臨時収入でアシスタントに焼肉をおごった漫画家の悲劇 「全額……返金してもらえますか?」
これはショック!
漫画家の矢寺圭太さんを襲った焼肉中の出来事が、なんともしょんぼりしてしまうと話題です。
矢寺さんは一部始終を4ページのマンガ形式で「今日あった悲しい出来事」と題しTwitterに投稿。ある日「預金がXX万円増えてる!!」と驚いた矢寺さんは、すぐさま原稿料の振り込みミスではないかと担当編集者に連絡をしました。何かの間違いだと信じ込んだ矢寺さんは、「こういうミスもあるんだなー」と、どこか諦めムードでしたが……。
翌日になり、経理によると振り込まれたのは電子書籍の印税で、金額に間違いはなかったとの報告が入ります。矢寺さんは「ヤッタ!!」と思わずガッツポーズ。その晩、アシスタントさんたちを集めて「たまにはちょっとうまいもの食べに行きましょう!!」と、焼肉を大盤振る舞い。さらにボーナスとして金一封を一人一人に手渡しました。そんなとき、編集さんからまさかの電話が。
「やっぱり間違ってて 大変申し訳ないんですけど……とりあえず全額……返金してもらえますか?」
思わず「は?」と声がこぼれてしまう矢寺さん。事情を知らないアシスタントさんたちが向こうの方で「肉追加やー」と、楽しそうにお肉を焼いています。そして「完!」と、唐突に漫画は終了。
あまりに悲しいオチにリプライ欄では「ひえぇぇぇ((((;゚Д゚)))))))」と絶句する人や、「編集さんも呼んでお肉代を編集部持ちにしてもらえれば・・・」と悪知恵を絞り出そうとする人など、さまざまな声が寄せられました。
中には落ち度は向こう側にあるのだからお金を返す必要はないのではないかといった意見や、経費で会社に請求してしまってはどうかといった意見も。確かに法律上どうなのか、ちょっと気になりますね。そこで、今回のケースについて弁護士の藤澤亮さんに解説してもらいました。
返金する必要はない
――このケースのように経理に「その額で間違いなし」と確認した上で使ってしまった場合でも、法律上返金する必要はあるのでしょうか。
藤澤:利得を得た人(漫画家さん)が自分が稼いだ分のお金でないということについて善意(知らなかった場合)であれば出版社に対して「現に利益が存する程度」※を返還すれば問題ありません。今回、漫画家さんはわざわざ出版社に確認を取っていますので、「善意(知らなかった場合)」にあたり、「現に利益が存する程度」を返還すればよいこととなります。
※「現に利益が存する程度」とは:例えば、本来必要な生活費として費消した場合には、それに代わる利益(お金)を残しているはずなので、全額の返還義務があるとなります。一方、今回のように本来支出する必要がないものに浪費した場合は、それに代わる利益(お金)が残らないため、その分の返還義務はないということになります。
今回漫画家さんは、仕事がない日に、本来必要とは思われない焼肉を奮発して食べに行って費消しています。焼肉は既に胃袋に入ってしまっていて、財産等の形で代替するものが残っているわけではないので、その分の返還義務はないということになります。
なお、ミスと知っていて使ってしまった「悪意(知っていた場合)」であれば、受けた利益に利息をつけて返還しなくてはなりません。
――ちなみに、使ってしまった金額を経費として請求することはできるのでしょうか。
藤澤:所得税法上の経費(必要経費)というものは、収入を得るために「必要な」経費を意味します。さきほど、仕事がない日に本来必要とは思われない焼肉を食べに行って費消した分については、仕事上「必要でない」からこそ返還しなくていいとされました。「必要経費」として請求してしまうと先ほどの理屈と矛盾してしまいますので、焼肉で使ってしまった金額を経費として請求するのはやめておくのが無難です。
藤澤弁護士によると、誤って振り込まれたものと分かっていながら使い込んでしまうと「悪意」と見なされ、最悪の場合利子を付けて返金しなければならないとのこと。そういう意味では、真っ先に担当さんや経理さんに確認を行った矢寺さんの対応はナイスでした。
本来ならば使ってしてしまった分の返金は必要ないとのことですが、矢寺さんは「まあ面白かったんで結果オッケー!(と思いこむことにする」「無駄遣いする前に訂正されて本当によかったス」と、あまり気にしていない様子。ツイートの翌日には後日談マンガも公開しており、「人間が手入力してるものなので」と、担当さんのミスを水に流しているようでした。
画像提供:矢寺圭太(@yaterakeita)さん
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