第18回:「待って、もう1回!!」――いつの間にかゲームがやめられなくなるフシギな呪文PART2なぜ、人はゲームにハマルのか?(3/3 ページ)

» 2012年04月09日 09時01分 公開
[鴫原盛之,ITmedia]
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驚愕のアイデア! 無敵パワーを利用して局面打開のチャンスを提供

 ビデオゲームならではのリスタート方法として忘れてはいけないのが、再開直後の一定時間だけ主人公がどんな敵に触れても死なない状態になる「無敵システム」のアイデアです。まさにバーチャルの世界でなければ実現できない、常識を超越した驚愕のアイデアと言えるでしょう。毎度のセリフになり恐縮ですが、最初にこの方法を考案した人は本当に天才だと筆者は思います。

 この「無敵時間システム」の歴史は調べてみると意外に古く、任天堂が1983年に発売した「マリオブラザーズ」で早くも採用されていることが分かります。本作では、ミスをした直後に上空からリフトに乗って新しいマリオまたはルイージが登場するようになっていますが、実はリフトに乗っている間は無敵状態で、敵やファイアボールに触れてもミスにはなりません。ただし、リフトは一定時間が経過すると消滅し、同時にマリオの無敵状態も解除されます。

 同様に、カプコンが1984年に発売したアクションゲームの「ソンソン」では、主人公がやられた後のリスタート時には雲に乗った状態で復活しますが、この雲に乗っている間はやはり無敵状態になっています。しかも雲に乗ったまま敵を攻撃することもできるので、多くの敵に囲まれた状態でも局面を打開しやすくなるように配慮されているのです。もちろん、いつまでも無敵のままではゲームになりませんので一定時間が経過すると雲は自動的に消えます。

 これらのゲームにおいて、もしリスタート時に無敵時間の設定がなかったらどうなるでしょうか? 復活した主人公の出現位置に運悪く敵のキャラクターがいた場合は連続ミスとなり、プレイヤーはショック(と、いうよりは怒りが爆発しますよね……)のあまり二度とゲームを遊ばないようになってしまうかもしれません。リスタート時の「無敵システム」は、そんなストレスをプレイヤーが受けないために編み出された素晴らしいサービスなのです。

「マリオブラザーズ」
※ファミリーコンピュータ版を使用。
(C)1983 Nintendo

「ソンソン」
※Wiiバーチャルコンソール版を使用。
CAPCOM CO., LTD. 1984, 2010 ALL RIGHTS RESERVED.

 実は先ほどご紹介した、シューティングゲームにおけるその場復活型を採用したタイトルは、いずれも「無敵時間システム」を採用しています。これによって、プレイヤー側はミスをして不利になった局面でも無敵時間を利用して態勢を立て直すチャンスが得られ、ゲームのモチベーションを維持するためにも大いに役立つのです。

 さらに詳しく調べてみると、「エグゼドエグゼス」では無敵状態になっている間は自機が半透明になるのと同時に特殊な効果音が鳴り続け、プレイヤーに無敵時間が継続していることを音でも教えてくれるようになっていることが分かります。これによって、次から次へと出現する敵の動きや敵弾を目で追いかけつつ、同時に耳でも無敵状態を確認できるというわけですね!

 もう1つ、面白いリスタート時の「無敵時間システム」をご紹介しましょう。カプコンが1989年に発売したアクションゲームの「ファイナルファイト」では、同時にたくさんの敵が襲い掛かってくる場面がしばしば登場します。もしリスタート時の無敵時間がなかったら、復活時にすぐさま敵たちに囲まれてタコ殴り状態にされてしまい、あっという間に連続ミスになってしまうことでしょう。

 そこで本作では、リスタート時に主人公を一定時間だけ無敵状態にするとともに、すべての敵を強制的にダウン状態にさせて、なおかつボス敵には一定のダメージを与えるようにすることでプレイヤーに態勢を立て直すチャンスを提供しているのです。このアイデアは本作以降に発売されたカプコンの同系統の作品、いわゆるベルトアクションゲームである「天地を喰らうII」や「D&D」「エイリアンVSプレデター」などのタイトルにも継承されています。これらの多くの作品に使用されたということは、「無敵時間システム」がそれだけ優れたアイデアだったという何よりの証でしょう。

「ファイナルファイト」
※PS2版「カプコン クラシックス コレクション」を使用。
(C)CAOCOM CO., LTD. 2005,2006,
(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2005,2006 ALL RIGHTS RESERVED.

 と、いうことでリスタートについてフォーカスした第18回目の当コラムはいかがでしたか? 普段遊んでいるアクションゲームにおいて何気なく登場する「中間ポイント」や「無敵時間システム」が、どれほど我々の役に立つ便利なアイデアなのかがきっとお分かりいただけたことでしょう。

 きちんと統計をとったわけではありませんが、時代が進むにつれてアクション・シューティングゲームのリスタート方法は、特定の場所に戻される方式と「その場復活システム」とでは後者のほうが多数派になっていったような印象を筆者は持っています。その最大の理由はやはり、「戻される」ことによるプレイヤーへのストレスを極力与えないことにあるでしょう。なおかつ、すぐにリスタートすることでゲームのテンポを損ねないようにするとともに、マップ画面を切り替える時間を省くことでプレイ時間を短縮化(※特にアーケードゲームでは重要!)する意図があったものと思われます。

 私事で恐縮ですが、筆者は中学生の頃にゲームセンターで遊んだ某シューティングゲームをその日に初めてプレイして以降、今日にいたるまで一度も遊んでいません。その理由は1面から比較的難易度が高め(という印象)で、しかも復活時の無敵時間が極端に短いこともあって連続でミスをしたため、あっという間にゲームオーバーになったからでした。また別の日に遊びに行ったときもそのゲームはお店に置いてありましたが、初プレイ時のトラウマのせいで再びチャレンジしようという気にはちっともなれませんでした。

 当時はまるで100円を損したような気分になってかなりガッカリしましたが、今となっては「無敵時間システム」のさじ加減ひとつでゲームに対する印象がガラリと変わってしまうという教訓を得るための授業料だった、と納得することに(?)にしております。

 それでは、今回のお話はここまで。また次回お会いしましょう!

今回登場したソフトはココで遊べます!

  • 「ドンキーコング」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「ロードランナー」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「スーパーマリオブラザーズ」:Wiiバーチャルコンソール、ニンテンドー3DSバーチャルコンソール
  • 「高橋名人の冒険島」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「スペースインベーダー」:Wiiバーチャルコンソール、PS2用ソフト「タイトーメモリーズ下巻」
  • 「ギャラクシアン」:Wiiバーチャルコンソール、PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.3」
  • 「ギャラガ」:Wiiバーチャルコンソール、PS3用ソフト「ナムコミュージアム.comm」、PSP用ソフト「ナムコミュージアム」、PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.1」
  • 「ギャプラス」:Wiiバーチャルコンソール、PS用ソフト「ナムコミュージアムVOL.3」
  • 「グラディウス」:PSP用ソフト「グラディウス ポータブル」、Wiiバーチャルコンソール(※ファミコン版)ほか
  • 「R-TYPE」:Wiiバーチャルコンソール(PCエンジン版の「R-TYPE I」および「R-TYPE II」)
  • 「1942」:Wiiバーチャルコンソール、PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
  • 「ツインビー」:Wiiバーチャルコンソール(ファミコン版)、PSP用ソフト「ツインビー PORTABLE」
  • 「エグゼドエグゼス」:Wiiバーチャルコンソール、PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
  • 「首領蜂」:PS用ソフト「首領蜂」ほか
  • 「ゼビウス」:Wiiバーチャルコンソール、PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
  • 「マリオブラザーズ」:Wiiバーチャルコンソール
  • 「ソンソン」:Wiiバーチャルコンソール、PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」
  • 「ファイナルファイト」:PS2用ソフト「カプコン クラシックス コレクション」、Wiiバーチャルコンソール(※スーパーファミコン版)

著者プロフィール

鴫原 盛之 Morihiro Shigihara

 1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やwebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)の他、共著によるゲーム攻略本・関連書籍を多数執筆。近刊は共著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」(ソフトバンククリエイティブ)がある。

Twitterは「@m_shigihara」です。

著者近況

 来る4月21日(土)、私が企画させていただきました「日本デジタルゲーム学会第三回ゲームメディア研究会」を東京・一ツ橋の国立情報学研究所にて開催することになりました。当日はゲストに元「Beep」編集長の川口洋司氏、元「ログイン」編集長の高橋義信氏、および元「テクノポリス」「サターンFAN」などの編集長で現エンターブレインの相沢浩仁氏をお招きし、ゲームメディアはいかにして作られたのかなどを語っていただきます。

 ご興味のある方はサイトをご参考のうえ、ぜひご参加下さい。なお、事前に登録手続きをしていた方でないと当日はご入場できませんのでご注意下さい。


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