「閻魔大王=怖い」は“ギャップ萌え”のための布石 閻魔LOVEな同人誌の愛が深すぎて地獄に届きそう司書メイドの同人誌レビューノート

今回は『閻魔堂のあるきかた』をご紹介。

» 2017年12月24日 12時00分 公開
[シャッツキステねとらぼ]
シャッツキステ

 街はツリーやイルミネーション、きらきらした飾りものでいっぱい! にぎわいの中をあるいてみれば、ケーキやチキンの箱を抱えた人とすれ違ったり。そんな盛り上がりの中、ちょっと違う方向に、季節を先取りしてみませんか? クリスマスの先にある物は、神社仏閣での年越しとお参り。しかしそこにとどまらず、さらに詣でる先があるのです。そこにいらっしゃるのは……閻魔様!

今回紹介する同人誌

『閻魔堂のあるきかた』

B5 44ページ 表紙・本文カラー

作者:羽流木はない


同人誌 閻魔堂のあるきかた シャッツキステ 朱色が目を引くあざやかさ!

閻魔様を祀るお堂が全国各地に!

 お寺の一画にあるちょっとしたお堂。祀られているのは神様でも仏様でもなく、閻魔様。このご本は、東京を中心に14の閻魔堂を作者さんが実際に訪れて、そのみどころをまとめた同人誌です。全国の閻魔堂リストつき!

 神社や仏閣はお参りする機会がありますが、閻魔堂なんてあるんですか? と思ったら、閻魔堂が大ブームだったのは江戸時代のころ。今の世の中では、ちょっとひっそりとしているところも多いみたいですが、そこには江戸の人たちの心に寄り添ってきた閻魔様の魅力が隠されていたのです。

いじられキャラ? ギャップ萌えが愛おしすぎる閻魔様のとりこに

 閻魔様といえば、地獄で待ちうけて、生前の行いを厳しく裁く、怖い存在……。でも、実は閻魔様はもともとは人間だったのですって。それが今や、地獄の裁判官に。さぞや厳格な方かと思いきや、今に伝わる閻魔様エピソードは“閻魔様がやらかしちゃった”笑い話が多いらしいですよ。

同人誌 閻魔堂のあるきかた シャッツキステ 恐ろしいイメージは、ギャップ萌えの布石でしかない!

 作者さんは「閻魔様への信仰心が浸透するなかで、笑っても平気そうな親しみやすさが感じられるのでは」「裁判官としてあくせく働く姿に、庶民は心を重ねたのかも」と分析されています。私も初めて知ったのですが、閻魔様自身、人間を“裁く”放漫さを罪として、罪人と同じように毎日3回煮え銅を飲まされているというエピソードもあるのだとか。ほのぼの笑い話も許容したり、自らを戒めていたり……。もー、閻魔様優しすぎでしょ! と頭を垂れたくなって、閻魔堂を建立した江戸の方々の気持ちが分かるような気がしました。

同人誌 閻魔堂のあるきかた シャッツキステ 閻魔様の知られざる秘話!?

 心広く、親しみやすいお方。仏さまに言えないことも閻魔様にならいえる……と、ちょっと後ろ暗い気持ちになってしまうようなお願いごとも聞いてもらえることで、閻魔堂はかつての風俗街などの近くに建てられていることも多いのだとか。ああ〜、心に抱えるあれこれを清濁あわせ飲んで「うんうん」って聞いてもらえるって、やっぱり、やさしさの塊じゃないですか! そりゃ作者さんも「地獄の王なのに現世では弱者の味方ってね ヒュ〜 ギャップが最の高〜!」とテンション上がります。

 ちょっとゆるっとした作者さんの絵が、時に熱く、時に穏やかに、とにかく閻魔様をぐいぐい推してきて、さらりと読めるのに、閻魔様への関心度が、ものすごく高くなっている自分に気付きます。閻魔愛すごい。

 ちなみに作者さんは閻魔様への思いが募りすぎて、“閻魔様が老婆を助けるために自らの右目を与えた”という伝承に、「は〜〜!? なんじゃそら キーッなによ!?」「私が老婆になっても愛してくれますか!? 長生きしてみますね!!」と取り乱す、閻魔様へのガチ恋勢。

各地の濃すぎる閻魔堂をレポート

 閻魔様愛にあふれる作者さんによる閻魔堂レポートは、「とにかく閻魔堂に来てみて! 閻魔様に親しんでみて!」と、楽しみどころを教えてくれるリアル布教型。スタンダードな閻魔像の見応えから、光ってしゃべるハイテク閻魔像の紹介、極楽度・地獄度チェックができる(しかも閻魔様録り下ろしボイス収録)エンタメ力のある閻魔堂、逆にしっとりと緑豊かな閻魔堂まで、写真をまじえてレポートされているので、雰囲気が分かりやすいですよ。

同人誌 閻魔堂のあるきかた シャッツキステ 光る!? 声が出る! 多様な閻魔様の姿をレポート

同人誌 閻魔堂のあるきかた シャッツキステ 「閻魔堂へ行きたい」「でもなんか遠出はしたくねえ」……気分にそんな選択肢が出てくること自体が驚きですよ……

 こんなに魅力ある閻魔さまに会いに行ける閻魔堂。いつでも拝観できるところもありますが、年2回、特別に盛り上がるタイミングもあるのです。なぜ年2回なのか? それは閻魔様のお休みの日に合わせているから! ……って、えっ? 閻魔様って、週休2日とかではなく、年休2日なんですかぁ!?

同人誌 閻魔堂のあるきかた シャッツキステ にぎわいに、かつての盛り上がりを重ねて、それだけでハッピーになる作者さん。愛が深い……

 1年に2回しかお休みが無い閻魔様の、次のおやすみは1月16日。もうすぐですね! その日だけ閻魔様のお姿を公開している閻魔堂も多いみたいですよ。いまからなら、事前情報を集めて閻魔堂めぐりを計画するのにぴったりの期間じゃないでしょうか。

 いろんな神様仏様の行事を、笑って楽しんじゃえる環境ですもの。星に願いをかけるも良し、閻魔様に願いをかけるも良し! クリスマス、除夜の鐘、初詣に閻魔堂も入れて、バラエティーに富んだ年末年始もありかもですよー。


サークル情報

サークル名:誤解無く五回泣く

Twitter:@warugi871

購入先:booth


今週のシャッツキステ

シャッツキステ ちっちゃなツリーにちっちゃな飾りをめいめい持ち寄って飾りました。ライゼちゃんは白くてきらきらしたパーツがついて、雪や氷を連想しそうなオーナメントを手作り! 寒くなってきましたが、年末には海辺の熱い同人誌即売会も控えてますもの! 体調ととのえて、よいお年をー

著者紹介

司書メイド ミソノ 司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る

関連キーワード

同人誌 | レビュー


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2503/25/news050.jpg 初めて夫の実家に挨拶した妻、初々しかった表情が9年後…… “そうはならんやろ”な変わりっぷりが1150万再生
  2. /nl/articles/2503/23/news042.jpg ニットで口元が隠れた赤ちゃん、そっと脱がせてみると…… “想像を超える”表情が2300万再生「心に刺さった」「今まで見た中で1番!」【海外赤ちゃん記事3選】
  3. /nl/articles/2503/24/news034.jpg 「多分日本で1位、2位を争う」 3児のママが書いた“通園経路図”がすごい! 「えーめちゃ最高ですね」「中高生だったら溜まり場」
  4. /nl/articles/2503/23/news036.jpg サイゼリヤのメニューを片っ端から注文→10人がかりで完食したら…… 驚がくのレシートに「やすぅ」「すごすぎ」
  5. /nl/articles/2503/23/news033.jpg 段ボールに切れ込みを4つ→“信じられない変形”をするライフハックに80万再生の反響 「今世紀最高の技だ」
  6. /nl/articles/2503/25/news066.jpg 「なんだこの暗号は……」 マクドナルドの“大人だけが読めるメッセージ”が410万表示「懐かしい〜」「読める人同世代w」【マクドナルド面白投稿まとめ】
  7. /nl/articles/2503/25/news047.jpg セリアのクッションカバーを2枚縫い合わせるだけで…… “まさかの完成品”に「なるほど!」と驚きの声
  8. /nl/articles/2503/24/news181.jpg つるの剛士、大学卒業式で判明した“本名”が珍しすぎて読解困難 証書に書かれた一文字へ「難しい漢字だったの忘れてました」「鶴じゃなくて」
  9. /nl/articles/2503/25/news028.jpg 「これはうれしい」 引っ越しのあいさつでもらった手土産、開封したら…… “センス抜群の中身”に「参考にしたい」
  10. /nl/articles/2503/25/news039.jpg ドイツ人女性「今まで自分で髪を切っていた」→日本で“美容室”を初体験すると…… “印象激変”のビフォアフに仰天「生まれ変わったみたい」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「うそでしょ!?」 東京ディズニーランド、“老舗”レストランの閉店を発表 「とうとう来てしまったか」「いやだああああ」と悲しみの声
  2. Koki,、豪邸すぎる“木村家の一室”がウソみたいな広さ! 共演者も間違えてしまうほどの空間にスタジオビックリ「コレ自宅!?」「ちょっと見せて」
  3. 息子の小学校卒業で腕を組んだ34歳母→中学校で反抗期を迎えて…… 6年後の姿に反響 「本当に素敵!」「お母さん、変わってない!?」
  4. プロが本気で“アンパンマンの塗り絵”をしたら…… 衝撃の仕上がりが550万再生「凄すぎて笑うしかないw」「チーズが、、、」 話題になった作者に話を聞いた
  5. ディズニーランドがオープンした1983年当時、カップルだった2人→37年後…… 目頭が熱くなる現在の姿に感動
  6. ニットで口元が隠れた赤ちゃん、そっと脱がせてみると…… “想像を超える”表情が2300万再生「心に刺さった」「今まで見た中で1番!」【海外赤ちゃん記事3選】
  7. 水族館のイカに“指でハート”をしてみたら… “まさかのお返し”が190万表示「こ、こんなことあるのか」
  8. 「ひどすぎ」 東京ディズニーランドで“約100人のドジャースファン”が一斉に“迷惑行為” 「やめてほしい」と物議
  9. 19万8000円で購入した超高級魚を、4年間育てたら…… ド肝を抜く“大変化”に「どんどん色が」「すごい」
  10. 初めて夫の実家に挨拶した妻、初々しかった表情が9年後…… “そうはならんやろ”な変わりっぷりが1150万再生
先月の総合アクセスTOP10
  1. 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  3. パパに抱っこされる娘、13年後の成人式に同じ場所とポーズで再現したら…… 「お父さん若返った?笑」「時止まってる」2人の姿に驚き
  4. 和菓子屋で、バイトの子に難題“はさみ菊”を切らせてみたら……「将来有望」と大反響 その後どうなった?現在を聞いた
  5. 古いバスタオルをザクザク切って縫い付けると…… 目からウロコの再利用に「すてきなアイデア」【海外】
  6. 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  7. 希少性ガンで闘病中だったアイドル、死去 「言葉も発せないほどの痛み」母親が闘病生活を明かす
  8. “きれいな少年”が大人になったら→「なんでそうなったw」姿に驚がく 「イケメンの無駄遣い」「どっちも好きです!笑」
  9. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  10. 芸能界引退した「ショムニ」主演の江角マキコ、58歳の近影にネット衝撃「エグすぎた」 突然顔出しした娘とのやりとりも話題に