国民の10人に1人が食べた人気駅弁、「ひっぱりだこ飯」の製造に密着してみた! 神戸駅弁・淡路屋
蛸壺形容器でおなじみの名物駅弁、おいしそうな製造の現場に潜入しました!














【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
駅弁には「陶器」に入ったものがあります。土産として持ち帰り、家で使っている方も多いことでしょう。釜めしの釜、新幹線、豚や舟、お城の陶器も我が家の棚には陳列されています。なかでも重宝しているのは、「ひっぱりだこ飯」の蛸壺形容器。箸入れやペン立ては勿論、鍋の灰汁取りなど、料理にも使えます。兵庫・西明石駅弁「ひっぱりだこ飯」は、国民の10人に1人が食べた計算になるという人気駅弁。その製造過程に密着しました。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第31弾・淡路屋編(第1回/全7回)
東海道・山陽新幹線の最新型・N700S新幹線電車の「のぞみ」号が、西明石駅をあとに山陽路を駆け抜けて行きます。最近はN700Sの姿を山陽新幹線で見かけることも増えてきました。2021年10月からは、「のぞみ」の7号車が、主にビジネス利用者に向けた「S Work車両」となったのも記憶に新しいところ。N700Sの7号車と8号車には、新たな無料Wi-Fiもあり、通信容量が大きく、時間制限もないので、移動中の仕事も快適ですね。
N700Sに揺られてやってきたのは、兵庫県神戸市東灘区にある「株式会社淡路屋」です。明治36(1903)年創業、118年の歴史を誇ります。いまは神戸市内を拠点に駅弁を製造。京阪神のさまざまな場所で、バラエティ豊かな駅弁にお目にかかることができます。駅弁膝栗毛の恒例企画、「駅弁屋さんの厨房ですよ!」の第31弾は、平成が生んだ随一の人気駅弁、名物「ひっぱりだこ飯」(1080円)の製造に密着いたしました。
「ひっぱりだこ飯」は、平成10(1998)年4月5日の明石海峡大橋開通を記念して生まれた駅弁です。それまで明石の駅弁を作っていたきん安弁当部から、淡路屋が駅弁を引き継ぐことになり、新商品の開発が企画されました。そこで「明石だこ」にちなんだ二段重の弁当を作りましたが売れ行きはサッパリ……。でも、「たこ」を使って何とかお客様に親しんでもらえる駅弁を開発したいという思いが募って、注目したのが「蛸壺形」の容器でした。
まずは「たこ」の旨煮から始まります。とてもいい香りが広がる、醤油ベースの淡路屋オリジナル出汁で15分〜20分かけて炊き上げていきます。「ひっぱりだこ飯」には、長年「明石だこ」が使われてきましたが、この夏の不漁を受け、10月からやむなく、当分の間、国産だこを使用するようになりました(掛け紙の裏面にも記載あり)。ただ、特別仕様など、一部のひっぱりだこ飯では、ストックしている明石だこを使用していると言います。
身が赤く染まって、たこが茹で上がってきました。茹でられたたこは、そのまま冷やされ、低温で保存されていきます。その後、食材の保存スペースから、盛り付け直前に出されて、1つ1つひと口大に、包丁を使って丁寧に手切りされます。
たこがやわらかく茹で上げられていることもあって、包丁がスッスッと入っていくのが印象的でした。いよいよ生産ラインにお邪魔しますよ。
おなじみの蛸壺形容器には、予め醤油味の炊き込みご飯と、練り物のたこ天が盛り付けられています。当時、蛸壺を「食器」とした例はなかったと言います。しかし、淡路屋では、益子焼を使った「峠の釜めし」のような陶器の駅弁があるのだから、蛸壺も「食器」として使えるのではないかと東奔西走。そのなかで紹介された岐阜・多治見焼の窯元と出会い、陶器製の蛸壺形容器を作ることができたそうです。
蛸壺形容器に詰められたご飯の上には、錦糸玉子、筍煮、椎茸煮、穴子のしぐれ煮、菜の花醤油漬の順に、手作業で盛り付けられていきます。「ひっぱりだこ飯」はレギュラーの他、金色、銀色、ハローキティ、ゴジラ……などのさまざまなバリエーションがあります。このため、種類が変わる際は、リーダーの方が、「ゴジラ、いきま〜す!」「キティ、いきま〜す!」といった具合に、声出し確認をしながら、間違いのないよう、製造を進めていました。
そして、いちばん上に満を持して、たこの旨煮が2切れ盛り付けられます。たこの足の“映える”部分が入るかどうかは運次第。これに飾り人参が添えられて、「ひっぱりだこ飯」の盛り付けは完了です。ちなみに、淡路屋の飾り人参は、季節によって変わるのが特徴。通常は「梅」の花で、春は「桜」の花、秋は「紅葉」の葉っぱに……。いつもと同じ駅弁に見えて、じつはしっかり「季節感」が隠れているのが嬉しいですね!
紙蓋と掛け紙がかけられる前に載せられているのは「ワサオーロ」。雑菌の増殖を抑え、鮮度を保つために、淡路屋がいまから30年前の平成3(1991)年、製薬会社のミドリ十字(当時)と共同開発したものです。当初はガムのような四角形で折箱の隅に置かれたと言いますが、誤食を防ぎ、効果を全体に行きわたらせるため、シートに塗るようにしたそう。もともと、シートを挟んでいたこともあり、製造工程が増えないことも採用理由だと言います。
【おしながき】
- 味付けご飯(醤油味)
- たこの旨煮
- 穴子のしぐれ煮
- たこ天
- 錦糸玉子
- 煮物(筍、椎茸、人参)
- 菜の花醤油漬け
そのままいただいても美味しいのはもちろん、レギュラー版は電子レンジにも対応しており、500Wで3分、600Wで2分30秒が目安です。自宅でいただく際は、お湯を注ぎ、茶漬けでいただく“味変”も楽しめるのがいいところ。淡路屋によると、これまでの20年あまりで、約1350万個が販売され、国民の10人に1人が「ひっぱりだこ飯」を食べた計算だそう。全国の数ある駅弁のなかでも、トップクラスの人気駅弁であることに間違いはありません。
明石海峡大橋は、建設中に阪神・淡路大震災に見舞われ、計画より1m橋が長くなったことでも知られています。「ひっぱりだこ飯」の大ヒットは、大震災からの復興途上にあった淡路屋が大きく立ち直るきっかけにもなりました。この駅弁を作っている「淡路屋」には、いったいどんな歴史があり、数々のユニークな駅弁を送り出してきたのか。全7回シリーズで、淡路屋の駅弁作りに迫ってまいります。
(初出:2021年12月6日)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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