死ねないばかりにいけにえに――悲しい業を背負った不死者の物語「人柱案山子」が恐ろしくも引き込まれる(3/3 ページ)

» 2018年10月06日 20時00分 公開
[沓澤真二ねとらぼ]
前のページへ 1|2|3       

 「山は見飽きたんだ」と、ホタルは海岸へ。広大な海を見て思いをふけらせたのもつかの間、押し寄せた住民に「お戻りください」と引き留められます。


27P

28P

 するとホタルは海を背に、「我、人柱案山子成」と絶叫。怯えた猟師の弾丸に手足を吹き飛ばされながらもすぐさま再生し、話を続けます。「私は数百年この土地を見守り続けてきた。私は数百年の役目を果たした。神は満足なされた。神はもうお怒りでない。今後、カカシの必要なし! 私はいましめを解かれた」――その言葉にはうそも交じっていますが、長年の思索を経て解放された末に導き出された、ホタルなりの真実かもしれません。


29P

30P

31P

 「海へ、かえる」と言い残し、水中へ姿を消すホタル。あっけにとられていた住民たちは、やがて「神様はもうお怒りでない」「何も心配はいらない」と納得し、先刻の暴言も忘れてカカシ様へ感謝の言葉を贈るのでした。


32P

33P

 そして時は流れ、ハルは義足に支えられながら大きく成長。「めでたしめでたし、じゃねえんだよ」「俺が事故に遭わなけりゃ、アンタはのんびりカカシでいられたのかな」と、ふとホタルの思い出を振り返っています。


34P

 そんな考え事をしながら歩いていたそのとき、左足が通りすがりの紳士と接触してしまいました。義足を傷つけたのではと謝る彼の顔は、なぜかホタルと瓜二つ。人混みへ消えるように去っていく姿を見て、ハルは「タフだなあ」とつぶやくのでした。もしかしたらホタルは、全てから解放されて永遠の時を自由に過ごしているのかもしれません。


35P

36P

37P

 「号泣した」「世界観に釘付け」「自分の中で初めての感情が生まれて言葉にできない」と、漫画には大絶賛の声が寄せられました。含蓄のある物語に考えさせられた人も多く、「数百年村を守ってきたホタルが去ったときの、住民達の言い草が心に来た」「ハルが音読した人魚姫が、のちにホタルがハルを救う場面と重なって見えてグッと来た」といった、踏み込んだ感想も。「数百年、カカシに縛られ続けてた村人も、ようやくカカシから開放されたのかな」と、物語の根幹を表すような指摘も見られます。


作品提供:ヨ(@yohakuyori)さん

(沓澤真二)


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」