフトの「カジュアル」&「ライト」へのアプローチは続く……って感じでしょうか〜。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. /nl/articles/2412/15/news011.jpg 「懐かしい」 ハードオフで“30年前のPC”を購入→Windows 95をインストールしたら“驚きの結果”に!
  4. /nl/articles/2412/16/news107.jpg 「靴下屋」運営のタビオ、SNSアカウント炎上を受け「不適切投稿に関するお詫び」発表 「破れないストッキング」についてのやりとりが発端
  5. /nl/articles/2412/15/news035.jpg 餓死寸前でうなり声を上げていた野犬を保護→“6年後の姿”が大きな話題に! さらに2年後の現在を飼い主に聞いた
  6. /nl/articles/2412/15/news002.jpg 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  7. /nl/articles/2412/10/news133.jpg 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  8. /nl/articles/2312/15/news032.jpg 放置された池でレアな魚を狙っていた親子に、想定外の事態 目にしたショッキングな光景に悲しむ声が続々
  9. /nl/articles/2412/15/news028.jpg 脱北した女性たちが初めて“日本のお寿司”を食べたら…… 胸がつまる現実に考えさせられる 「泣いてしまった」「心打たれました」
  10. /nl/articles/2412/16/news023.jpg 父「若いころはモテた」→息子は半信半疑だったが…… 当時の“間違いなく大人気の姿”に40万いいね「いい年の取り方」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」