旅行先で写真を撮るとき、つい、その場所らしいポーズをとってしまう。大阪・道頓堀なら、両手を上げて片足を浮かせる。グリコの看板に描かれた、あのランナーのポーズだ。

「自分も、現地でまねしたよ」という人も少なくないはず。ただ、おなじみの看板が、これまでどんな姿に変わってきたのかまで知っている人は、そう多くないかもしれない。
実はあの看板、昔はワニの人形がピアノを弾くステージがあり、噴水が付いていた時代もある。お菓子の会社の看板に、なぜ、そこまで凝った仕掛けを取り入れたのだろうか。
走り続けるランナーにも、設備の更新は必要
江崎グリコは、現在の6代目「道頓堀グリコサイン」を2027年春に7代目へ切り替える予定だ。6代目の姿を見られるのは、2026年11月末までとなる。
今の看板が登場したのは2014年。約14万個のLEDを使っている。LEDは長持ちするイメージがあるが、約12年で交代するのはなぜだろう。

同社の担当者によると、一般的にLED看板の耐用年数は10年程度とされている。加えて、使っている部品が年々手に入りにくくなっているそうだ。
部品を交換しながら使い続ける方法もあるが、今後も安全で安定した運用を続けるため、新しいLED技術を取り入れて更新するという。ランナーは元気そうでも、それを支える設備には、そろそろ手を入れる時期だったわけだ。
では、これまでの看板はどうだったのか。歴代の姿をたどると、今とはずいぶん違う工夫が見えてくる。
お菓子の広告に、12トンの水
例えば、2代目には特設ステージがあった。ワニの人形が自動ピアノを演奏するほか、人形劇やロカビリー大会も開いていたそうだ。看板を見上げるだけでなく、その場で催し物まで楽しめたのである。

続く3代目には、噴水が付いた。使う水は12トン。150本のノズルから噴き出す様子を、12色・計400個のランプで照らしていた。落ちた水はポンプで上のタンクに戻し、循環させていたという。看板というより、ちょっとしたショーのようだ。
社名を覚えてもらうだけなら、もう少し簡単な方法もありそうだが……。同社は、看板をお客さんとの「大切な接点」と考えてきたという。
「見て楽しんでいただき、親しみや愛着を感じてもらえる存在を目指して、時代ごとにさまざまな工夫を取り入れてきました」

3代目に噴水を付けたのは、単に看板を目立たせるためではなかった。近くにある戎橋周辺の景色を、より美しくする狙いもあったという。ワニの演奏や噴水には、広告としての役割だけでなく、街を訪れた人たちを楽しませる役割もあったのだ。

