2018年は「百合の多様性の時代」 『裏世界ピクニック』宮澤伊織×「最悪にも程がある」いとうに聞く、激動する百合の現在地(3/3 ページ)

» 2018年12月04日 20時00分 公開
[青柳美帆子ねとらぼ]
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百合とBL、その深淵

――SFセミナーでの百合講演で、印象に残っている反応はありますか?

宮澤 Web公開後の反応ですが、BL好きの人から「百合とBL、違うと思っていたけど、同じなんだな」というコメントを結構もらいまして。ありがたい反面、「本当に同じなのかな!?」と気になっています。僕は元から百合は好きだったんですが、同性間関係コンテンツの面白さに本格的に目覚めたのがドラマ版の「ハンニバル」からなんですよ。顔のいい男と顔のいい男のものすごい緊張感のあるBLですが、ウワーめっちゃ面白い! こういう風にやればいいんだ!! わかった!!!!ってなって自分でも百合が描けるようになりました。そういう経緯があるので、百合とBLが本当に同じかどうかは関心があるし、差異があるならそこには敏感でありたい。

百合トーク 男と男の緊張感がすごい、ドラマ版「ハンニバル」

いとう 大きなところで見れば一緒の部分もありますが、細かいところでは違うなと私は思っています。

宮澤 これはすごく正確じゃない話になるかもしれないのですが……BLのほうがキャラクター同士の権力の差に敏感、という印象があります。例えば「上司と部下」「囚人と看守」のように、社会的地位の差異をベースとして、関係性を描いているものがあるなと。

いとう 確かに、女性向けコンテンツのキャラクターは、職業をでっかく背負っていると感じることはある……。

宮澤 そう、例えば「アイドルマスター SideM(Mマス)」のキャラクターは、ほとんど全員が“昔の職業”を背負っていますよね。女子アイドルものと比べて、肩書に対する依存度が高いんではないだろうかと感じたわけです。ただ、これももしかすると、現実の世界で女性の職業の自由が男性ほど高くないことに阻害されていて、それが反映されているにすぎないのかもしれない………。

いとう それに近い話で、「社会人百合」というと、お仕事ものになりにくい“壁”はあるかもしれませんね。

――それこそ、現実の女性の仕事像を反映しているのかもしれません。時折、百合カップリングを指して「BLっぽい」と言ったり、BLを指して「百合っぽい」と表現することもありますよね。BLの場合は「受け同士のカップリング」を「百合BL」と評することもあるようですが……。

いとう 私が描いたり好きになるカップリングも「これはBLっぽい」と言われることがあります。なんでだろうと思ったけど、いろいろ考えてみるとそう言われるカップリングには「両者が立場に縛られている」「負って立つ物がある」という特性があることが多くて、そこにBLのフレーバーを感じているのかもしれないなと。ただ、私は完全に「是百合!!!!!」と思って書いているので、いろいろな百合を出してどれも百合だと言っていきたいですね。

――百合やBLが、社会を反映している可能性は面白いと思います。

宮澤 一方で百合やBLは、必ずしも現実社会のLGBTQの問題に親和的とは限らないんですよね。同性間の関係を描きつつも、ときには対立することもありうる。例えば既存の婚姻関係、恋愛関係にLGBTQとしてコミットすることを目指している人にとって、そこから外れることを積極的に肯定するような百合やBLの作品は不愉快なものとして受け止められるかもしれない。

いとう 作り手や読み手の価値観に引っ張られることもありますからね。例えば女性同士のカップリングに、読者が「結婚してほしい」と考えることがある。もちろん、2人の関係性として「夫婦」という形がいい場合もあります。でもそうじゃなく、「恋愛関係のゴール=夫婦」としか考えていないから「結婚しろ」と言っているだけの場合、「キャラクターを見ろ!!!!」と叫びたくなります。

宮澤 海外作品は、必ずLGBTQの要素が入ってくるものなんでしょうか? アメリカの同性愛フィクションをいくつか見た限りですが、すごく社会との接続を意識しているなと感じることがあって。「社会にいかに自分たちの居場所を作るか」という問題を作品に反映しなければという意識が常にあるとしたら、これはけっこう根深いのかな、とも感じました。

いとう そういう作品もありますが、けっこうストレートに百合表現をやっている作品もたくさんありますよ。二次創作対象としての受容のされ方とか、作り手と受け手のどちらにも当事者と非当事者が混在してるのも日本の百合に近かったり。

宮澤 なるほど……その辺りは差はありつつも、日本と海外は大きくは変わらないのかもしれませんね。

いとう 関係の話でいうと、『裏世界』の2人は、「共犯者」なんですよね。「恋人」とは違う。共犯者はたとえ離ればなれになっても、犯した罪からは逃れられない

宮澤 百合は、既存の婚姻関係や恋愛関係とは違う関係性を書ける可能性を持っているから、“そこ”には戻りたくない。もちろん百合に限らず、BLでも男女でもいろんな可能性があるとは思いますが……『裏世界』に関しては絶対に「恋人」や「親友」には落ち着かせないぞ、と思いながら書いています!

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