かきめしからあなごめしまで 昭和が生んだ広島のヒット駅弁、その系譜 〜広島駅弁・広島駅弁当:広島「夫婦あなごめし」(1300円)
戦後から続く広島駅弁当の歩み、ヒット駅弁の歴史とともに振り返ります。










【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。
天災・人災・戦災、人には災いが降りかかります。全国の駅弁業者は、災害が起きたとき、神戸でも、仙台でも、いち早く復興を支えるための食を提供してきました。いまから77年前、広島が原爆の被害に遭った年の初秋、いち早くまちの復興に向けて動き出していたのも、やはり、広島駅の駅弁屋さん「広島駅弁当」でした。そんな広島駅弁当の戦後の歩みを、ヒット駅弁とともに振り返っていきます。
「駅弁屋さんの厨房ですよ!」第34弾・広島駅弁当編(第3回/全6回)
山陽本線の三原から分かれ、広島の手前・海田市で再び山陽本線と合流する「呉線」。瀬戸内海沿いを走る、風光明媚な路線として知られています。とくに三原と竹原の間は、列車が波打ち際を走ります。そんな列車のバックに見える島は大久野島。昭和の戦前は、“毒ガスの島”とされ地図から消された一方、いまは“ウサギの島”として人気を集めます。
広島駅と呉線が分岐する海田市駅の駅弁業者5社が、戦時統合によって生まれた「広島駅弁当株式会社」。そのトップ・中島和雄代表取締役が指さすのは、昔の広島駅です。昔の広島駅弁当は広島駅南口の駅前にあり、その後、昭和38(1963)年に北口へ移転。さらに平成に入って、いまの芸備線矢賀駅前に移りました。中島社長のインタビュー2回目、今回は、昭和の戦後を一気に振り返っていただきました。
焦土の広島で、「建築許可第1号」となった広島駅弁当
―昭和20(1945)年8月6日、広島に原爆が落とされましたが、このとき、広島駅弁当はどのような被害を受けたのでしょうか?
中島:広島駅前にあった広島駅弁当の社屋も全壊して、その場にいた出身各社の幹部・家族をはじめ、多くの社員が命を落としました。山岡甲了軒出身の方だけが生存されたと聞いています。中島家はたまたま玖村(現・広島市安佐北区)に疎開していて生き延びることができました。ただ当時、今後70年間は、草木はもちろん、一切の生物は生息が不可能とも云われた場所で、社屋のないところから始めなければなりませんでした。
―どのようにして、「広島駅弁当」を再建していったのでしょうか?
中島:広島駅弁当の初代社長に就任していた父・剛男は、原爆投下から2ヵ月後の昭和20(1945)年10月、広島駅南口(現・蔦屋家電付近)に「外食券食堂」の建築許可を受けました。疎開先の玖村に大勢いた下駄職人さんの協力を得て、太田川に木材を流し、下流で受け取って2階建ての社屋を建てました。じつは、この建物が、戦後の広島市における建築物許可第1号で、その記録は県庁にも残されています。
戦前の“大田かきめし”の系譜を受け継ぐ、広島駅の「かき」駅弁!
―戦後、復興が進んで、昭和30年代になると、「駅弁」にもご当地性が求められるようになっていきましたね?
中島:海田市駅の駅弁業者だった「大田山陽軒」には、通称“大田かきめし”と呼ばれた人気駅弁があって、広島駅弁当でもブランドを活かして、「かきめし」を販売していました。当時の駅弁容器は陶器製の丼で、その後も折に入った「かきめし」を製造していたんです。昭和38(1963)年に、いまも冬季限定で販売している、しゃもじ型のプラスチック製容器にかきめしを盛った「しゃもじかきめし」が誕生しました。
―「しゃもじかきめし」は、いまでもユニークな器ですよね?
中島:しゃもじ型容器のアイデアは、当時の調理課長が率先して、社員みんなで考えたと言います。「かきめし」を、広島の名物にしたかったんです。そこで、宮島土産の「しゃもじ」をイメージして開運を呼び込もうと、「しゃもじかきめし」が生まれました。昔もいまも広島の牡蠣を使っていますので、販売は旬の冬季に限定しています。2023年で、発売60年を迎えるロングセラーとなりました。今年(2022年)も10月から販売を予定しています。
新幹線開業後の停滞感を乗り越えろ! 「もぐり寿司&あなごめし」の開発
―広島には、昭和50(1975)年の博多開業と同時に山陽新幹線がやって来ました。どのような影響があったのでしょうか?
中島:新幹線開業まで、在来線ホームでは立ち売りが基本で24時間営業でした。しかし、新幹線の開業に伴って、在来線の夜行列車がなくなったことで、夜の駅弁販売がなくなり、販売数が大幅に落ち込みました。そのころ、在来線の売店は弁当とうどんの店を合わせて6つほどありました。これらを縮小する一方で、新幹線ホームの上り下りに、売店を新たに設けました。このため、投資費用がかかって打撃を受けたんです。
―新幹線開業後、再び復活していったきっかけは?
中島:昭和50年代に行った「HIT30(広島駅弁当イノベーション30)」という取り組みです。これで新商品の開発を行い、昭和59(1984)年に漫画家の鈴木義司・馬場のぼるさんのご協力をいただいて「もぐり寿司」と「あなごめし」という2つの駅弁を発売しました。このシリーズは本当によく売れて、地元の皆さんもよく支えて下さいました。マスコミの方からは、「広島駅弁当改め、もぐり寿司本舗にしたらどうだ」という冗談も上がるほどでした。
1980年代に発売した「あなごめし」は、地穴子を使った焼穴子でした。しかし、地穴子の漁獲減少で、従来通りの駅弁を提供するのが難しくなっていきます。やむなく輸入穴子に切り替えると、それまでの「あなごめし」とは、同じ味が出せなくなってしまいました。そこで、平成に入ってから、焼穴子を煮穴子に変えて生まれたのが、「夫婦あなごめし」(1300円)。いまも広島駅で販売される駅弁では、随一の人気を誇ります。
【おしながき】
- 醤油めし
- 煮穴子
- 穴子の骨の素揚げ
- 広島菜炒め
醤油ご飯の上に、細長い容器から溢れそうな勢いで盛り付けられた、2本の煮穴子が、食欲をそそります。そのふんわりとした食感は、一度いただくと、また食べたくなる美味しさ。優しく甘めに味付けされていますが、別添のたれをかけ“追いだれ”でより濃厚な味わいを楽しむことができます。合わせて、穴子の骨の素揚げが、程よい塩気で、口のなかの甘さを心地よく引き締めてくれて、箸がどんどん進みます。
その昔、軍用列車が数多く行き交い、戦後も一部の優等列車が走った呉線も、いまは、ローカル輸送が中心となっています。広島と呉の間には、概ね毎時2本の快速「安芸路ライナー」が運行されていて、広島〜呉間を30分あまりで結んでいます。次回はいよいよ平成の「広島駅弁当」。中島社長就任当時の“大きな課題”を振り返っていただきました。
(初出:2022年5月20日)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/
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