プリキュアも車を運転する時代 初の成人女子プリキュア「キュアバタフライ」が示す大人だってプリキュアになれる世界:サラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)
ハマーを運転するプリキュア
そんな「キュアバタフライ(聖あげは)」は、18歳の成人女子。学生が主体であったこれまでのプリキュアでは見られなかったたくさんの魅力が描かれます。
彼女は免許を持っていて「車を運転できる初のプリキュア」でもあるのですが、愛車がアメリカ車の「ハマーH2」(と思われる車)なのです(ゴツい車に「ピヨちゃん」の愛称を付けています)。
「若い女の子だからかわいい軽自動車」みたいな観念はなく、初心者マークを付けてハマーを運転している姿は、まさに自立したカッコイイ大人の女性です。プリキュアだってさっそうと車を運転する時代になっているのです。
また、アニメ内においても「車が運転できるプリキュア」の登場により、作品内での行動範囲を広げることが出来ますし、保護者同伴でなければ描けなかったシーンも描きやすくなるなどの利点も出てきます。
また、彼女はファッションなどにも詳しく「おしゃれで元気なギャル系のキャラクター」でもあります。ギャル系のファッションや言動は、いまだに保護者世代には軽薄な印象を与えがちですが、あげはさんはそんな偏見を覆すような存在にもなっているのです。
「保育士」という周りから規範を求められがちな職業でありながらも「アゲアゲなキャラ」であることは、現役保育士さんの働き方にも良い影響を与えるのではないでしょうか。
「18歳だからまとめ役」にはしない
「ひろがるスカイ!プリキュア」のプロデューサーである高橋麻樹さん(高ははしごだか)は日経MJのインタビュー記事で、キュアバタフライは「年上だからまとめ役、という描き方はしない」と答えています。
――18歳の成人プリキュアの立ち位置は。
「男の子でも成人でも主人公の関係は「友達になれる」という対等な関係。チームでのそれぞれの役割は性格に応じており、年上だからまとめ役になるわけではありません。自分の意思で立ち向かっていくという精神性がプリキュアであり、年齢は関係にない。思いに応えていくことで広がっていく世界を描きたいと考えています。
(日本経済新聞社)日経MJ 2023年4月10日号
プリキュアとは「自分の意思で立ち向かっていく精神性」であるとして、「年齢」や「性別」による役割は固定しない事を明言しています。個々人の意思を尊重していく姿が広がる「スカイ!プリキュア」では描かれていくようです。
また、製作者側的に「聖あげは」のイメージは「ギャルになりすぎない明るいお姉さん」であることも明かされています。
当初、小川孝治さん(シリーズディレクター)の中にある、あげはのイメージをなかなかつかむことができず、「ギャルになりすぎない明るいお姉さん」の塩梅がメインスタッフの中でもバラバラで、少々苦労しました。
徳間書店『Animage(アニメージュ)』2023年5月号(P83)
「ギャルなんだけど、ギャルになりすぎないお姉さん」という絶妙なラインがキュアバタフライの魅力なのです。
「大人もプリキュアになれる」世界になった
これまでプリキュアには「主に小中高校生の子どもが変身するもの」という固定観念がありました。製作者サイドも「プリキュアはそういうもの」として描いてきたことが製作者インタビューでも明かされています。
そんな中、キュアバタフライは「大人の女性」でもプリキュアになれることを示しました。キュアバタフライの誕生は「大人もプリキュアになって良い」というメッセージが内包されているのです。
さらに、今作では「保育士」という職業がプリキュアになりました(厳密には見習いですが)。この先、さまざまな職業の人がプリキュアになる道も切り開かれました。
看護師さんのプリキュア、介護士のプリキュア、主婦のプリキュア、どんな職業だってプリキュアになれるのです。この先は「私の職業がプリキュアになった!」という話題を作ることにより、社会的に不遇を強いられている職業にもスポットを当てることも可能となりました。
男女関係なく「性別」を越えてプリキュアになることは既に当たり前の世界で、大人だって、そしてどんな職業だってプリキュアになれる可能性を示した「ひろがるスカイ!プリキュア」。
「大人だってプリキュアになれる」ことは、この世界を生きる全ての大人へのエンパワメントとなっていくのではないでしょうか。
明確に「オトナ」をターゲットに
2023年、プリキュアは大きく変わろうとしています。
10月からはNHKで「Yes!プリキュア5」のその後を描いた、大人向けの新作「キボウノチカラ〜オトナプリキュア‘23〜」も放送されるように、プリキュアが明確に「オトナ」をターゲットとしてきています。
「かつてプリキュアを見ていた世代に、もう一度プリキュアを見てもらう」という思いのもと、「オトナ」をも意識していく新時代のプリキュアは、われわれにどんな未来を見せてくれるのでしょうか。
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