海外の若者に浸透するボカロ・アニメ――ファン交流活動「みらいのねいろ」主宰に聞く海外オタク見聞録

VOCALOIDを海外に紹介するファン交流プロジェクト「みらいのねいろ」主宰に、現地で見た日本のコンテンツの人気について聞いてみました。

» 2014年04月10日 10時00分 公開
[松岡洋,ねとらぼ]
正木良明さん

 今や持ち歌10万曲を超えるとも言われる初音ミク、世界各地のアニメイベントでも初音ミクをはじめとするVOCALOIDのコスプレが定番となっています。海外のアニメイベントに出かけてVOCALOIDを紹介しているプロジェクト「みらいのねいろ」主宰・正木良明さんに海外でのVOCALOIDやアニメの人気についてうかがってきました。

 正木さんはアメリカの大規模アニメイベントAnime Expoのスタッフで、2011年にロサンゼルスで開催された初音ミクのライブ「MIKUNOPOLIS」を実現に導いたキーパーソンでもあります

 今年もすでに2月に南米チリで開催されたAnime Expo Santiagoに、ボカロPのZANIOさん、ダンサー・振付師のYumikoさんとともに招かれ、DJパフォーマンスや日本のVOCALOIDファンの活動などを紹介しています。

ZANIOさんとダンスを披露するYumikoさん

―― 「みらいのねいろ」を始めたきっかけは?

正木 初音ミク現象と呼ばれる創作の連鎖が海外でも話題になり始めたころ、この現象は日本人自らが語るべきと2009年にAnime Expoでパネルディスカッションを行ったのが最初です。

―― どのような活動を?

正木 「ZANIOさんやかごめPなどのボカロP、YAMAHAの剣持さん(VOCALOID生みの親、剣持秀紀さん)、AHS(VOICELOID結月ゆかりなどを手掛ける企業)の尾形友秀社長などVOCALOIDの関係者に海外のイベントでの講演などをお願いしています。そのほかにもアミッドPなどにアミッドスクリーン(網戸を使った透過スクリーン)やMMD動画の作成で協力していただいています。これまでにアメリカ、ドイツ、スイス、デンマーク、メキシコ、チリ、台湾の7カ国のイベントやコンベンションに参加し、アメリカ、ドイツ、チリにはアミッドを持ち込み、メキシコでは現地で制作されたアミッドでMMD動画を披露しています。

―― 海外への旅費などは持ち出しだそうですが。

正木 今年招待されたチリ以外はすべて自費です。法人化してどこかに援助していただくという方法もあるとは思いますが、お金が動くとさまざまな権利問題など制約がきつくなるため、あくまでも個人的なファン活動にとどめています。

 招待を受けたAnime Expo Santiagoは、チリの首都サンティアゴで開催され、日本からの直行便がなくカナダで乗り継いだため2日かかったとのこと。ほかの南米諸国でもアニメコンベンションが開催されていますが、日本からの往復だけで4日かかるため、日程的に日本からアニメ監督や声優さんを招くことが難しいのだそうです。

正木 南米でもさまざまな国でアニメコンベンションが開催されていますが、チリのAnime Expoが最も人気があります。お世話していただいたスタッフはチリのことを『南米の日本』と呼んでおり、その意味を聞いたところ、ラテンな気質の南米にあって真面目で日本のような優等生なのだと自負していました。

―― 日本が優等生の代名詞となっているのは興味深いですね。当日、記事冒頭の写真などがTwitterで流れてきて現地の熱気を感じました。

正木 会場に来ているのはローティーンから大学生まで幅広く、男女比は少し女性のほうが多いようでした。VOCALOIDについてはネット経由で見ており、日本の様子を時差なくよく知っていました。パネルセッションにはアニメファンも多く来ており、10代の少女がカゲロウデイズについての質問をしてきました。

―― (記者が)来日したさまざまな国の方と話して感じたのが、10代をターゲットとした娯楽が海外では日本に比べて圧倒的に少なく、特に少女向けのものに飢えているようです。カゲロウデイズの質問をした少女のように、そこがメインターゲットとなっているボカロが海外で人気になるのも、需要と供給としてとらえると必然のように思います。

正木 海外でなぜ日本のコンテンツが若い世代に人気になっているのか、これまで漠然と感じていたものが『需要と供給』でとても明快に理解できました。

―― その世代が自分で自由に使えるお金が少ないために、消費者とはみなされずコンテンツ自体も少ないということらしいです。

正木 現地ではカラオケ大会も催されており、アニソンをみんな日本語で歌っていましたし、ボカロのイラストなども展示されていましたが、日本の女の子が描くのと同じ絵柄で、日本の文化が浸透しているなあと感じました。

―― 商売としては厳しいですが、文化の浸透具合でみるとやはりすごいですね。日本政府がクールジャパン戦略に力を入れているのも、この文化の浸透が背景にあるからですね。

正木 サンティアゴの街を案内してもらいましたが、コミックやBlu-ray Disc、それにグッズなどを扱う店があり、(アメリカでは実店舗を廃業した)タワーレコードも健在でした。海外では店舗の廃業などで販路が減っていましたが、日本のコンテンツは下げ止まって回復している印象があります。

ドイツでも日本のコンテンツは人気

 「みらいのねいろ」は、先に紹介したように正木さんを中心にさまざまな人が協力しています。世界各地にアミッドスクリーンを運んだり、現地のイベント側との調整を行っていますが、欧州のイベントではドイツ留学中のKatahoさん(ねとらぼではドイツのファンによる実写版「進撃の巨人」を取材しています)がドイツチームとして活動しています。一時帰国したKatahoさんによるドイツチーム報告会からも、海外での日本のコンテンツの人気ぶりが見られます。

ドイツチーム報告会の様子
報告会終了後に質問攻めにあうKatahoさん

 ドイツではConnichi(コンニチ)というアニメコンベンションが毎年開催されており、2010年からみらいのねいろも参加。2012年からは毎月のように開催されている欧州各地のコンベンションにも参加しています。

Connichiへの参加
各地のイベントへの参加の様子

 ドイツの「進撃の巨人」ファンが制作した実写動画が話題になりましたが、徐々にファン活動も活発になってきており、昨年の夏コミにはドイツ人ボカロPのニコラスさんもサークル参加し、大洗をはじめ日本各地のアニメの舞台を聖地巡礼していました。

ドイツから夏コミに参加したボカロPのニコラスさん

 「進撃の巨人」ファン動画に出演している方や「ドイツの島風」を名乗るコスプレイヤーも今年の世界コスプレサミットや夏コミに参加とのことなので、今年の夏もさらに熱くなりそうな予感!

「進撃の巨人」ファン動画に出演のアンシーさん
同じくサンチさん
「ドイツの島風」ステファニーさん

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/14/news019.jpg ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  2. /nl/articles/2412/10/news133.jpg 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
  3. /nl/articles/2412/12/news089.jpg フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  4. /nl/articles/2412/14/news081.jpg 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
  5. /nl/articles/2412/15/news031.jpg ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  6. /nl/articles/2412/15/news002.jpg 毛糸でフリルをたくさん編んでいくと…… ため息がもれるほどかわいい“まるで天使”なアイテムに「一目惚れしてしまいました」「うちの子に作りたい!」
  7. /nl/articles/2412/14/news038.jpg 「釣れすぎ注意」 消波ブロック際に“カツオを巻いた仕掛け”を落としたら…… 驚きの結果に「これはオモロい!!」「こんなにとは」
  8. /nl/articles/2412/14/news063.jpg 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
  9. /nl/articles/2412/14/news002.jpg 【今日の難読漢字】「男衾」←何と読む?
  10. /nl/articles/2412/15/news024.jpg おじいちゃん「昔はモテた」→孫は信じていなかったが…… “今では想像できない”当時の姿が140万再生「映画スターのよう」【米】
先週の総合アクセスTOP10
  1. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  2. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  3. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  4. 高校生のときに付き合い始めた2人→10年後…… 現在の姿に「めっちゃキュンってした」「まるで映画の世界」と1000万表示突破
  5. 大谷翔平の妻・真美子さん、ZARA「8000円ニット」を着用? 「似合ってる」「シンプルで華やか」
  6. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」 投稿者に感想を聞いた
  7. 高校生時代に父と撮った写真を、29年後に再現したら……再生数1000万回超えの反響 さらに2年後の現在は、投稿者に話を聞いた
  8. 散歩中、急にテンションが下がった柴犬→足元を見てみると…… 「そんなことあります?」まさかの原因が860万表示「かわいそうだけどかわいい」
  9. コメダのテイクアウトで油断して“すさまじい量”になってしまった写真があるある 受け取ったその後はどうなったのか聞いた
  10. 「やめてくれ」 会社で使った“伝言メモ”にクレーム→“思わず二度見”の実物が200万表示 「頭に入ってこない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」