一体なぜこんなルートになったんだ!? 60年前に開通、不思議で謎だらけの愛され険道「山口県道270号」を愛でる(1/6 ページ)

あまりに華麗なスルーっぷり。でも、すごく「愛され」ているんです。

» 2022年10月28日 12時00分 公開
[少年Bねとらぼ]

 「酷道(こくどう)」をご存じでしょうか。道幅が狭かったり、路面が舗装されていなかったり、そもそも通行止めだったり……。一般的な国道(国が政令で指定した主要道路)というイメージからはかけ離れた国道のことを愛情と敬意を込めて示す言葉です。それと同様に、そんな状態の県道(都道府県が管理する道路)にも愛称があります。「険道(けんどう)」と呼ばれます。

鉄道の駅と最寄りの県道・国道を結ぶ停車場線ですが……? 鉄道の駅と最寄りの県道・国道を結ぶ停車場線、なのですが実は……? 今回は山口県の「山口県道270号」を愛でます

 これまで険道ファンの筆者は「地図に載っていない県道」「普通車が通るのさえ困難な幅1.7メートル制限の県道」「平均勾配13.4%、鳥居のある激坂県道」などの険道を紹介してきましたが、愛すべき険道はまだまだたくさんあります。

 今回はとっても不思議な、でもとても愛されている山口の県道「山口県道270号田耕湯玉停車場線(以下、県道270号)」を愛でていきます。

鉄道の駅と最寄りの県道・国道を結ぶ停車場線ですが……? この先の交差点が県道270号のスタートです この写真のなかに変わったところがひとつあります 安楽寺というお寺を通過 道路趣味者が「ヘキサ」と呼ぶ標識 ガードレールの色に注目 一見ただの快走路ですが......? これは改良の跡では? うねって道路を横断している センターラインも見える ひたすら真っすぐ進みます。行先は二見 上太田橋で再び太田川を渡る 本文とは関係ないですが、おそろいだなと思いました 山道になりそうな予感がします 緑に夏みかん色のガードレールが映えます ガードレールの色で道が分かる 貴重な? ガードレールの色が変わる瞬間 ガードパイプも夏みかん色 うねうねとしたカーブが続く坂道 下った先ではまた急カーブが連続する上り坂。見た瞬間、「まさか......」と声が出ました 右手に山、左手には水田が見える。のどかだ…… 二見方面への直進が県道 工事が行われていました 迂回路が作られていました 本当は正しいルートで県道270号をたどりたかったが、残念 迂回路は1車線と思いきや......? すぐに2車線に。これは新道? 振り返ると、川の対岸にヘキサが ここまでずっと2車線だったのに、突然の険しさ 県道は左の橋 橋を渡ると急に1車線に これが何を意味するのか、この時はまだ知りませんでした 「下関市」の部分だけが新しい 険道と夏みかん色のガードレール 電信柱が木! 道路に砂利が混じる。右手には畑が 山肌に何か書いてあります 「公社造林 道狭事業地」 崖側にガードレールがない 唐突に行き止まりに 通行止めの反対側にやってきました 県道要素はガードレールのみ 県道270号から見える景色 県道との合流地点とは思えない交差点 国道側から見た県道270号 国道との合流地点には、県道270号であることを示す標識が 国道を示す「おにぎり」はあります 何の変哲もない交差点ですが……? 国道191号から数十m先に山陰本線の宇賀本郷駅がある 宇賀本郷駅の駅舎 宇賀本郷駅の様子 宇賀本郷駅は湯玉駅の隣駅 県道260号との分岐点 右側の脇道が県道270号 踏切があります 隣には山陰本線。その向こうに国道191号の標識が見える ちょうど隣を山陰本線の観光列車「○○のはなし」が通過しました この坂を登ればもうすぐです 坂のてっぺん付近はこのような感じ 下っていくと住宅街に ちょうど30km/h制限が終了する地点 左に進路を変えて駅に向かいます 湯玉駅には薬局が併設されている 湯玉駅のホーム 湯玉駅の待合室 下関方面ホームへと繋がる地下通路には、列車の案内が 国道191号からアクセスできる、小串・下関方面の駅舎 ちょうど単行のディーゼルカーが来ました
 (写真は全て助手席から、あるいはクルマを降りた上で、望遠レンズを使うなどして安全を確かめた状態で撮影を行っています)

ちょっと不思議なルートをたどる謎険道「山口県道270号」 山口名物「オレンジ色のガードレール」を愛でながら確かめる

 県道270号の正式名称は「山口県道270号田耕湯玉停車場線」です。停車場線とは「鉄道の駅へ向かう道」であることを示します。県道270号以外にも各都道府県に多くの停車場線と付く県道が存在します。

 しかし、県道270号はその中でも少し変わった停車場線なのです。

 県道270号は、下関市豊北町の田耕から下関市豊浦町の宇賀(うか)へ至ります。ルートの先に確かにJR山陰本線の「宇賀本郷駅」があります。地図を見ても、まさに宇賀本郷駅へ向かっているようなルートです。しかしそこが終点ではありません。華麗にスルーします(!)。山口県道270号は、宇賀本郷駅付近で国道と重用する区間(実質は国道191号線)に入り、もうひと駅先へ進んだJR山陰本線の湯玉駅が終点になります。

 同じJR山陰本線で先に着く宇賀本郷駅が終点でいいのでは……と思ってしまいます。「田耕宇賀本郷停車場線」にならなかったのはなぜなのでしょう。

 資料を見ているだけでは分からない不思議、謎がある山口県道270号、一体どんな道なのでしょうか。

この先の交差点が県道270号のスタートです この先の交差点が県道270号のスタートです

 県道270号の起点は、山口県下関市豊北町大字田耕にある無名の交差点。国道435号から分岐します。標識には「宇賀」方面とあります。

この写真のなかに変わったところがひとつあります この写真に変わったところが1つあります。それは……?

 いきなり気になるところがありませんか? そう、ガードレールがオレンジ色です。普通は白、でも山口県ではオレンジ色が一般的なのだそうです。県外ではなかなか見ない色なのでびっくりですよね。

 調べたところ、1963年の山口国体をきっかけに、当時の知事が「ガードレールを萩市の特産品で県花でもある“夏みかんの色”に変えよう」と発案し、定着したのだそうです。山口県では県道と県が管理する国道に約1200キロのガードレールが設置されているそうですが(2014年時点)、その大部分はオレンジ色だとのことです。

 余談ですが、そんな夏みかんが特産品の萩市では、1993年に当時の市長が「黄色系は注意を喚起する色。町並みにふさわしくない」として、ガードレールを「ダークブラウン」にしてしまったのだそうです。なぜブラウン……? 今回は字数の都合で深追いしませんが、ガードレールの色1つ取っても面白そうなエピソードがありました。

 県道に入るとすぐ、安楽寺前に県道を示す標識、通称「ヘキサ」もきちんと立っていました。

安楽寺というお寺を通過 安楽寺と県道標識「ヘキサ」
道路趣味者が「ヘキサ」と呼ぶ標識 ちょっと朽ちていたが、ヘキサで紛れもなく「県道270号」を示していた

 しばらく進んでいくと、太田川を橋で越えます。太田川は途中まで県道270号と並行して流れる河川です。この後も何度も交差しながら進みます。

 おや、再びガードレールの色に注目です。直進する県道のガードレールはオレンジ色ですが、左に分かれる道は一般的な白色です。

ガードレールの色に注目 ガードレールの色に注目。県道270号はオレンジ色、別の道は白です

 これは道路の管理者が違うためです。前述した通り、オレンジ色のガードレールは県が管理する県道および一部の国道で使われます。一方の白ガードレールの道は管理者が別であることが分かります。道路趣味者からすると、たどるルートがひと目で分かるので便利です(笑)。

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