空気を汚さず乾燥もしにくい、デロンギのオイルヒーターは温める概念が違う:売れるのには理由がある(2/2 ページ)
日本向け製品「ドラゴンデジタル」
―― 新製品開発は、やはりイタリア・デロンギ社が主導するのだと思うのですが、日本法人デロンギ・ジャパンの関わり方はどういったものなのでしょうか?
田井氏 製品によって変わりますが、2011年発売の「ドラゴンデジタル」、2012年発売の「ドラゴンデジタルスマート」は、開発初期の製品企画段階から関わっています。
実は「ドラゴンデジタル」と「ドラゴンデジタルスマート」は、まだ世界で日本しか販売されておらず、今後、海外で販売するかどうかも決まっていない、完全なる日本向けモデルなんです。
田井氏 我々はサービスセンターでお客様のご意見、ご要望を集約したものを分析しています。そこで今回は、かねてから日本市場で要望があった、細やかな温度設定、細やかな時間設定が可能という仕様から、収納の際に手掛かりになる取っ手、車輪の床を傷つけない硬質ゴムの採用、社名ロゴの配置にいたるまでこだわって機能性、デザイン性を追求しました。
中でも温度調整に関しては、苦労して実現しました。オイルヒーターはほかの温風で暖める暖房器具とは違って、輻射熱で部屋が暖まってから部屋の空気が暖まりますから、「強さ」ではなく「温度」で設定するというのは本来、困難なのです。しかし、長年、オイルヒーターの開発を続けてきた当社としては、今までの経験、データを生かして実現にいたりました。
日本市場におけるオイルヒーターは、デロンギ・グループ全体から見ても大きな割合を占めています。そのため、イタリア・デロンギ社としても、より日本のお客様の要望に応えなければならないという意識があったことが、今回の「ドラゴンデジタル」開発に繋ったのです。
―― 製品開発されていて、海外と日本の違いをいちばん感じるのは、やはりそういった「細かさ」の部分なのでしょうか?
田井氏 海外では、性能さえ確かであれば、輸送時の外箱のへこみや、製品外観の細かな傷、拭き取れば消えてしまう汚れなどは許されるところがあります。しかし、日本ではそういった点まで、きめ細やかな対応が要求されるところが、違いといえば違いだといえるでしょう。
あとは、色に関する印象の違いというものもあります。よく日本人と欧米人では、色の見え方が違うといいます。デザイナーの国籍、育った環境によって、カラーリングの傾向が違うのは、そういったところも原因になっていると思います。
「とにかく買ってください!」ではない
―― オイルヒーターは電気代がかかるという印象があるのですが、その点はいかがでしょうか?
田井氏 9フィンモデルの「ドラゴンデジタル」(TDD0915W)は、消費電力1500Wです。これだけ聞いてしまうとそういう印象になるのかもしれません。でも、エアコンやファンヒーター、電気ストーブなどとそもそもの温度の捉え方が違うんですね。
通常の暖房は、部屋に入って電源を入れると温風が吹き出すという、空気を暖める空気暖房のイメージだと思います。しかし、オイルヒーターは身体に優しい穏やかな暖かさが持ち味ですので、暖まるまでに時間がかかります。そのため、例えば寝室に入る1時間前に電源を入れておくといったことで、快適に使用することができます。
また、暖まるまでに時間がかかるかわりに、冷めるのにも時間がかかります。つまり、電源を切ってもしばらくは余熱で暖かいのです。ですから、外出する1時間前ぐらいに電源を切っても、朝目覚める1間前に電源が切れる設定にしておいても、そのまま暖かく過ごせるのです。加湿器の必要がないので、そのぶんの電気代もかからないというメリットもあります。
それから、窓やドアの近くで壁を作るようにオイルヒーターを配置するだけでも、暖まり方や電気代が変わってきますし、自動で最適な電力レベルに調整して控えめな運転を行う、ECO運転モードを搭載した機種もあります。
―― なるほど、使い方が根本的にほかの暖房器具と違う、というのが知られていないというのも一因というわけですね
田井氏 そうなのです。我々は今までも「とにかく買ってください!」というのではなく、「身体に優しい暖房器具であり、暖まるまで少し時間がかかるという性質もあります」と製品のメリットもデメリットも理解してから買っていただけるようにと、心がけてきました。
しかし、なかなかその点を周知しきれていなかったのではないか、という反省があります。そこで、公式ホームページ「デロンギ・オイルヒーター 家族deほんわか暖房。」や「公式facebookページで、デロンギのオイルヒーターを使ったことがない人にも、分かりやすく説明するコンテンツを増やしているところです。
―― 表面の温度が低く安全というのは分かりましたが、ほかにも安全面で配慮している部分はありますか?
田井氏 電源プラグには、ガタついたコンセントでもトラッキング事故にならないようにサーモスタットが内蔵されています。これは、約80度以上の異常加熱で電源を切るというものです。また、地震などで転倒した際にも、本体のセンサーが一定の傾きを検知して電源が切れます。
工場では製造から組立まで作業を一貫して行い、出荷前には一台一台手作業で品質確認しています。また、他社でも耐久テストは行っていると思うのですが、弊社では、10年間同じ部屋でオイルヒーターを連続運転させるテストを行ったこともあります。これは環境負荷などによって10年間を再現したというテストではなく、文字通り実時間で10年間におよぶ連続運転テストをしたものです。日本の季節を考えると、30年間使ったというイメージになります。また、フィンに通常の10倍の圧力をかけるテストもしています。
―― デロンギのオイルヒーターが、ユーザーに選ばれる理由をどう分析していますか? 安全に徹底的にこだわっているのは分かりましたが、ほかのメーカーも決して危険な製品を販売しているということはないと思うのですが。
田井氏 以前はオイルヒーターを製造していても、現在は撤退してしまったメーカーもあります。そういったメーカーではおそらく、オイルヒーターはたくさんある製品の中の1つに過ぎなかったのだと思います。デロンギも全自動エスプレッソマシンや電気ケトル、トースターなどを製造しています。しかし、暖房器具としてはあくまでもオイルヒーターが製品の根幹ですから、社としての力の入れ具合、本気さがまったく違います。それだけこだわって開発、製造しているのが、お客様にも分かっていただけているのではないかと思っています。
―― デロンギのオイルヒーターがオイルヒーターならではの、ユニークな場所でも使われているそうですが……。
田井氏 環境におよぼす影響が少ないという特長があるため、乳幼児のために産婦人科で使われていると先ほどお話ししましたが、同じ理由で大英博物館でも使用されています。古い美術品などは、乾燥、温風に敏感ですから、エアコンやファンヒーターを使うことができないのです。
―― 最後に、今後の製品開発にどのような指針でもってのぞまれるか教えてください。
田井氏 デロンギグループとしてのモットーは「Better Everyday」というものです。製品をお使いの皆さんに、より良い毎日をおくっていただきたいということなのですが、そのことを念頭に置きつつ、今後とも品質にこだわりながら、価格に見合ったデロンギのオイルヒーターならではの安全性や品質の追求をしていきたいと思っています。
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