20年ぶりにコミケにサークル参加したら…… アラフォー作者による“過去と現在”をまとめた同人誌が興味深い元司書みさきの同人誌レビューノート

まるで異世界に転生したみたいに感じたそうです。

» 2023年12月10日 12時00分 公開
[みさきねとらぼ]
同人誌 本棚 図書館 司書 コミケ

 カレンダーが12月になりました。慌ただしく過ぎていく毎日ですが、振り返ってみれば年月が積み重なっていたり。今回の同人誌は、長いときを経て復帰した趣味の世界の変化にスポットを当てたご本です。

今回紹介する同人誌

『アラフォー同人女が20年ぶりにコミケにサークル参加したらほぼ異世界転生だった件 完全版』A5 44ページ 表紙カラー、本文モノクロ

著者:のみぞう


同人誌『アラフォー同人女が20年ぶりにコミケにサークル参加したらほぼ異世界転生だった件 完全版』 卓上の小物、会場の建物……これだけで既にさまざまなことが想起されます

20年ぶりに復帰した同人誌制作と即売会のギャップをレポート

 もともと作者さんは思春期にアニメやゲームの同人誌を作っていたとのこと。その後、同人誌制作の活動から離れていたけれど、近年になり技術系の「情報・評論」と呼ばれるジャンルで約20年ぶりに本を作ることに。

 久しぶりに戻ってきた同人誌制作、同人誌即売会の現場はすっかり様子が違っていて、それはまるで異世界に転生したよう……! という驚きを感じたそうです。それをnotoの記事にまとめたところたくさんの方に伝わり、このままではもったいないと加筆修正を加えてご本にされたのがこの同人誌です。

 ご本の構成は、作者さんご自身のご紹介と、1990年後半ごろ、2000年代初頭と3部に分けて、あらためて振り返ってみたら当時はこんなことやってたね、現代はこんなことになっているよ、というのをエッセイのように楽しくレポートされています。

同人誌『アラフォー同人女が20年ぶりにコミケにサークル参加したらほぼ異世界転生だった件 完全版』 それぞれの年代にどんなことが?

見やすさ抜群で、がんばってきた過去と便利を使いこなす今を知る

 イラストがたっぷりの便箋に返信用の切手を差し込むために切り込みを入れて使ったこと、申込書を入手してから実際に申し込むまでがちょっとしたタイムアタック気分だったコミケの申込書セット、「今からFAXで送るから!」と事前の告知を受けて電話機の前で待っていた頃、テレホタイムと同盟リンク……、あの時代を体験してきた人にはピックアップされるあれこれのどれもに「そうそうそう」とうなずいてしまう事柄がてんこもりです。さらにそこに現代の便利さについてが解説され、懐かしさだけでなく、変わってきた部分についてが面白く読み進められます。

 ご本は語り掛けるような文章を主としつつ、すぐ横にはツッコミ的な役割も果たす注釈のスペースが広めにとってあります。ポイントになるところはしっかり太字、読みやすいフォント、差し挟まれるイラスト……この洗練されたページ構成、本づくりが見やすさ抜群なんです。するすると読める文章と見せ方は、作者さんのこれまでのキャリアの確実な積み重ねの成果でしょうか。このご本づくりによって「こうやってがんばってたなぁ」という過去の振り返りと、「便利になってうれしい!」な現代を楽しんで知ることができました。

同人誌『アラフォー同人女が20年ぶりにコミケにサークル参加したらほぼ異世界転生だった件 完全版』 希望のものを入手するためにこのお手紙を出していたあの頃……

オタク活動を支える通信と交流。個人のゆらぎを記録に残す面白さ

 ご本はあくまで作者さんの体験である旨が書かれていますが、それ故の揺らぎも読者にとっては面白いところかもしれません。多くの人が体験しているあるあると、個人目線ならではの小さな差異が同時に掲載され、本になっていることで大切な記録になっていると思います。

 同人誌にまつわる活動にスポットを当てる際にはさまざまな年代とアプローチがありますが、こちらのご本でははっきりと近年の20年を主題に掲げている点と、実は内容のいずれにも「通信と交流」という観点があるところが特徴的ではないでしょうか。同人誌の制作においてデジタルで原稿を書くことができるようになり、データの入稿が当たり前になったこと、即売会のカタログは冊子やCR-ROMからオンラインで見る環境に変わり、そして個人間のやりとりも手紙や定額小為替から、FAXを経てインターネットとネットショップへ……その時代ごとの通信や環境に適応しながら交流を成し遂げてきた姿に、表現したい、伝えたいと思って活動するときの衝動と熱意をたどる面白さを感じるご本です。

『アラフォー同人女が20年ぶりにコミケにサークル参加したらほぼ異世界転生だった件 完全版』 こんな環境があってたくさん利用されていたのです

サークル情報

サークル名:のみぞーん

入手先:BOOTH


今週の余談

 なつかしい体験と現在への進化を読んで、ここからまた頑張ろう、という気持ちがふつふつとしてきました。冬に向かって……みなさまお体大切にしつつ楽しいことに励んで行きましょう……!

みさき紹介文

 公共図書館、専門図書館に勤務していた元司書。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えたあたりで数えるのをやめました」と語る。

関連キーワード

同人誌 | 図書館 | コミケ


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/21/news032.jpg 「二度と酒飲まん」 酔った勢いで通販で購入 → 後日届いた“予想外”の商品に「これ売ってるんだwww」 投稿者に話を聞いた
  2. /nl/articles/2501/21/news034.jpg 道端で拾った“松ぼっくり”をカットして、つなげていくと…… 度肝を抜かれる“完成品”が1300万再生【海外】
  3. /nl/articles/2501/22/news055.jpg 「これは惚れ直す」 高橋克典、妻の爆速“8分弁当”がおいしそう 「味がありますね」弁当箱に注目する人も【2024年の弁当・料理まとめ】
  4. /nl/articles/2501/21/news061.jpg 1人暮らし“1K9畳”の殺風景な部屋が…… 980万表示の“変身ビフォアフ”に驚がく 「これは職人」「理想的!!!」
  5. /nl/articles/2501/21/news135.jpg 「なんでうちだけダメ」 まひ&歩行困難の7歳りおなちゃん、初韓国旅行で“注意されて列並べず”……不憫に思う視聴者に母親「車いすだからという伝え方よくなかった」
  6. /nl/articles/2501/21/news077.jpg 「粋〜〜!!」 人からタッパーを借りたときは…… センス抜群の“返し方”に反響「これはうれしい」「まねします!」
  7. /nl/articles/2501/21/news094.jpg 息子は「BTSに激似」と話題沸騰 “カフェ店員”の25歳男性が両親公開 髪形維持で「毎日母親が散髪」
  8. /nl/articles/2501/20/news166.jpg 「これはひどい」 一番くじ「リコリス・リコイル」“衝撃のD賞”にファン爆笑 「見た目がやばい」「20センチ笑った」
  9. /nl/articles/2501/21/news021.jpg 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  10. /nl/articles/2501/19/news042.jpg 風呂上がりに偶然「牛乳を注ぐ女」になった人に反響 「ほぼそのままw」「盛大にふきだした」 投稿者に話を聞いた
先週の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  4. 鮮魚店で売れ残っていたタコを連れ帰り、水槽に入れたら…… ヤバすぎる光景に「こんなに可愛いなんて!」「笑ってしまった」
  5. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  6. 「まじで終わってる」 マクドナルド「エヴァ」コラボ品“高額転売”に嘆く声…… 「結局欲しい人が買えない」
  7. 母に「髪染めやピアスはダメ」と言われ続けた25歳東大女子、大変身を決意したら…… まさかの事態に「さすがにおもろい」「涙出てきた」
  8. 賞味期限「2年前」のゼリーを販売か…… 人気スーパーが謝罪「深くお詫び」 回収に協力呼びかけ
  9. 風呂上がりに偶然「牛乳を注ぐ女」になった人に反響 「ほぼそのままw」「盛大にふきだした」 投稿者に話を聞いた
  10. タンクトップ姿のパパ「昔はモテた」→娘は信じていなかったが…… かつての姿に衝撃走る「『トップガン』に出ていても納得」【海外】
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」