女子ってわからないことだらけ 「手品先輩」青春は手品よりも謎に満ちている

永遠に部に二人でいられるわけじゃない。

» 2019年09月17日 23時15分 公開
[たまごまごねとらぼ]
手品先輩 (C)アズ・講談社/手品先輩製作委員会

 すっごく元気でめちゃくちゃおバカ。テレビアニメ放送中の「手品先輩」(原作アニメは、失敗率が限りなく100%に近いポンコツ手品コメディ。いろいろあやういハプニングとめげなさすぎる先輩との楽しくて厄介な日々、これもまた青春。

 アニメはついに最終回。コミックスは学校祭が終わり大きな動きに。どうしようもなくポンコツな手品先輩と、彼女を中心にした奇術部は、永遠に続くかのような錯覚に襲われながらも少しずつ変化しはじめています。中でも大きく変わりつつあるのは、助手と手品先輩の関係。助手目線から、手品先輩目線から、どう変わっているのか追ってみます。


2人の出会い

 今となっては懐かしい、第一話の二人の最悪の出会いを振り返ってみます。


画像 手品先輩マジで吐くからな(1巻)

 一人で練習をしていた手品先輩、たまたま入ってみた新入生の助手。極度なアガリ症の手品先輩は、助手を見た途端緊張のあまり吐きそうに。その割に自分勝手に助手を引き留めようとする手品先輩の横暴。迷惑でしかない。

 ただ、助手が年相応にスケベだったからよかった。手品先輩はかなりかわいくて、ものすごくナイスバディ。スキがでかくてポロリしまくり。もろ出しすぎて下品なほど。彼を場に留めた理由の1つになりました。

 手品先輩は、助手が「入部」状態ではないとはいえ、呼び出したら来てくれることに大喜び。彼女はアガリ症ゆえに友人もほぼいない。先輩が抜けて部活は自分一人だけ。孤独な日々が続いていたのだから、後輩が初めてできた、という事自体がとても幸せでならない。失敗して、つっこまれて、ケンカする。今まであまり経験がなかったでしょう。いつも楽しそうでした。


画像 助手がいなくなって気付いたこと(2巻)

 部として申請できず、助手が入部もできないことを知り、彼女はまた孤独に戻りました。その時、寂しさを強く感じます。手品先輩「さみしい? 愚問! 慣れてますから! 一人でもできるのがマジックの良いところだよね」

 手品先輩は最初は、「誰でもいいから奇術部に来てほしい」くらいの気持ちでした。気がついたら、助手がそばにいるのが当たり前に。もうかつての孤独には戻れません。

 助手は最初の頃、先輩が卒業するまではしょうがないから付き合ってあげよう、くらいの気持ちで、自分を納得させていました。とはいえ自分から奇術部に来られるようほかの人に相談するなど、自主的に動くようになりました。

 二人がお互い、特別に感じているのを認識したのは、この出来事からかもしれない。


助手の気持ち


画像 応援はしたいんです(2巻)

 特に責任はないし、そもそも部員じゃないんだけれども、惰性で奇術部に通う助手。彼は明確な好き嫌いがない、ぼんやりした感覚で生きている少年です。だからなんの部活に入るかも考えていませんでしたし、きっぱり奇術部を断りもしませんでした。

 彼は先輩の暴走を面倒くさくは感じています。けれども彼女が一生懸命やっているのが嫌いなわけでもない。

 アガリ症という最大の欠点を抱える彼女が練習している時、助手はかなり真剣に応援していました。手品先輩を置いて帰るふりをしながら、こっそり見守って「がんばれがんばれ……」と見つめている彼の姿は、今までの無関心・無感動な様子とは異なっています。


画像 咲ちゃんがいなかったらこういう感情に気付かなかったかも(4巻)

 彼自身が最初に気付いたのは、保護欲求でした。問題がありすぎる先輩のことをほったらかしにできない。なんせ素人のくせに水中脱出イリュージョンに挑もうとする子です。大道芸中にお金で買われそうになっても気付かない子です。純粋すぎて簡単にだまされる彼女、危なっかしいったらありゃしない。


画像 独占欲(4巻)

 咲ちゃんが加わってからは、ますます保護者っぽさが増していきます。ある日手品先輩が知らない男性と一緒にいるのを見て、助手は激しく混乱。

 助手「彼氏面とかそんなんじゃないんです!! 面倒見てた野良猫が実は近所の飼い猫だったようななんともいえない感じといいますか!?」

 まーくんは彼の心理を独占欲と称しました。彼氏や保護者と異なり、責任感がない発言にドン引き。

 もっとも彼は、身を挺して彼女を助けようと駆け出す助手、責任感自体は既にあったようです。


画像 自分への言い訳のターン(6巻)

 かなりこじれた思考に陥ることが多々ある助手。6巻では、手品先輩が文化祭で、卒業した憧れの先輩に再会すると知る場面があります。

 彼のモノローグ、まず「保護者」目線が真っ先に出てくる。次に自分と先輩がどういう関係なのか理解できず困惑。恋愛的嫉妬心ではないと必死に抵抗しつつも、先輩からの好意をどこか期待している節もある。迷走がひどい。

 はっきりしない日々の中で、はっきりした独占欲や嫉妬が生まれたことに気付いた。手品先輩との特別ななにかのために、自分の身を動かそうとしはじめたのなら、それは立派な自我の目覚めです。


画像 気にはなるよね(6巻)

 助手も一応は、手品先輩を女性として意識してはいます(スケベ心以外でも)。時々ドキッとするしぐさを見せる手品先輩。その度にフラグがたったんじゃないか、と感じることもある。でも「いや、ありえないな」となってしまうのは、手品先輩が毎回オチをつけるほどドジだから。

 最初は拒絶すらあったのに、今や「満更でもない」ところまで心が動いている。もしかしたら彼は、自分の感情に気付いているけれども、言い訳して逃げ続けているだけなのかも。


先輩の気持ち


画像 助手を「男」だと意識しはじめた手品先輩(2巻)

 手品先輩は序盤、純粋に「仲間が増えた!」という喜びでいっぱいすぎて、助手のことを男性だと見ていませんでした。パンツむき出しになったり、服が脱げたり、ダイナミック御開帳が多い彼女。恥ずかしくはあっても、それは子供の羞恥心に近いものです。助手が自分のことを好きだと勘違いした際、彼女的には助手にパンツを見られる方が恥ずかしかったらしい。そのくらい恋愛意識は薄め。


画像 誰でもいいわけじゃない(3巻)

 時がたつにつれ、先輩はふと表情を変えるようになります。奇術部で二人きりのある日、助手が居眠りし、手品先輩が一人で練習する珍しいタイミングが訪れました。彼女が助手を見ている視線は、かなり目を引く描写に。何を考えて、助手に触れようとしていたのだろう?


画像 こぼれてしまう不思議な笑み(4巻)

 自分と知らない男性が歩いていたのを心配し、助手が尾行していた件について聞いた手品先輩。普段は全くしない、クスクス笑いをし続けました。

 ここでなぜ手品先輩が笑い続けていたのかは、明確には描かれていません。ただ、今までになかった助手の行動を知って、彼女の中に大きな変化があったのは間違いなさそうです。


画像 先輩としてなのか、あるいは(5巻)

 手品先輩は助手と出会ったことで、たくさんの青春の幸せを手に入れました。部活動を続けられること。仲間がいること。先輩と後輩の関係を楽しめていること。

 自分は今とても楽しい。それだけではなく助手も「まあ楽しいですよ」と言ってくれた。

 彼女の高校生活の幸せの中に、助手は欠かせないものになっていきます。もう「助手」は、助手以外にありえない。


永遠に続くと思っていた

 この作品は、基本助手目線で描かれています。そのため手品先輩は「わからない人」という立ち位置に据えられています。それは極端な行動の人間という不明さもありますが、同時に「女性ってわからない」という少年の思いでもあります。


画像 わかってはいるんだけれども(5巻)

 助手「わからん……俺あと2年もあるし 先輩なんかまだ500年くらい部室にいそうな気がするし」

 ドタバタな日々自体が、日常に変わっている助手と手品先輩。彼女に振り回されっぱなしの助手の目から見たら、この日々が終わるなんて考えられない。

 当然、終わりは来ます。手品先輩は3年生。一緒にいられるのは1年もありません。


画像 二人が真剣を出し合えた一瞬(6巻)

 原作コミックの5巻から6巻で、先輩後輩としてのみならず、男女としても強く意識せざるを得ない事態が訪れます。まだまだ手品先輩と助手の関係はどうなるかわかりませんが、曖昧なままでいられる時間は多くありません。少なくとも、2人とも自分の気持ちに向き合い、動けるようにまで成長しました。

 タイムリミットありの、ちょっとセンチメンタルな青春の描写が、ところどころにあります。でもまずはお色気大爆発で下品気味なおっぱいやパンツで、「今」を目いっぱい楽しめるように描かれているのが、この作品の魅力です。未来を憂うよりも、目の前のドタバタとスケベと、幸せそうな手品先輩の笑顔を楽しもう。自分と相手の気持ちがわからず困惑することもあるだろうけれども、華やかな手品のように、ハッピーな未来が訪れ続けること、期待しています!


たまごまご

(C)アズ/講談社


前回までのお話


手品先輩

手品先輩

手品先輩

手品先輩
手品先輩
手品先輩
手品先輩
手品先輩
手品先輩
手品先輩

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2409/12/news047.jpg 上司「みなさん、出社してますか?」→何かと思ったら…… “しごでき”なヒアリングに「ここで働きたい」と7.8万いいね
  2. /nl/articles/2409/12/news054.jpg 「無神経すぎる」 知らない人が勝手にバイクまたがり記念撮影に恐怖……本人「怒りよりも理解できない状況」
  3. /nl/articles/2409/07/news027.jpg “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  4. /nl/articles/2409/11/news150.jpg 「すげぇwww」 ホロライブ・天音かなた、“ビッグカツ1年分”をゲット→製造元の“まさかの気遣い”でとんでもないことに 「カツカレー作って」
  5. /nl/articles/2409/12/news104.jpg 「飲めるハンバーグ」が原因の食中毒、新たに27人 発症者は34人に 13人からO157検出 千葉・船橋
  6. /nl/articles/2409/11/news195.jpg “いじめ発覚”にファン大激怒 「NewJeans」が“関係者に無断”で生配信→怒りの告発と懇願
  7. /nl/articles/2409/11/news027.jpg 築36年の実家“とんでもない状況のキッチン”を、娘が向き合って片付けると…… 「新築の家みたい」「びっくりです」と驚嘆の声
  8. /nl/articles/2409/11/news038.jpg 「僕ですかこれ」 垢抜けたい男性が“劇的イメチェン”→その大変身に「すげええ!」「泣けたわ」と仰天
  9. /nl/articles/2409/12/news042.jpg ←父が撮った食卓 女子高生の娘が撮った食卓→ “デジタルネイティブ”を痛感する違いに「すごい まねします」「左Twitter 右Instagramって感じ」
  10. /nl/articles/2409/12/news004.jpg 雑草だらけの庭が“たった1台の草刈り機”で…… “見事な変化”に7000万再生 「よくやった」「まさにプロ」
先週の総合アクセスTOP10
  1. “緑の枝付きどんぐり”をうっかり持ち帰ると、ある日…… とんでもない目にあう前に注意「危ないところだった」
  2. 食べた桃の種を土に植え、4年育てたら…… 想像を超える成長→果実を大収穫する様子に「感動しました」「素晴らしい記録」
  3. 「天才!」 人気料理研究家による“目玉焼きの作り方”が目からウロコ 今すぐ試したいライフハックに「初めて知りました!」
  4. 義母「お米を送りました」→思わず二度見な“手紙”に11万いいね 「憧れる」「こういう大人になりたい」と感嘆の声
  5. 「しまむら」に行った58歳父→買ってきたTシャツが“まさかのデザイン”で3万いいね! 「同じ年だから気持ちわかる」「欲しい!」
  6. 猛毒ガエルをしゃぶった30分後、口がとんでもないことに…… 直視できない異常症状に「死なないで」「この人が苦しむってよっぽど」
  7. 33歳の「西郷どん」二神光さん、バイク転倒事故での急逝に衝撃 1年前の共演者は“願い”明かし「叶わないなんて」
  8. 「コレ入れると草が生えない」 外構工事のプロがやっている“究極の雑草対策”に注目
  9. 「へー知らんかった」 わずか7年で“消えた駅” 東京メトロが明かす“知れば納得の歴史” 「だからあんなに……」
  10. 秋葉原のトレカ店が“買い占め被害” 近隣店とその常連客が共謀し“全口購入の人員確保” 「大変遺憾で残念な限り」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ったら……飼い主も驚きの姿に「もはや魚じゃない」「もう家族やね」 半年後の現在について飼い主に聞いた
  2. 「もうこんな状態」 パリ五輪スケボーのメダリストが「現在のメダル」公開→たった1週間での“劣化”に衝撃
  3. 「コミケで出会った“金髪で毛先が水色”の子は誰?」→ネット民の集合知でスピード解決! 「優しい世界w」「オタクネットワークつよい」
  4. 庭で見つけた“変なイモムシ”を8カ月育てたら…… とんでもない生物の誕生に「神秘的」「思った以上に可愛い」
  5. 「米国人には想定できない」 テスラが認識できない日本の“あるもの”が盲点だった 「そのうちアップデートでしれっと認識しそう」
  6. ヒマワリの絵に隠れている「ねこ」はどこだ? 見つかると気持ちいい“隠し絵クイズ”に挑戦しよう
  7. 「昔はたくさんの女性の誘いを断った」と話す父、半信半疑の娘だったが…… 当時の姿に驚きの770万いいね「タイムマシンで彼に会いに行く」【海外】
  8. 鯉の池で大量発生した水草を除去していたら…… 出くわした“神々しい生物”の姿に「関東圏では高額」「なんて大変な…」
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「なんでこんなに似てるの」 2つのJR駅を比較→“想像以上の激似”に「駅名だけ入れ替えても気づかなそう」