第18回:「待って、もう1回!!」――いつの間にかゲームがやめられなくなるフシギな呪文PART2:なぜ、人はゲームにハマルのか?(3/3 ページ)
驚愕のアイデア! 無敵パワーを利用して局面打開のチャンスを提供
ビデオゲームならではのリスタート方法として忘れてはいけないのが、再開直後の一定時間だけ主人公がどんな敵に触れても死なない状態になる「無敵システム」のアイデアです。まさにバーチャルの世界でなければ実現できない、常識を超越した驚愕のアイデアと言えるでしょう。毎度のセリフになり恐縮ですが、最初にこの方法を考案した人は本当に天才だと筆者は思います。
この「無敵時間システム」の歴史は調べてみると意外に古く、任天堂が1983年に発売した「マリオブラザーズ」で早くも採用されていることが分かります。本作では、ミスをした直後に上空からリフトに乗って新しいマリオまたはルイージが登場するようになっていますが、実はリフトに乗っている間は無敵状態で、敵やファイアボールに触れてもミスにはなりません。ただし、リフトは一定時間が経過すると消滅し、同時にマリオの無敵状態も解除されます。
同様に、カプコンが1984年に発売したアクションゲームの「ソンソン」では、主人公がやられた後のリスタート時には雲に乗った状態で復活しますが、この雲に乗っている間はやはり無敵状態になっています。しかも雲に乗ったまま敵を攻撃することもできるので、多くの敵に囲まれた状態でも局面を打開しやすくなるように配慮されているのです。もちろん、いつまでも無敵のままではゲームになりませんので一定時間が経過すると雲は自動的に消えます。
これらのゲームにおいて、もしリスタート時に無敵時間の設定がなかったらどうなるでしょうか? 復活した主人公の出現位置に運悪く敵のキャラクターがいた場合は連続ミスとなり、プレイヤーはショック(と、いうよりは怒りが爆発しますよね……)のあまり二度とゲームを遊ばないようになってしまうかもしれません。リスタート時の「無敵システム」は、そんなストレスをプレイヤーが受けないために編み出された素晴らしいサービスなのです。
実は先ほどご紹介した、シューティングゲームにおけるその場復活型を採用したタイトルは、いずれも「無敵時間システム」を採用しています。これによって、プレイヤー側はミスをして不利になった局面でも無敵時間を利用して態勢を立て直すチャンスが得られ、ゲームのモチベーションを維持するためにも大いに役立つのです。
さらに詳しく調べてみると、「エグゼドエグゼス」では無敵状態になっている間は自機が半透明になるのと同時に特殊な効果音が鳴り続け、プレイヤーに無敵時間が継続していることを音でも教えてくれるようになっていることが分かります。これによって、次から次へと出現する敵の動きや敵弾を目で追いかけつつ、同時に耳でも無敵状態を確認できるというわけですね!
もう1つ、面白いリスタート時の「無敵時間システム」をご紹介しましょう。カプコンが1989年に発売したアクションゲームの「ファイナルファイト」では、同時にたくさんの敵が襲い掛かってくる場面がしばしば登場します。もしリスタート時の無敵時間がなかったら、復活時にすぐさま敵たちに囲まれてタコ殴り状態にされてしまい、あっという間に連続ミスになってしまうことでしょう。
そこで本作では、リスタート時に主人公を一定時間だけ無敵状態にするとともに、すべての敵を強制的にダウン状態にさせて、なおかつボス敵には一定のダメージを与えるようにすることでプレイヤーに態勢を立て直すチャンスを提供しているのです。このアイデアは本作以降に発売されたカプコンの同系統の作品、いわゆるベルトアクションゲームである「天地を喰らうII」や「D&D」「エイリアンVSプレデター」などのタイトルにも継承されています。これらの多くの作品に使用されたということは、「無敵時間システム」がそれだけ優れたアイデアだったという何よりの証でしょう。
と、いうことでリスタートについてフォーカスした第18回目の当コラムはいかがでしたか? 普段遊んでいるアクションゲームにおいて何気なく登場する「中間ポイント」や「無敵時間システム」が、どれほど我々の役に立つ便利なアイデアなのかがきっとお分かりいただけたことでしょう。
きちんと統計をとったわけではありませんが、時代が進むにつれてアクション・シューティングゲームのリスタート方法は、特定の場所に戻される方式と「その場復活システム」とでは後者のほうが多数派になっていったような印象を筆者は持っています。その最大の理由はやはり、「戻される」ことによるプレイヤーへのストレスを極力与えないことにあるでしょう。なおかつ、すぐにリスタートすることでゲームのテンポを損ねないようにするとともに、マップ画面を切り替える時間を省くことでプレイ時間を短縮化(※特にアーケードゲームでは重要!)する意図があったものと思われます。
私事で恐縮ですが、筆者は中学生の頃にゲームセンターで遊んだ某シューティングゲームをその日に初めてプレイして以降、今日にいたるまで一度も遊んでいません。その理由は1面から比較的難易度が高め(という印象)で、しかも復活時の無敵時間が極端に短いこともあって連続でミスをしたため、あっという間にゲームオーバーになったからでした。また別の日に遊びに行ったときもそのゲームはお店に置いてありましたが、初プレイ時のトラウマのせいで再びチャレンジしようという気にはちっともなれませんでした。
当時はまるで100円を損したような気分になってかなりガッカリしましたが、今となっては「無敵時間システム」のさじ加減ひとつでゲームに対する印象がガラリと変わってしまうという教訓を得るための授業料だった、と納得することに(?)にしております。
それでは、今回のお話はここまで。また次回お会いしましょう!
今回登場したソフトはココで遊べます!
- 「ドンキーコング」:Wiiバーチャルコンソール
- 「ロードランナー」:Wiiバーチャルコンソール
- 「スーパーマリオブラザーズ」:Wiiバーチャルコンソール、ニンテンドー3DSバーチャルコンソール
- 「高橋名人の冒険島」:Wiiバーチャルコンソール
- 「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」:Wiiバーチャルコンソール
- 「スペースインベーダー」:Wiiバーチャルコンソール、PS2用ソフト「タイトーメモリーズ下巻」
- 「ギャラクシアン」:Wiiバーチャルコンソール、PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.3」
- 「ギャラガ」:Wiiバーチャルコンソール、PS3用ソフト「ナムコミュージアム.comm」、PSP用ソフト「ナムコミュージアム」、PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.1」
- 「ギャプラス」:Wiiバーチャルコンソール、PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.3」
- 「グラディウス」:PSP用ソフト「グラディウス ポータブル」、Wiiバーチャルコンソール(※ファミコン版)ほか
- 「R-TYPE」:Wiiバーチャルコンソール(PCエンジン版の「R-TYPE I」および「R-TYPE II」)
- 「1942」:Wiiバーチャルコンソール、PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
- 「ツインビー」:Wiiバーチャルコンソール(ファミコン版)、PSP用ソフト「ツインビー PORTABLE」
- 「エグゼドエグゼス」:Wiiバーチャルコンソール、PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
- 「首領蜂」:PS用ソフト「首領蜂」ほか
- 「ゼビウス」:Wiiバーチャルコンソール、PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
- 「マリオブラザーズ」:Wiiバーチャルコンソール
- 「ソンソン」:Wiiバーチャルコンソール、PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
- 「ファイナルファイト」:PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」、Wiiバーチャルコンソール(※スーパーファミコン版)
著者プロフィール
鴫原 盛之 Morihiro Shigihara
1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やwebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)の他、共著によるゲーム攻略本・関連書籍を多数執筆。近刊は共著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」(ソフトバンククリエイティブ)がある。
Twitterは「@m_shigihara」です。
著者近況
来る4月21日(土)、私が企画させていただきました「日本デジタルゲーム学会第三回ゲームメディア研究会」を東京・一ツ橋の国立情報学研究所にて開催することになりました。当日はゲストに元「Beep」編集長の川口洋司氏、元「ログイン」編集長の高橋義信氏、および元「テクノポリス」「サターンFAN」などの編集長で現エンターブレインの相沢浩仁氏をお招きし、ゲームメディアはいかにして作られたのかなどを語っていただきます。
ご興味のある方はサイトをご参考のうえ、ぜひご参加下さい。なお、事前に登録手続きをしていた方でないと当日はご入場できませんのでご注意下さい。
関連記事
- なぜ、人はゲームにハマルのか?:第17回:これ以上ないプレイヤーへのご褒美!? 極上の快感を与えてくれるエクステンドの演出
そもそもエクステンドってなんですか? 「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の17回目は、なんだかお得ですって話。 - なぜ、人はゲームにハマルのか?:第16回:ゲームは見た目がすべて!? ひと目でプレイヤーを虜にするデモ画面の工夫
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の16回目は、演出面に注目。いわゆるコーヒーブレーク、最近見なくなりました? - なぜ、人はゲームにハマルのか?:第15回:「待って、もう1回!!」 いつの間にかゲームがやめられなくなるフシギな呪文、「コンティニュー」のスッゴイ仕掛け
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の15回目は、奥が深いコンティニューの話。続きがあるから人は大胆になるのかもしれませんよ? - なぜ、人はゲームにハマルのか?:第14回:これならサルでも遊べちゃう!? いつの間にかゲームがうまくなってしまうヒミツの仕掛け
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の14回目は、ゲームの腕がめきめきあがる仕組みを解明します。 - なぜ、人はゲームにハマルのか?:第13回:「隠れキャラ」に隠された、プレイヤーをゲームのとりこにするヒミツ(つづき)
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の13回目は、隠れキャラの魅力についての続きです。 - なぜ、人はゲームにハマルのか?:第12回:「隠れキャラ」に隠された、プレイヤーをゲームのとりこにするヒミツ
「なぜ、人はゲームにハマルのか?」をまじめに考察する不定期企画の12回目は、隠れキャラの魅力について。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
-
自宅のウッドデッキに住み着いた野良の子猫→小屋&トイレをプレゼントしたら…… ほほ笑ましい光景に「やさしい世界」「泣きそう」の声
-
「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
-
「ヤバすぎwwww」 ハードオフに1万8700円で売っていた“衝撃の商品”が690万表示 「とんでもねぇもん見つけた」
-
330円で買ったジャンクのファミコンをよく見ると……!? まさかのレアものにゲームファン興奮「押すと戻らないやつだ」
-
ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
-
大量のハギレを正方形にカット→つなげていくと…… “ちょっとした工夫”で便利アイテムに大変身! 「どんな小さな布も生き返る」
-
58歳でトレーニングを始めたおばあちゃん→10年後…… まさかまさかの現在に「オーマイガー!!!」「これはAIですか?」【海外】
-
母犬に捨てられ山から転げ落ちてきた野良子犬、驚異の成長をみせ話題に 保護から6年後の“現在”は……飼い主に話を聞いた
-
「水曜どうでしょう」“伝説のシーン”そっくりな光景にネット騒然 「ダメだ笑っちゃう」「なまら怖い」
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」
- イモト、突然「今日まさかの納車です」と“圧倒的人気車”を購入 こだわりのオプションも披露し光岡自動車からの乗り換えを明かす
- 「この動画お蔵かも」 親子デートの辻希美、“食事中のマナー”に集中砲火で猛省……16歳長女が説教「自分がやられたらどう思うか」
- 老けて見える25歳男性を評判の理容師がカットしたら…… 別人級の変身と若返りが3700万再生「ベストオブベストの変貌」「めちゃハンサム」【米】
- 「ガチでレア品」 祖父が所持するSuica、ペンギンの向きをよく見ると……? 懐かしくて貴重な1枚に「すげえええ」「鉄道好きなら超欲しい」と興奮の声
- 「デコピンの写真ください」→ドジャースが無言の“神対応” 「真美子さんに抱っこされてる」「かわいすぎ」
- 「天才」 グレーとホワイトの毛糸をひたすら編んでいくと…… でっかいあのキャラクター完成に「すごい」「編み図をシェアして」【海外】
- 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
- 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
- フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
- 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
- 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
- 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた