金沢の名物駅弁を生んだ、かつての北陸本線の特急・急行列車とは?:金沢「特製牛肉弁当」(1380円)
「白鳥」「雷鳥」「しらさぎ」「はくたか」「サンダーバード」……金沢には古くから東西を行き交う“鳥”由来の特急列車がたくさん。そんな金沢の名物駅弁にまつわるエピソードを伺います。











【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
春がまだ浅い時期は、ハクチョウをはじめ、渡り鳥の北帰行のニュースをよく耳にしますね。そんな「白鳥」や「雷鳥」、「しらさぎ」、「はくたか」……といった鳥の名前を愛称とした特急列車が、かつては数多く金沢駅を発着していました。列車で東西を行き交う乗客に販売されてきた金沢駅の駅弁。数々の名物駅弁にまつわるエピソードを伺いました。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第33弾・大友楼編(第3回/全6回)
白山の山並みをあとに、特急「サンダーバード」が大阪を目指します。白山は、富士山、立山と並ぶ日本三名山の1つに数えられ、信仰の山としても、古くから知られています。白山をご神体とする「白山比竎神社(しらやまひめじんじゃ)」は、全国にある白山神社の総本宮。「しらやまさん」の愛称で親しまれています。神社への鉄道アクセスは、北陸本線・西金沢駅から北陸鉄道石川線で終点・鶴来まで乗ると、歩いても行ける距離ですね。
明治31(1898)年から、北陸本線・金沢駅の構内営業を担っている「株式会社大友楼」。「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第33弾は、大友楼の大友佐悟常務取締役にお話を伺っています。今回は、北陸特急華やかな昭和の戦後から平成の初期にかけて生まれた、大友楼の数々の名物駅弁についてお聞きしました。
「お贄寿し」「ゆのくに弁当」……昭和の大友楼を彩った数々の駅弁!
―大友楼が、金沢駅近くに「弁当部」を作られたのはいつごろのことですか?
大友:昭和の初めごろ、鉄道で移動する軍隊への供食御用(軍弁)を受けてからです。それまでは、香林坊近くのいまの料亭で作った弁当を、金沢駅まで運んでいました。戦時中は食糧事情も厳しいものがあったと聞いていますが、弊社には農林省(当時)より、特別なお米の配給がありました。現在の弁当部は金沢駅西口にありますが、区画整理など、さまざまな理由で、駅周辺で3度の移転をしています。
―金沢の駅弁が、売れるようになったきっかけは?
大友:戦後、鉄道旅行が日常化してからです。(駅弁大会などが開催され)駅弁ブームが起こり、(昭和30年代以降)ご当地性あるローカル弁当の開発で、多くの皆さまに駅弁をお買い求めいただけるようになりました。なかでも準急「ゆのくに」の運行開始を記念して発売した「ゆのくに弁当」は、酒のつまみを主体に郷土の保存食を中心に作り上げました。長時間寝かして作る「ふぐすじ」や「ゴリの佃煮」が人気だったと言います。
―昭和のころは駅での立ち売りや北陸特急での「車内販売」をやっていたわけですよね?
大友:昭和30年代から新幹線開業前まで車内販売をやっていました。最初は自社で、後年は北陸トラベルサービスが行いました。大友楼が乗車するのは金沢〜糸魚川間が多かったと聞いています。そのころの名物駅弁は「お贄寿し」でした。加賀一之宮・白山比竎神社の「御贄講大祭(みにえこうたいさい)」とハレの日に作る押寿司文化にちなんだ駅弁です。残念ながら、北陸新幹線開業に伴う商品見直しのなかで販売を終了しました。
トワイライトエクスプレスとともに生まれた「1万円の駅弁」!
―国鉄がJRになって駅弁を取り巻く環境が変わり、昭和から平成へと時代も移り変わるなかで、大友楼は1万円の駅弁「加賀野立弁当」を発売して、大きな話題になりました。
大友:寝台特急「トワイライトエクスプレス」(1989年〜2015年)のお客様に、JRさんから依頼を受けて発売しました。「トワイライトエクスプレス」は、食堂車・ダイナープレヤデスで提供されるディナーがフランス料理でしたので、和食を希望されたお客様に本気のおもてなしとして、加賀料理をたっぷり詰めたお弁当を製造いたしました。いまも、3日前までにご予約いただければ、3個から製造しています。
―1万円の駅弁って、どんな方が購入されますか?
大友:旅の最後まで、金沢を満喫されたいという旅行のお客様が多いです。思いのほか、リピーターの方も多くいらっしゃいます。あるお客様は、お仕事で定期的にお一人で金沢にいらっしゃいます。ただ、1人で3個は食べきれないので、「加賀野立弁当」に他のお客様の予約が入っているか、毎回弊社に電話で問い合わせされて金沢にいらっしゃいます。最近は「加賀野立弁当」のご予約が入った段階で、ご連絡することもあるほどです。
1万円の駅弁はなかなか手が出ないという方も多いと思いますが、重厚な紙箱に思わず手を伸ばしたくなる金沢駅弁があります。それは「特製牛肉弁当」(1380円)。かつては、“能登和牛”の冠が付いていましたが、牛肉を取り巻く環境が厳しくなり、現在の商品名となりました。北陸の旅ではどうしても海鮮系食材が中心となる分、この牛肉弁当の存在は、いつ訪れても本当にありがたいものです。
【おしながき】
- 白飯(石川県産コシヒカリ)
- ローストビーフ
- 人参のソテー
- フライドポテト
- 紅しょうが
- 中華いか山菜
- 奈良漬け
- 桜漬け
- 大福
大友楼の「特製牛肉弁当」は、いまや希少な存在と言ってもいいローストビーフの駅弁! 石川県産コシヒカリの白いご飯の上いっぱいに敷き詰められている、うま味が凝縮されたローストビーフに、大友楼オリジナルの甘めのたれをかけていただきます。このたれがしみ込んだ白いご飯と一緒にいただくのが至福のひととき。奈良漬けなどの漬物でアクセントを付けていくと、デザートの大福まではあっという間です。
かつて、北陸本線を頻繁に行き交った国鉄色の特急列車。現在は、JR小松駅近くの「土居原ボンネット広場」に、ボンネット型の先頭車両が1両、大事に保存されています。この日は、北陸新幹線長野開業前まで上野〜金沢間で運行されていた特急「白山」のヘッドマークが掲げられていました。2022年も3月下旬から冬前まで、土・休日を中心に中を見学することもできる他、有料で運転席の公開も行われる予定です。
(初出:2022年3月18日)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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