RPGに出てきそう 独自の世界観で架空の土偶を描いた同人誌『土偶怪物図鑑』司書みさきの同人誌レビューノート

土偶兵や土偶生物など36体が登場。

» 2021年01月17日 12時00分 公開
[みさきねとらぼ]
同人誌 本棚 図書館 司書 コミケ

 一年のはじまりの月、今年はどんな年になるかなとあれこれ計画が脳内を巡ります。去年は、今年は、5年後は……と巡る脳内を、今回の同人誌は軽く飛び越え、うーんと昔、縄文時代の表現がもとになった同人誌です。

今回紹介する同人誌

『土偶怪物図鑑』A5 16P 表紙・本文カラー

著者:犬箱


同人誌 図書館 司書 この見たことのあるような土偶にも実は魔法の力が……!?

謎×謎。土偶に不思議な力が宿ったら

 こちらのご本は、縄文時代の土偶をもとに架空の新しい土偶を描いた同人誌です。作中には土器という名称も出ますが、基本的に器の形をしたものではなく、どれも生き物の形を模した形です。

 ページを開くと土偶たちは「土偶兵」「土偶生物」などに分類され、「魔法により土から生み出された土偶兵士」や「土偶なので食べられない」などの特徴がそれぞれに記されています。しかし冒頭から世界観の解説は一切無し! 文をたどると、どうやら魔法がある世の中で、これらは土から作られている怪物らしいというのが分かります。見たことのある形ほとんどそのままに「空に浮いて移動を行う」と解説が添えられているものもあれば、これは発掘されたことありませんよね!? なオリジナリティーのある造形まで、36体が掲載されています。

 土偶兵士は何と戦っているのか、その世界に人間はいるのか、そしてこれらの土偶を作ったのは誰なのか……不明です。ですが、不明なのに、「おお、なんかカッコいい」「あっ丸っこくてかわいい」と楽しめてしまう不思議。詳細は分からない、けれどデザイン面白い! これって、土偶そのものと共通する事項のような気がしてきました。

同人誌 図書館 司書 きりりとした造形は確かに戦士っぽいかも?

“らしさ”とはなにか。土偶のイメージを楽しむ

 土偶が作られたとされているのは縄文時代、その役割や造形が意図するものについてはいまだ諸説あるそうです。ざっくりさかのぼって縄文時代と一言に言っても1万年以上続いていることを考えても、きっちりと確定させるのはさぞ難しいでしょうねぇ、と遠い目になります。

 このご本を読んでいると“土偶っぽい”という印象が、たくさんのページから感じられます。使用目的も形の意味も分からないのに、土偶らしいとは? 今まで考えてもみなかった“らしさ”はどこからやってくるのか。限られた色でまとめられた新土偶たちの姿と、謎めいた解説を読んでいくと、不確かな、けれど魅力ある土偶のイメージに漂っているような楽しさを感じます。

同人誌 図書館 司書 愛嬌(あいきょう)のある動物土偶も。もしかしたら今後、こんな形の土偶が発掘される可能性も?

縄文時代からやってきた感動をアウトプットする

 作者さんは2018年に開催された土器の展示会を見てこのご本を書くに至り、土器や縄文時代を専門にされている方ではないようです。展示会をきっかけにインスピレーションが湧き、自分の想像を加えてアレンジしたものを表現として生み出す。作品は同人誌にされたり、ネットで公開もされています。作者さんがたくさんの土偶たちを考えたこともすごければ、一つの展示から、新しい発想を羽ばたかせて同人誌という表現につながったこともすごいと思うのです。

 長い長い時を超えて、縄文時代から現在へと、わくわくする土偶の魅力がリレーされていることもうれしく思いながら読んだのでした。

同人誌 図書館 司書 妖怪もいるらしい!

サークル情報

サークル名:猫箱工場

Twitter:@kadokurayasushi

pixiv:https://www.pixiv.net/users/3136220

次回イベント参加予定:コミティア135(申し込み済)



今週の余談

 土器ってクッキーに向いていそうと思って少し調べたら、クッキー型はもちろん、衣類や文具などたくさんのグッズが見つかりました。長い時を経てわくわくさせてくれる形、すごいです。

みさき紹介文

 図書館司書。公共図書館などを経て、現在は専門図書館に勤務。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。


関連キーワード

同人誌 | 図書館 | コミケ


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/18/news202.jpg 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
  2. /nl/articles/2412/20/news023.jpg 60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
  3. /nl/articles/2403/21/news088.jpg 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
  4. /nl/articles/2412/21/news038.jpg 皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
  5. /nl/articles/2412/21/news056.jpg 真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
  6. /nl/articles/2412/21/news088.jpg 71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
  7. /nl/articles/2412/20/news096.jpg 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  8. /nl/articles/2412/18/news015.jpg 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  9. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  10. /nl/articles/2412/17/news195.jpg 「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  3. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  5. 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  6. 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  7. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  8. ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
  9. 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
  10. セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」