手作りインクが彩る一点物の同人誌がすてき 紫キャベツやアボカドなどを使ったアーティスティックな一冊に興味津々:元司書みさきの同人誌レビューノート
天然由来なのにネオンサインのような人工的な色味が面白いです。
実りの秋。おいしいものがたくさん出回る季節ですね。ではおいしいものを食べたその後は? 今回は料理に使った食材の残りを使って楽しめそうな同人誌です。
今回紹介する同人誌
『Recipees for Bio-based-lnks』A5 20ページ 表紙、本文多色刷
著者:れいぽん
食べ物の残りからインクを作ってみる試み
作者さんはもともと自費出版の雑誌を制作され、さらに今年に入って印刷産業にスポットを当てる活動をしてこられたそうです。その中でインクを手作りする試みをされており、今回の同人誌にはこれまでに作られた5種類のインクの制作方法が掲載されています。
インクのもとになるのは、紫キャベツの葉や、アボカドの皮と種といった身近な食べ物の残りものや植物です。ご本にはそれをどのような手順で加工したのか解説され、そのとなりのページには完成したインクでスタンプが押されています。見知った材料が思いもよらなかった使われ方をされているのを目の当たりにすると、作者さんが「身近に手に入る天然素材でインクを作ることが(しかも家のキッチンで!)出来るという事実にとてもワクワクしました」と書かれているように、なんだか胸躍るものですね。
不規則から生まれる面白さを写し取って
ページに使われているインクは紫キャベツなら淡い青のような色味、玉ねぎの皮は柔らかそうな黄色、アボカドのこっくりとした深みのある茶色など、どれもすてきな色合いです。そこに繊細さや優しさだけでなくダイナミックさも感じるのは、インクをたっぷりのせて、もとの植物の形が分かるようにスタンプしてあるからでしょうか。
キャベツのなみなみの断面やアボカドの存在感のあるタネのシルエットも、自然の形のまま堂々としているように見えますし、一枚一枚手で押されたというスタンプは微妙なかすれ具合の違いが躍動を感じさせます。そしてインクが惜しみなく使われているので、水分を含んだページのところどころにしわができてでおり、時にざらざらと感触で分かるほどにインクが濃い部分もあります。
印刷という“複製を簡単に作るための方法”で本は作られているのに、メインに据えたのは二つと同じものが無い自然物×手押しのスタンプという、あえて規則性から外れたもの。また、手作りインク以外の部分は、多色刷の印刷で蛍光ピンクや鮮やかなイエローで華やかに仕上げられているのですが、このネオンサインのような強い人工っぽさがあることでぴりりと画面がひきしまり、ランダム性は乱雑さではなく、面白みにつながっているように思いました。
かっこよさが興味深さを支える
このご本はインク作りの容量や温度などが詳細に書かれているわけではなく、さっぱりと手順を追った書き方になっています。例えば「粉砕します」と書かれていても、どのくらいの細かさにするのかといった部分までは言及されていません。それなのに、面白そうだな、なんかいいな、と思わせるのは画面作りのかっこよさに秘訣(ひけつ)があるような気がします。作者さんはもともとデザイン関係の仕事をされているそうで、真ん中の部分も糸もカラフルな色で閉じられており、アーティスティックな雰囲気です。
多分、この本を参考にしてインク作りをはじめたら、幾らかの試行錯誤は必要になるでしょう。けれど、それすらも「面白そうだぞ」と思わせたり、植物からインクを作ることについて考えたり……ビジュアルにひかれて知らなかった方向へ一歩踏みたせそうな、そんな気持ちになりました。
サークル情報
サークル名:studio TRUE
入手先:HUMARIZINE
Instagram:@studio.true.2023
Webサイト:https://studio-true.net/
mail:info☆studio-true.net(☆→@)
今週の余談
自作インクは、経年とともに変化する可能性もあるそうです。変わっていくものを良しとして記録に使う……そういうのを許容できるのもまた豊かですね。
みさき紹介文
公共図書館、専門図書館に勤務していた元司書。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
関連記事
- クイズ番組の答えになることが最も少ない都道府県はどこ? 12番組を1年間調査した同人誌が趣味の塊
きっかけは「数えてみたくなった」から。 - もし動物たちが文明を持ったら 独自の進化を遂げた“空想上のビーバー”を描く同人誌『ビーバー建築史』
妄想がはかどる。 - “推し”との別れ、どうやって乗り越えましたか? 気持ちを整理したいあなたに寄り添う同人誌『R・I・P』
お別れの、その先のお話。 - マンガ家が描く“秀吉愛” 同人誌『あつまれ!太閤の沼』を読んで秀吉の魅力に沈みたい
豊臣秀吉で卒論まで書いてしまうほどの秀吉愛。 - “テレポートするナメクジ”を追った5年間 調査の内容をまとめたレポマンガに興奮を隠せない
104ページという力作。 - 「10年後には朽ちるものを100年後に延ばす」 博物館の裏方描いた漫画が驚きの連続
『ただいま収蔵品整理中!Vol.1』『ただいま収蔵品整理中!金属保存編』をご紹介。 - アフリカで初音ミクのライブをやってみた 一人の教師が実現させた異国の”ミクライブ”
今回は初音ミク愛にあふれた『Miku in Africa』をご紹介。 - 決してひと事ではない? 同人誌『夜10時カギを忘れて家に入れず初めてカプセルホテルに泊まった話』
忘れたと確信したときのドキドキ感……。 - 全国各地の“恐竜像”を1冊に 220カ所ものスポットを紹介した「日本全国恐竜公園ガイド」にワクワクする
そんなところにもいるの!? - こんなの待ってた! アメコミの効果音を集めた辞書がマニアックすぎて心くすぐる
今週はサークル「FANDOMAIN」さんの同人誌「アメリカンコミックス効果音辞典 スーパーヒーロー誕生から70年代まで」をご紹介。 - 国体初のマスコット”未来くん”を小説に 同人誌『古都こと奇譚』は京都を舞台にしたキャラクターたちの物語
皆さんの町にも、人気を博したキャラクターがきっといるはず。 - 炎の揺らめきと溶けた金属 職人自ら撮影した鋳物製造の写真集『滴る金属』
こだわりが詰まってる。 - “お江戸のコミック”を現代語訳 同人誌『黄表紙のぞき』が江戸文化の扉を開く
難易度の高かった「くずし字」を読みやすく。 - これまで撮った「片手袋」の写真は4000枚超 築地に通って約20年、“片手袋研究家”による同人誌が奥深い
趣味、ここに極まれり。 - 理学部生だったあの頃の自分に伝えたい 作者の後悔から生まれた同人誌『理学部生を手伝うイモリ』
イラストはかわいいけど中身はマジ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「太ももの筋肉が段違い」 “すさまじい完成度”の春麗のコスプレに「ご本人ですか?」と21万いいねの反響
-
東京駅で“あるはずのない落とし物”が見つかり話題に 深まる謎に「未使用なのか」「すげぇ」「意味が分からない」
-
「数やば」 ハードオフで目撃した“まさかの光景”が124万表示 「初めてみた」「いってみたい」
-
猫用ハウスにワンコがすっぽり、見過ごせなかったニャンコは…… 電車で見ちゃダメな“反撃”に「会話が聞こえてきそう」「笑ったww」
-
「納得がいくセーラームーンになりたい」 26年間コスプレを続けた結果→劇的に進化したセーラームーンが誕生!
-
“詐欺メイクの神”が新作プチプラコスメでフルメイクしたら…… 別人級の仕上がりに「めっちゃ美人」「すごく参考になる」
-
「甘くみてました」 ただの“毛糸”だと思ったら→1カ月半後……高級植物がもりもり成長! 土無しで育つ栽培ファイバーが便利そう
-
「これは素敵」 北海道の農業高校生が帰省したら…… リュックから飛び出た“まさかのもの”に「ほっこりする」「たくましい」
-
「ブレーカー落として避難した」 レンチンで“致命的なミス”を犯した結果…… 恐ろしい一部始終に「火事にならんで何より」
-
液体容器、中身が入ったまま捨てると…… 現役清掃員が教える“恐ろしい現実”がゾッとする 「コレはひどい」
- 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
- 「驚愕の修理代」の金額明かす お見送り芸人しんいち、約2000万円の愛車が故障で「終わった」「お金がないです」
- プロ警鐘「エアコン、夏が終わったらコレやらないと……」が530万再生 水漏れや“内部のスライム化”を防ぐコツが目からウロコ
- “医療ミス”で両頬に大きな火傷 「鏡見るたび涙が止まらない」フォロワー24万人のモデルが悲痛の声 「周りの目が怖い」
- スーパーで買ったニンニクを土に植えると…… ぼこぼこ増える驚きの簡単栽培に「たくさん出来て最高」「植えてみよう」
- 「これは合格出せない」 リンガーハットがジョブチューン挑戦→“まさかの不合格メニュー2品”に騒然
- 「全く動けません」清水良太郎がフェスで救急搬送 事故動画で原因が明らかに「独りパイルドライバー」「これは本当に危ない!!」
- 「本当に56歳…?」 “王騎”大沢たかお、“腕と足の太さがほぼ同じ”の圧倒的肉体を披露 「かっこよすぎる」
- モグラに似てる“ヤベぇ虫”を、2カ月育ててみたら…… 感動の展開に「これはマジで凄い」「学術発表レベル」
- カインズの「撒くだけで防草できる砂」本当かどうか検証してみたら…… 驚きの結果に「魔法のような砂、買いに行きます!」「これさえあれば」
- “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
- 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
- 友人に「100円でもいらない」と酷評されたビーズ作家、再会して言われたのは…… 批判を糧にした作品が「もはや芸術品」と490万再生
- 高校3年生で出会った2人が、15年後…… 世界中が感動した姿に「泣いてしまった」「幸せを分けてくださりありがとう」【タイ】
- 「ま、まじか!!」 68歳島田紳助、驚きの最新姿 上地雄輔が2ショット公開 「確実に若返ってる」とネット衝撃
- 荒れ放題の庭を、3年間ひたすら草刈りし続けたら…… 感動のビフォーアフターに「劇的に変わってる」「素晴らしい」
- 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
- 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
- 「エグいもん売られてた」 ホビーオフに1万1000円で売られていた“まさかの商品”に「めちゃくちゃ欲しい」
- 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声