人混みを見下ろしながらお茶を飲む 人間観察がはかどりそうなカフェをまとめた同人誌『人流観測cafe』が気になる:元司書みさきの同人誌レビューノート
新たな視点からのカフェ紹介。
新鮮な気持ちで年を越し、松の内が明けたらあっという間に日常の慌ただしさが戻ってきたようです。街の人混みを抜けて、カフェであたたかい飲み物を飲むとほっと肩の力が抜けます。そんなときに今回のご本を知っていると、面白さがプラスされそうですよ。
今回紹介する同人誌
『人流観測cafe』B5 34ページ 表紙・本文カラー
著者:tantan
「混雑を観察できるカフェ」20選を紹介
こちらのご本は、人々が行き交う様子を観察できるカフェを紹介している同人誌です。東京、大阪、福岡など各地のカフェから20店を選んだ作者さんは、これまでカフェを利用することはほとんどなかったものの、渋谷のスクランブル交差点などの混雑の模様が外国人観光客に人気と知り、ご本にまとめることにしたそうです。故に、その視点はどこまでも「いかに混雑を観察できるか」に重きが置かれています。
でも、わざわざ混雑を見るってどんな気持ちでしょう? と疑問符が浮かんだ私のことを予期していたかのように、作者さんの思う混雑観察の面白さが冒頭にまとめられていました。それによると人流観測には、
- 人波を見下ろす優雅さ
- 流れの中にあるルールを見つける
- たくさんの人を観察できる
といった楽しみ方があるそうです。例えば「人がすれ違う時の動き」や「鞄(かばん)の持ち方」など……なるほど、安らぎの時間の中、発見や気付きがそこに潜んでいるのですね。
席と窓の距離感は? 人流は見ることができる? 観察するからこそのこだわりポイント
ページを開くと、カフェの名前、席数、営業時間といった基本的な情報や、カメラの取り扱いなどのカフェに負担を増やさない心掛けについてなどが載っています。しかしカフェ本なら必ずあるメニュー紹介は一切なく、代わりにあるのは「席から窓への距離感」「席から展望するとき遮るものがあるか?」などの独特の情報です。席数もお店全体の椅子の数ではなく、「窓を正面に座る1人席」をカウントするこだわりぶり。
けれどページの上部はカフェからの展望の画像がカラーで掲載され、立地から考えられる人々の様子なども解説として添えられているため現場の様子が想像しやすくなっており、決してとっぴなアイデアばかりでなく、実際に利用してみたいときに参考になる作りになっているのがありがたいです。
大きな展望と小さな焦点へ。視点をスイッチできる面白さ
混雑を眺めるためにカフェに行くとは考えたこともなかった私ですが、淡々とつづられる「ここではどんな人波が観察できるか」「混むタイミング」などの情報を読んでいるうち、人流観測カフェの流動する面白さが少し分かってきたような気持ちになりました。ご本ではもちろん混雑しているところが掲載されているのですが、その混雑具合も場所それぞれに違っており、さらに曜日や時間帯で人の動きが違うのも想像できます。
また「人混み」と一言にまとめてしまっていますが、画像があるおかげで、見下ろす視点は意外にも背格好や服装が人それぞれにはっきりと感じられることにもちょっとした驚きがありました。ぼんやりとした群衆から、個別へのズームアップ。けれど見下ろしているから個別認識も近寄りすぎない距離があり……と、観察の行き来の自在さが紙面だけでも十分に楽しくなってきました。
混雑を観察したい人のための実用としても、いつものカフェでの休憩をひとあじ変えてみたいときにもいかがでしょうか。
今週の余談
展望のいいカフェが好きで「2階以上で窓のあるカフェ」を探すことがあるのですが、意外と見つからないものなんですよー。その面からもこちらのご本はとっても参考になりそうでうれしいです!
みさき紹介文
公共図書館、専門図書館に勤務していた元司書。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。
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