もう一度、新しいステージに 一発屋芸人を声優に起用する「HUGっと!プリキュア」が描く“再生の物語”:サラリーマン、プリキュアを語る(3/3 ページ)
「なんでもできる、なんでもなれる」を象徴する、一発屋芸人たち
「HUGっと!プリキュア」では専門職の素晴らしい声優さんが声を当てています。
(個人的にはキュアエール役、引坂理絵さんの、戦闘場面での「どおりゃあーー」って掛け声が「強さ」の中に「優しさ」が内在した本当に素晴らしい演技だと思います。大好きです)
そして「HUGっと!プリキュア」では本職の声優さんだけはなく、多くのタレントさんも声優として参加しています。
特徴的なのは、いわゆる「一発屋芸人」と呼ばれている人が多数参加していることです。
- 吉見リタ役の、キンタロー。さん
- ジンジン役の、小島よしおさん
- タクミ役の、山田ルイ53世さん
※この方たちが「一発屋」というのは個人的な見解ではなく、タクミ役の髭男爵、山田ルイ53世さんの著書『一発屋芸人列伝』(新潮社)にそう記載されています。
タクミ役の山田ルイ53世さんは、同じニチアサでは「天装戦隊ゴセイジャー」の天知秀一郎役でレギュラー出演していたり、声優さんとしての経験も豊富ですよね。
その山田ルイ53世さんが書いた『一発屋芸人列伝』は、かつてテレビで人気絶頂だったタレントさんの「その後」が描かれた名著です。自分も話題になったときに購入し、一気に読み終えました(「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」を受賞した企画でもありますよね)。
そこにはテレビの世界で大人気を博したタレントさんが、次第にテレビでの露出が少なくなっていく様子や、そこで何を思い、どんな行動をして、仕事がなくなった後もそれでも一生懸命、前を向いて歩きだし、新しいステージで精いっぱい輝いている姿が描かれています。
一発屋芸人列伝のあとがきの中で、こんな言葉があります。
記憶のおもちゃ箱、そこに詰め込まれた一発屋達を、「消えた」「死んだ」と捨て去る前に、もう一度、目次のページを眺めてみて欲しい。
あるものは、社交ダンス世界大会で上位に食い込み、お茶の間の感動を呼んだ。SNSのアカウント上で披露してきたポエムが評判となり、再び注目を浴びつつあるものや、コスプレキャラからの脱皮を見事果たし、今や正統派漫才師の地位を手に入れたものもいる。
(中略)
掲げられた杯は、彼ら一発芸人の復活の狼煙(のろし)、再生の幕開けとなるだろう。
―― 『一発屋芸人列伝』(新潮社、山田ルイ53世著)から引用
おそらく「HUGっと!プリキュア」の声優さんに「一発屋芸人」を起用したのは意図的なことなのだと思います。
「もう一度、新しいステージで輝くことができる」。
それを体現しているのが、まさにこの一発屋芸人さんなのです。
「なんでもできる! なんでもなれる!」を「表面的な言葉」だけではなく、それを体現し「新しいステージで輝いている人」を声優さんとして起用しているのです。
なんでもできる! なんでもなれる!
「自分には何もない、と嘆く若者」
「失恋したOL」
「仕事がうまくいかなくなったサラリーマン」
彼らがもう一度人生をやり直し、次のステージに進んだように、お兄さんだって、お姉さんだって、おじさんだって、おばさんだって、お年寄りだって。
その人が望むなら、どんな人も、人生をやり直すことができる。
一歩踏み出し、新しいステージで輝ける未来がある。
「なんでもできる! なんでもなれる! 輝く未来を抱きしめて!」
これは、もちろん子どもたちへ向けられた希望のメッセージです。
しかし、それと同時に、「今を一生懸命生きている大人」へのメッセージなのではないかと、日曜日の朝、「HUGっと!プリキュア」を見ながら、僕は思うのです。
プリキュアを未視聴の人へ
「HUGっと!プリキュア」は残念ながら「見逃し配信」をやっていないので、「HUGっと!プリキュア」がどんな作品か確認したい人は、東映アニメーション公式が配信している「3分でわかるHUGっと!プリキュア」をご視聴ください。きれいに編集されていて分かりやすいですよ。
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション
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