日本に「モテ期」がやってきた? 「ジャパン・パッシング」でも留学生がやってくる理由:海外オタク見聞録
「ジャパン・パッシング」でも日本への留学生は増えています。ゲームやアニメが海外から学生を引きつけ、日本に「モテ期」をもたらしているようです。
近年経済産業省が「クールジャパン」で日本を世界にアピールする動きがあります。「クール」とはかっこいいとかイケてる、と言う意味ですが、それよりも「モテ期」という表現のほうが今の海外の日本ブームを素直に表しているのではないかと思います。
日本はバブル崩壊後20年ほど経済的に停滞し、「ジャパン・パッシング」と言われるほど国際的に存在感が薄くなってしまいましたが、逆にこの時期に日本への留学生は増加しています。独立行政法人・日本学生支援機構の調査によれば、1989年(平成元年)に3万1251人だった留学生総数は1999年には5万1047人、2011年には13万8075人へとこの約20年間で4倍以上に増えています(留学生数の推移より引用)。
Wiredというアメリカのニュースサイトでゲーム関連の記事を紹介しているクリス・コーラーさんも、日本のゲームが大好きで留学した一人です。留学した金沢大学の学食でカレーのとりこになり、その後東京ゲームショウ取材からの帰りの飛行機で書いた記事が話題となりました(参考:「日本のカレーライス」を熱愛する米国人記者が語る『ゴーゴーカレーNY店』)。
学生時代に日本のゲームに夢中になり、その後ゲームライターとして東京ゲームショウのたびに取材で来日しているクリスさん。彼の来日に合わせて「クリスさんとカレーを食べる会」も催されています。2011年の会では任天堂のバーチャルボーイのゲーム全種をコンプリートしたことが明らかにされ、「さすがゲームオタク」と参加者もそのマニアックさに驚いていました。
東京都内のある研究所は海外からのインターンも多く受け入れており、ある年MIT(マサチューセッツ工科大学)からインターンがやって来ました。MITはこれまでにノーベル賞受賞者を77人輩出している世界でもトップクラスの研究教育機関ですが、アメリカ国内で早い時期にアニメクラブが生まれたことでも知られています。インターンが研究所に提出するプロフィールには通常は研究分野などを列挙するのですが、こともあろうにMITからやってきたインターンのプロフィールの一番上には「アニメクラブ会長」と書かれており、プロフィールを見た人たちは「ああ、研究よりもアニメ見る方が優先順位が上なのね」と思ったそうです。
また、昨年の慶応義塾大学の稲見教授の取材において、研究室の3分の1を占める海外留学生の留学の動機において、電子部品とマンガやアニメの集積地である秋葉原が決め手となっているとうかがいました(関連記事:きっかけは「攻殻機動隊」 “透明プリウス”の稲見教授が語るアニメと科学の関係)。日本のマンガやアニメ、ゲームといったポップカルチャーのとりこになり、あこがれの日本へ留学する人たちが増えているのです。
筆者が出会う外国人はほぼ全員オタクですが、2012年の正月に秋葉原のGUNDAMカフェで出会ったアメリカ人女性との出会いもまた衝撃的でした。「けいおん!」の舞台・豊郷小学校でのキャラの誕生日会にムギちゃん(琴吹紬)のコスプレで参加した方で、コスプレ姿で豊郷小学校に現れたとき、あまりのそっくりな雰囲気に会場がどよめいたそうです。彼女はアメリカの大学の日本校で学んでいますが、大学ではあまりオタクな話ができないため、日本にやってきて日本人とヲタ話できたのは私が初めてだったそうで大変喜んでいました(関連記事:自宅警備隊も参上 コミックマーケット81フォトリポート「おまけ」欄)。
日本への海外留学生は、経済成長してきた中国や韓国からが多いのですが、それでもアニメコンテンツエクスポで出会ったスペインからの留学生や、ワンフェスで出会ったイタリアからの留学生など、さまざまな国から「日本に行くしかない」とやってきています(関連記事:嵐の中でも大盛況! アニメコンテンツエクスポ会場リポート/幕張メッセに「山の神」降臨!? 美女も宇宙人もワンフェスのコスプレをどーんとリポート)。
このような光景を目の当たりにすると「クールジャパン」と言うよりは「モテ」ていると言ったほうが適切なように思えてきます。
日本はこれまで仏教が伝わってきた隋、唐に始まり、近代化の先生となったイギリス、ドイツやフランス、そしてアメリカに恋焦がれてきました。しかしそれは一方的な片思いであって、なかなか相手から振り向いてもらえませんでした。それがここ20年ほどでこれらの国々の人たちから「モテ」ている状況は、それまでの長い片思いのためにわかに信じられない人も多いようです。
1980年代から世界に輸出されたアニメなどの文化が日本という国の存在感を、そして日本文化全般への入り口となって日本に「モテ期」をもたらしたのは間違いないのではないかと思います。
筆者紹介
松岡洋は日本のポップカルチャー情報を発信するONETOPI「日本のポップカルチャー」のキュレーター。海外で起きている日本ブームについて「なぜ日本に魅せられたのか」を調査し、ONETOPIで紹介している。
関連記事
海外オタク見聞録:2次元の“嫁”と世界を旅する――君は「プロジェクト・ホロ」を知っているか?
今年初め、「狼と香辛料」のホロの立て看板と旅をする海外のアニメファンが話題になった。そんなアツいオタクが東京にやってきたので話を聞いてきた。海外オタク見聞録:ドイツ語圏の人たちが日本のアニソンを流ちょうに歌うワケは?
YouTubeでドイツ語圏の人たちがアニソンやボカロ曲を日本語で流ちょうに歌っているのを見ますが、日本語とドイツ語は実は音が近いようです。海外オタク見聞録:イタリア人オタクのコスプレ好きは異常?
日本でコスプレしてる外国人の多くはイタリア人。彼らにとってコスプレの総本山である日本への“巡礼”は重要なようです。自宅警備隊にライバル現る! ニャル子さんもセガサターンも――コミックマーケット82コスプレリポート
3日間でのべ56万人が参加したコミックマーケット82。自宅警備隊のライバル「武装職安」が話題になったが、麗しいお嬢さんたち、メル先生やカーチャンなどいつもの(?)面々も一挙にどうぞ。パリでゾンビが増殖中!! 「アイアムアヒーロー」「テルマエ・ロマエ」に沸くJapan Expo
ヨーロッパ中からオタクが集まるJapan Expoは現地のマンガ出版社にとって格好のプロモーションの場。創意工夫にあふれた展示をご覧いただこう。ドイツや台湾にも隊員が:人気コスプレ集団「自宅警備隊」に密着! 「自宅に恒久の平和と秩序を」と鰐軍曹隊長
「自宅警備隊 N.E.E.T.」という名の特殊部隊にインタビューを敢行。海外も含め126人も隊員がいる彼らの実態とは――。ニコニコ超会議:枝野経産相、ドワンゴ川上会長らが“闘技場”に集結 「クール・ジャパン作戦会議」その全ぼう
枝野経産相などそうそうたる面々が集まった、ニコニコ超会議「ニコニコ言論コロシアム」の「クール・ジャパン作戦会議」は立ち見も出る大盛況だった。改めてその中身を振り返る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
昨日の総合アクセスTOP10
秋吉久美子、亡き息子の誕生日に思いをつづる 「二人は常に連なって一緒に生きている」
柴犬たちもソーシャルディスタンスばっちり……! 絶妙な距離感で並ぶ柴犬親子が面白かわいい
「3時のヒロイン」ゆめっち、メイクのビフォーアフターに驚きの声 「ライザップのCMくらいの衝撃」「違う人かと思った…!」
「カブトボーグ」がJ:COMの無料チャンネルでまさかの再放送! 「次回予告がウソ」「ヒロインが週替わり」数々の伝説残したカオスアニメ
元“小学生ホスト”琉ちゃろ、中学入学で10年ぶりの黒髪に 母ちいめろは校則に苦言も、本人は「そんなに違和感がなくてびっくり」
第2子妊娠の浜崎あゆみ、42歳バースデーで華やかな豪邸披露 「幸せの形は人それぞれ」と私生活に持論
仕事中でも注意散漫、集団行動ができない「発達障害」な漫画家の通院体験漫画『なおりはしないが、ましになる』
尿意を限界突破しながら我が子のピンチを救う漫画 お散歩アクシデントを跳ね飛ばす母の愛に感動&爆笑
在宅ワーク中、猫たちがPC前を占拠して…… 「残業は禁止ニャ!」と訴える元保護猫の姉妹がかわいい
桜玉吉『伊豆漫玉エレジー』が本日発売、還暦を迎えた玉吉先生と担当のプチ対談をお届け 「お元気ですか?」「元気じゃないよ(笑)」
先週の総合アクセスTOP10
- AKB48・大家志津香、人生MAXの65キロに危機感 周囲に迷惑が及ぶ激太りぶりで減量決意「やらなくていい仕事をさせちゃってる」
- 初コメダで「量すごいらしいからエビカツパンとビーフシチュー」 → 案の定大変なことになってしまった漫画が様式美
- 仲里依紗、息子がスカウトされて大騒ぎ「芸能人なんですけどもね?」 夫・中尾明慶と一緒にスルーされてしまう
- 「遺伝ってすごい」「足長っ!」 仲村トオルの“美人娘”ミオがデビュー、両親譲りのスタイルに驚きの声
- 山に捨てられていたワンコを保護→2年後…… “すっかり懐いたイッヌ”の表情に「爆笑した」「かっこよすぎ」の声
- 「文鳥砲だ!」「躍動感すご」 文鳥が“来るッ…!”決定的瞬間を収めた写真に緊張感が漂っている
- 昔から何度も見る悪夢です→「私も見る!」「同じ人がいた」と共感集まる “あるある”かもしれない奇妙な夢の漫画
- 「もういいだろう、楽にさせてくれよ」 アントニオ猪木、入院治療中の弱音に叱咤激励の嵐
- コクヨが正確な1mmを測れる「本当の定規」全国発売 メモリの境界を“面と面の間”で計測
- 高木ゑみさん、35歳で逝去 ステージ4の肺がんで闘病 生前最後の“人工呼吸器も外せた”報告に悲しみの声
先月の総合アクセスTOP10
- アントニオ猪木、“リハビリ中”の現在の姿を公開 激励相次ぐ「猪木さんは不死身の漢や!」「負ける訳ないやないか」
- 「遺伝ってすごい」「足長っ!」 仲村トオルの“美人娘”ミオがデビュー、両親譲りのスタイルに驚きの声
- 眠くなった子猫が、飼い主のお布団にやってきて…… 胸キュンな行動に「まじ天使」「とけてしまう」の声
- キンタロー。1歳娘が預け先で頭部にケガ 「ショックで立ち直れない」「なんで手を離したの」と取り乱す
- 保護した子ネコに「寂しくないように」とあげたヌイグルミ お留守番後に見せた子ネコの姿に涙が出る
- 冨永愛、目元そっくりな15歳長男の写真公開 母を上回る長身に「もうかなり背は伸びたのに……」
- 「もういいだろう、楽にさせてくれよ」 アントニオ猪木、入院治療中の弱音に叱咤激励の嵐
- 山に捨てられていたワンコを保護→2年後…… “すっかり懐いたイッヌ”の表情に「爆笑した」「かっこよすぎ」の声
- 仲里依紗、息子がスカウトされて大騒ぎ「芸能人なんですけどもね?」 夫・中尾明慶と一緒にスルーされてしまう
- 「訃報」「愛猫」「手風琴」って読める? 常用漢字表に掲載されている“難読漢字”