ここから音声が……? 灯籠のような不思議な物体「ラジオ塔」をまとめた同人誌が興味深い司書メイドの同人誌レビューノート

近所の公園にもあるかも?

» 2017年09月03日 12時00分 公開
[シャッツキステねとらぼ]
シャッツキステ

 世間の学生さんはそろそろ新学期。夏休みのように、朝寝坊できないなあ……って、あれ? 子どものころの夏休みって、朝寝坊してました? よく思い出してみれば、早起きしてラジオ体操にお出かけしていたという人もいるのでは。ラジオを中心に、公園にみんなが集まるあの光景。あらためて思い返すと、そのときラジオはどこに置かれていたでしょうか。ちょっとした塀の上や、ベンチでしょうか? 実は昭和の初めのころ……公園ではラジオを置く専用の塔、「ラジオ塔」が使われていたのです。

今回紹介する同人誌

「ラヂオ塔大百科2017」 B5 76ページ 表紙・本文カラー

著者:一幡(いちまん)公平


同人誌「ラヂオ塔大百科2017」同人誌「ラヂオ塔大百科2017」 この中にラジオが!? ラジオ塔の今の姿を追います

街頭テレビならぬ「街頭ラジオ」。昭和初期から残る、明日行けるラジオ塔40基を現地レポート

 こちらの同人誌は日本全国は元より海外にまで赴いて、現存する「ラジオ塔」およそ40基を丹念に追い、レポートした本です。

 ラジオ塔とは、誰でもラジオを聞けるように、街中に設置されたラジオ台のことです。昭和を振り返る映像で「プロレス中継を一目見ようと、人々が街頭テレビの周囲に集まって……」などというシーンがありますが、あのような街頭テレビならぬ、街頭ラジオにみんなが集まり、耳を傾けていた時代があったのだとか。昭和初期からはじまり、1943年(昭和18年)には一気に日本全国でラジオ塔が普及し、戦中、戦後を経て、やがてテレビの登場・普及とともにラジオ塔は過去のものになってゆく……という流れがあるようです。

 そんなラジオ塔の成り立ち、設置数、現存する場所などが丁寧に解説されていて、これを読めばラジオ塔通になれると言って過言でないのでは!? という内容の充実ぶりなんです。

同人誌「ラヂオ塔大百科2017」 こんな風光明媚な景色の中からラジオ放送が聞こえてくる、現役ラジオ塔です

えっ、この中にラジオが!? それぞれのラジオ塔の姿を追う

 しかし、何よりこの本のすごいところは、現存するラジオ塔の姿が一つ一つ写真付きでレポートされていることでしょう。ページを開いてまずびっくり! え、この中にラジオが入っていたの? と食い入るようにページを見つめてしまいました。

同人誌「ラヂオ塔大百科2017」 これはこれで魅力ある雰囲気に……

 ラジオ塔という存在をこれまで知らなかった私から見ると、どう見ても灯篭か公園のオブジェなのですが、著者さんの観察眼にかかれば、ラジオを置く台座などの特徴を見逃しません。その姿は「二つとして同じものはない」といわれるだけあって、どれも個性的。池の中に立つ朱色も鮮やかな美しいラジオ塔はなんと現役でラジオが流れているのだそうです。一方で、神社の傍らで崩れ落ちそうな、廃墟好きの心をくすぐりそうなものも。

現役、引退、そして復活、隠れたエピソードまで網羅。高い完成度。ラジオ塔の魅力が余すところなく伝わる

 今まで存在すら知らなかったラジオ塔。でもそこには、人々がラジオを求めた時代から、戦中に金属の提供をしなければならなかったような歴史、そしていまラジオ塔を大切に使い、復活させようとしていることなど、それをとりまく人々たちの物語が隠れていました。本では、それぞれのラジオ塔にまつわる状況を、時に大学の先生のコメントを交え、時にラジオ塔を復活させた人々に取材し……と、実にさまざまな事柄が子細に書かれています。

同人誌「ラヂオ塔大百科2017」 建設当時はこんな姿だった?

 その細やかな配慮は、本の作りにも表れています。見やすいレイアウト、すっきりまとめられた情報、イラストを添えて理解も進みます。奥付を見ると、イラストやデザインは著者さんとは別に、ご担当された方がいらっしゃる様子。しかも著者さんの本職はカメラマンさん。写真も納得のクオリティーです。もう、このまま一般書店さんに並んでも何の遜色もない完成度です。

 こんなにも全力で「ラジオ塔が好き!」という本を見てしまうと、もうラジオ塔を見過ごしてなんかいられないですよー。

同人誌「ラヂオ塔大百科2017」 個性的なたたずまいに驚きです


サークル情報

サークル名:タカノメ特殊部隊

購入場所:COMIC ZIN

Amazon.co.jp

ヴィレッジヴァンガードオンラインストア

451ブックス

自家通販

Webサイト:http://takanome1.blog.fc2.com/

Twitter:@sq9_s2apq_q


今週のシャッツキステ

シャッツキステ 実はこちらは夏に入る前のころの様子です。この夏、シャッツキステのメイドたちは畑に出て、土を耕したり、種まきをしたりしておりました。畑に行くために、ごしごし洗っても大丈夫な、しっかりしたリネンでエプロンを作成中の写真です。野菜、いっぱい採れたんですよー!

著者紹介

司書メイド ミソノ 司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る

関連キーワード

ラジオ | 同人誌 | 昭和 | 写真 | 歴史 | レビュー


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  6. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」