くねくねハニィが語る日本と欧米のゲーム作りの違い:くねくねハニィの「最近どうよ?」(その11)(3/3 ページ)
日本のソフトの行方
日本において、今まで家庭用PCゲームソフトを作っていたメーカーは、まずはPCゲームを作ろう! な〜んてバカなことを言うつもりはないけど、時代が変わってきて、日本オリジナルであった家庭用ゲーム機向けのゲーム開発においても、今までと環境が違ってきていることは真摯に受け止める必要はあるよね。
お金と時間をかけてしっかり作られたものはそれなりに評価されるけど、日本のゲームが無条件にチヤホヤされていた時代は終わったんだよね、残念ながら。タイトルを海外向けに考えるなら、いろんな意味で中途半端はいけないと断言したい。ミリオンヒットを望むなら、ゲームプレイの良さはもとよりオンライン機能は間違いなく必須だし、グラフィックも相当コストと時間をかけてていねいに仕上げていかないと、欧米のメーカーのものとは勝負ができないと思われるの。あ、もちろん大作を作っていける大きな会社さんは頑張って欲しいですよ! 海外メーカーとガチンコで闘っていくには時間とコストと優秀な人材はたくさんいるんです。
ずっと触れてきていなかったけど、ここで強調したいのは任天堂のハード「Wii」。ネット対応はおいといて、グラフィック的にもコントローラ的にもPCに近づく進化のしかたをしていないのよね。そういった意味でも現在「家庭用」ときっぱり言える唯一のハードであるとハニィは思う。技術的に進化するのを垂直進化と考え、遊び方を広げるのを水平進化と考えれば、垂直に進化したXbox 360やPS3とは異なる水平進化をしているWii。コントローラや機能を考えると、PCからの移植は困難なため、結局イチから作り直している海外メーカーも多いとか。ここでは間違いなく日本の職人技は発揮されるでしょうね。ただ、あとがきで述べますが、任天堂のハードにおけるサードパーティのソフトが奮っていません……。そういう意味ではやっぱり行き場のないこのもやもや感。何とかしたいところです。
では、ゲーム業界はハリウッドのようになってしまうのかしら? 小さなところは大きなところに淘汰されて、大作だけが生き残るってことになってしまうのかしら?
いやいや、違ってほしい。海外は日本より大きな市場だから、大きなパイもあれば小さなパイ(ニッチとよばれる)もあるんですよ。ニッチと言っても欧米では「日本オタク」なるものも実際多数ユーザーの中にいらっしゃって、数十万本売ることだってできるんですよ。中途半端にネット対応をするくらいなら入れない勇気も持とう。スタンドアローンで楽しく遊べるゲームを追及していけばいい。それを理解してくれるユーザー向けに開発すればいいんだから。ユーザーは大作だけを待っているわけではないし、多種多様なゲームの発売を待っているってことは事実でしょう。
とても大雑把に聞こえるかもしれないけど、日本の数倍に膨らんだ海外のゲームソフト市場と向き合うには、厳しい現実を受け止めるしかない時期に来ていると考えるハニィです。「いいモノ」をターゲットを絞って売る、というのが今後の我々日本人ゲーム業界関係者の課題ですね。
ハニィのあとがき
今回はちょっと重たい内容だったけどいかがだったでしょうか。欧米の現状を報告するにとどまらず、歴史的に分析してみるという試みをしてみたの。こう考えるとPCソフトありきの欧米メーカーの時代に移行した、とも言えるのかもしれないね〜。日本では、ハードのシェアが拮抗していなかったのもあって、マルチプラットフォーム展開をあまり好まない傾向があったよね。これもそれぞれのハードのスペックをリスペクトして作られたものが多いってことの証明だと思う。時代が変化してきた今、どのような戦略を組んでいくか、ハニィも含め、日本の業界関係者にとっては決断のときでもありますね。己を知ることが成功への一歩と申しますが、そろそろ相対的な評価をしてみる時期かもしれません。
悪いニュースばかりではなく、任天堂のハードは、Wii、ニンテンドーDSともに好調〜。でも、ソフトの面で行くと4月のWii向けのソフト売上中の任天堂比率は63%。売れたソフトの3本のうち2本は任天堂のソフトだったってことですな。ニンテンドーDSに至っては、なんと総ソフト売上に対する任天堂ソフト比率79%! 5本中4本が任天堂ソフトってことですよ。こうなってくると、任天堂が取りこぼしたちびぃーっとのシェアを数十社のパブリッシャーで取り合いをしなきゃならないって状況でしょう? そういう意味では、サードパーティにとっては非常につらいハードになってしまいましたね。任天堂のソフトのクオリティが高いのは否定できないけど、一人勝ちにもほどがあるかと。特にニンテンドーDSはカセットであるという特性上、製造費が高いのに安くしか販売できない。つまり粗利率が小さいからたくさん売れないと損益分岐売上高に達しない(赤字ってこと!)プラットフォーム。やっぱりPSPにも頑張ってもらわないと!
海外市場の動向を探るにあたり、Must Goの展示会ですが、7月のE3 Media and Business Summit(ポストE3)が近づいてまいりました。北米カリフォルニア州のサンタモニカで7月11日〜13日に開催されます。人数限定の小さなショウになっちゃいましたね。ハニィはきっと中に入れないので行くのをやめようかと思っていたんだけど、各ハードメーカー(SCE、任天堂、マイクロソフト)がE3でのプレスカンファレンス(メディアに対する記者発表)をするらしいので、やはり行こうかなぁとか揺れ動いておりまする。あ、中に入れるならってことですけどね。最近、国内の仕事が忙しくって海外に行ってないハニィ。ダメだなぁってことで6月は出張作ってきっちり情勢を見てきますよ〜。
くねくねハニィのプロフィール
1967年アメリカサウスダコタ生まれの日本人。
小学生からはゲームセンターに通いまくって育つ。
1990年に都内K大学を卒業後、大手ゲーム会社にて海外ソフト担当となり、2001年に退職。それ以降は自称フリーのゲームアナリストとして暗躍。暗躍しすぎたので名前を変えて表舞台に。くねくねと唐突に現れて「親父ギャグ」をかまして周りの人々のレベルを下げまくる困ったやつ。独特の口調ですが、慣れてください。言ってる中身は至極マジメ。ちなみに「風来のシレン」が好物で、名前もそこから借用。なんだか公認してもらったそうです。
最近ケガをしたそうで、ヒザ付近をぱっかりやってしまったようです。事故などお気をつけください。
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